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KUROTOのブログ

ブログネタをネタとした小説?を細々と

寝起きはいい? ブログネタ:寝起きはいい? 参加中

---- ブログネタ短編 抄説 ----



カバッ…



キョロキョロ…

チッ、チッ、チッ、チッ…
ニャ~…
ブロロロロ…

バサッ、ギシッ…

「…はぁ~…」

佐伯 剛三は、汗ばむ顔をゴツゴツとした手の平で無造作にゴシゴシと拭き取ると、暫して顔を手の平で覆ったまま、長い溜息をついた。


地獄だ……


外からは、

近所の家が飼っているパンダの様な模様の猫が、腹を空かせて飼い主を呼ぶ鳴き声が聞こえる。

近くのバイパスからの、追い抜き車線を走り抜けて行く車の音が聞こえてくる。
そんな細かな事が解るほど、剛三はしっかりと目を覚ましていた。

降り注ぐ太陽の日差しが、昔ゴミ捨て場から拾って来たベットの枕元に注いでいる。
恐らく、先程まで剛三の顔をもジリジリと炙っていた事だろう。

だが、剛三に溜息をつかせたのは、そんな事が理由では無い。
手狭な四畳半一間のベットの上で、固まったままの剛三が、手の平の下からくぐもった声をあげる。


「(10:32…電話…)」


チッ、チッ、チッ、チ
ジリリリリリリーーン
ジリリリリリリーーン
ジリリリリリリーーン

剛三は電話に出るソブリを見せない。
電話の主は判っている。
会社の同僚だ。
同じ配管工事の作業員。
どちらかと言えば、仲の良い相手だ。
給料日後、今日が久し振りの休みと言うことも相俟って、昨日はそいつを含めた同僚4人で結構楽しく飲むことが出来た。
だから、この同僚の事が嫌で出ない訳じゃ無い。

ジリリリリリリーーン
ジリリリリリリーーン

だが、剛三は電話に出ようとしない。

昨日、帰宅したら出て行ったはずの女房が子供を抱えて戻って来た。
その時の嫁さんの仕草に興奮して、有無を言わせず抱いた。
そしてよりが戻った。
…と、剛三には全く理解できない理由で、犬も喰わない夫婦喧嘩が終わった事を、その同僚は報告してくるはずだ。


ウンザリだ…


ジリリリリリリーーン
ジリリリリリリーーン

鳴り続く電話のボリュームが上がった。
放置し続けると、そうなる電話にも…



うんざりだ…


ジリリリリリリーーン
ジリリリリリリーーン

ガチャ…

電話の勝ち。
剛三は、諦めて電話を取った。

『…おい~、どうしたんだよ、二日酔いか?情けね~な』


「………」

『しつこく電話鳴らすなって言うんだろ。わかってるわかってる。んが、聞いてくれよ~、昨日帰ったらよ、赤ん坊連れて飛び出して行った女房の奴が泣きながら帰って来ててな~…』


知ってるよ…


『何かメチャメチャ怒ってる癖に、泣きながら「どーして捜しに来ないのよ!!」って叫ぶ姿が可愛くてよ~』

「いい加減にしろ…」

『四の五の言うなってんで部屋に……ん?何か言ったか?』

剛三は堪えられ無くなって怒鳴り散らしていた。

「ちったぁ違う事言って見ろよ!!」

突然の怒号に同僚が戸惑う。

『な…何だよ』

「何度も何度も何度も何度もーっ!!いい加減、聞き飽きたっつってんだぁーっ!!!」

『はぁ?…おいおい、初めて話す話しだぜ?寝ぼけてんのかよ。』

「寝ぼけてなんざいねぇ!!起きてるさ!!起きてるに決まってんだろ!!頼むよ!何か違う事言ってくれよ!!俺が悪いのか?!給料日直後の休みがズット続けば良いって言ったからか?…いい加減…許してくれよ……頼むよ…頼む………ウウゥ…」

『…お前…寝起き酷いな。良いからもっかい寝れ。寝直したら気分も変わるって…じゃあまたな』

同僚が電話を切ろうとしている。
剛三は、慌てて電話に縋り付く。

「待て!待ってくれ!一人にしないでくれ! そうだ、今から会おう、呑もうぜ、他の奴らも呼んで、な、騒ごうぜ、な、な」


『…いや、寝とけって。何か悪かったな、じゃあな…(チンッ)』

「待てっ!待てよ!!待てっつってんだろぉーーーーっ!!!」

ツーー ツーー ツーー ツーー … ‥

剛三は受話器を床に叩き付けたまま、嗚咽を漏らしていた。
畳の上に、剛三の涙と鼻水がボタボタと落ちて居る。

「ね…なおしたさ……、何度も何度も何度も何度も何度も何度も…ウウゥウウゥ…」

地獄だ…ここは…地獄だ…

「だれか…誰か!助けてくれーーーーーーーーーーーーっ!!!」


あぁ……、これも…何回か経験したパターンの…朝か…………



ぱたっ…

剛三はベットに倒れこんだ…



…そうだな…お前の言う通りだよ……、俺の朝の目覚めは………

最低だ…



そうして、幾度も繰り返される同じ朝の目覚めの中、剛三は再び眠りについた…

チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ、チッ……



---- Fin ----

ふっと、寂しさを満喫したくなる時がある。

誰も居なくなった深夜、バスも来ない停留所で、一人ベンチに腰掛けて、近くで買った無糖の缶コーヒを片手に、夜風に煙草の煙りを漂わせる。

孤独になりたい訳じゃ無い。
遠くに街の喧騒は聴こえている。
そんな距離感が心地良い。

だから、ただ満喫したいだけなのは分かっている。
だけど、満喫したくなる時がある。
今日の珈琲も変わらず苦い。