キャリアリスクという概念がある。内容は評価の誤差とか様々だが、一番わかりやすいのは勤めている会社が破綻しそうとか、そういう状態に遭遇したときだろう。自分は、20年前の金融危機の時に保険会社にいて、それが感覚的によくわかる。そういう時、どういう人間がキャリアリスクに耐えられるだろうか? この観点では見過ごされがちな間違いが結構ある。
普通考えると倒産危機に直面した会社員は、まず収入を失う可能性が高まる。しかし、これだと次の職を確保できればなんとかなる(といってもこれ自体が大変という面はあるが)。しかし過去の大企業破綻の際の会社員の直面したリスクは、それだけではなかった。もう一つのリスクは、貯蓄として勤めている会社の株を(持株会とかで)持っていたケースに生ずるリスクである。この場合、収入だけでなく、それまでの貯蓄まで失う可能性が高まる。
運用の世界では、「卵は一つのカゴにもるな」といわれる。複数に盛っていれば、一つのカゴがだめになってもすべての卵がダメにならないからだ。これを聞くとみんなそうだそうだという。
しかし、実際の家計の行動は、少ないカゴにもっていることが少なくない。上にあげた例は収入、貯蓄を自分が勤める会社一つに集中している状態である。
ある企業が破綻しそうというニュースが出るたび、そこの社員で貯蓄の一環として自社株を購入している人間はいただろうかと心配になる。1997年山一證券破綻時に、この話は結構取り上げられた。しかし同じことを繰り返すケースは今でもあるようだ
自分が昔いた会社は、破綻しそうな時に、資本増強しようとして、外に資本の出し手を探していたが、並行して社員に株を持たせた。当時、管理職は、一定額必ず持てといって実質強制に近い状況だった。さらに持株会つくって、給与天引きで株を買わせる。補助金付きである。実質利回り高いとかいう話にのせられた社員はリスク耐性が極端に弱くなる。
会社員の自社株購入は控えめにしてほしいもんである。ほんと、そう思う。
