その日の夜、僕は考えてみた。僕はいつから彼女が好きになったんだろう。
わがままで乱暴で、ドジで・・・良いところなんてひとつもないじゃないか。
けど、彼女を琴音をほっとくことなんて僕には出来なかった。
目を離すと、どこかへ行ってしまうかのような存在。ああ、そっか・・・
僕は最初から、ずっと昔から彼女のことが・・・
そう気付いた時、僕の目から一筋の涙がこぼれていた。
明日、彼女は好きな人に告白する。
いつも僕に向いていたあの笑顔が他の男に向けられると思うと、なんだか悲しくなった。
翌日、その日は曇天だった。鉛色の雲が僕にのしかかり、学校への歩調を遅めた。
彼女は放課後に告白をするつもりらしい。
授業が終わり、放課後になったほかの生徒たちは、部活へ向かう者、下向する者、
それぞれ、教室から出て行った。
僕と琴音だけが教室に残る。
重い沈黙。静かな時間だけが、ゆっくりと過ぎていくのだった。
「あのさ・・・」
沈黙に耐え切れなくなった僕は切り出した。
「行かなくて・・・いいのか?」
「あ、・・・うん。」
彼女は空返事で言葉を返す。
「ねぇ・・・本番の前に、最後にもう一回練習させて・・・」
「あ、あぁ・・・」
これが本番だったらいいのに。僕はそう思う。
「ずっと、ずっと前から好きでした。悠くんのこと、ずっと好きでした。
私なんて、ドジで乱暴でわがままで女らしくもないかも知れないけど、
私、悠くんが好き。ずっと、一緒にいたい!」
彼女の目から涙がこぼれた。
僕は彼女を抱きしめた。
「好きだ琴音。ずっと、そばにいて欲しい。」
何言ってるんだ俺は、琴音には好きなヤツがいて俺の出る幕じゃない。
俺は慌てて、琴音から離れようとする。しかし、琴音は強く俺に抱きついたまま動かない。
「好き・・・。」
琴音は呟く。
「い、いいのかよ俺で。他に、好きなヤツいるんだろ?」
「ううん。昔も今も、私はずっと悠くんが好き。」
「琴音・・・。」
俺がそう呟くと琴音はゆっくり顔を上げ、
二人の唇は重なった。
帰り道、朝は曇天だった空は雲ひとつない黄金色に染まっていた。
「悠くん、これからよろしくね。」
そう言って、微笑んだ彼女は可愛くて僕はドキッっとした。