少し前の話
六本木森美術館にて現代アートの展示会CROSSINGが開催されていた。
そこに出展されていたひとつの映像作品
「ミチコ教会」
約30分のドキュメンタリー(作者はフィクションかノンフィクションか明らかにはしていない)
作者は25歳の現役大学生。
ある夫婦が山奥にトタン屋根の小さな教会を建てた。そこに2人で住んでいたが、今は夫に先立たれたミチコさんだけが住んでいる。
ミチコさんは山を降りようか迷っていた。夫がいなくなった今、この教会に住み続ける意味があるのか・・・。そんなあるとき、一組のカップルがミチコ教会を訪れた。
「結婚式を挙げたい」
ミチコさんはたった一着の純白のウェディングドレスを新婦に着せた。そして赤い布で土と雑草の地面から教会までバージンロードを作り、2人が入場するとおもちゃのオルガンで賛美歌を弾いた。ミチコさんお手製の針金細工の指輪が入った箱を2人に見せ、
「好きなものを選びなさい」
どれも見事なワイヤーアート。2人は指輪を選び、誓いを立てた。
新しい夫婦は笑顔で手をつなぎ、教会をあとにした。
そしてミチコさんは山をおりた。
しばらくして、トタン屋根のミチコ教会に再びミチコさんの姿があった。彼女は生涯あの教会に住み続けるのだろうか。
自分は今まであちこちの結婚式を撮影してきた。どれも幸せそうで、感動的なセレモニーだった。
でも「ミチコ教会」は、自分がこれまで観てきたどの結婚式とも比べ物にならないほど感動した。そしてドキュメンタリー映像をつくる意味がなんとなく分かった気がした。
近々、かなり大きな意味を持つテーマでドキュメンタリー作品を作ることになった。その制作に向けて勉強中だが、今の自分に一番影響を与えた作品は、どんな映画でもPVでもドラマでもない、25歳の女性が作ったドキュメンタリーであることは間違いない。
心に残るものを作りたい。






