Kenosha本社で見つけた、100年を超えて選ばれ続ける理由
先日、SFC参加のためアメリカを訪れた際、スナップオンジャパンの計らいで、ウィスコンシン州Kenoshaにあるスナップオン本社を見学するという、とても貴重な機会をいただきました。
長年Snap-onに携わってきた者にとって、一度は訪れてみたい場所でしょう。
しかし実際にKenoshaで見たものは、僕が想像していた「工具メーカーの本社」とは少し違うものでした。
100年以上の歴史、NASAとの関わり、歴代の診断機、製品開発、3Dプリンターによる試作、研究設備、そして実際のツールトラックまで。
あまりにも情報量が多く、正直、何から皆さんにお伝えすればいいのか迷うほどでした。
ただ、帰国して振り返ってみると、そのすべてに一本の共通した考え方があるように感じました。
それは、「プロフェッショナルの仕事を理解すること」です。
1920年、ひとつのアイデアから始まった
スナップオンの歴史は1920年に始まります。
その原点となったのは、5本のハンドルと10個のソケットを組み合わせて使うというアイデアでした。
現在では当たり前に見えるソケットとハンドルの組み合わせも、当時は画期的な発想でした。
Kenoshaの展示には、こんな言葉があります。
“SNAP-ON IS IDEAS.”
Snap-onは、アイデアである。
100年以上続く会社が、自らの原点を「工具」ではなく「アイデア」と表現していることが、とても印象に残りました。
そのアイデアは、メカニックから生まれる
今回、僕が特に興味を持ったのが「Innovation Works」です。
ここでは、実際にアメリカのメカニックを招いて、「作業で何に困っているのか」「どんな工具があれば仕事がしやすくなるのか」といった話を直接聞くそうです。
つまり、開発者だけで新しい工具を考えているわけではありません。
実際に工具を使う人の声から、製品開発が始まる。
さらに奥には3Dプリンターなどが置かれ、そこでアイデアを試作品として形にしていきます。
展示されていた開発過程にも、スケッチからモデル、試作品、そして製品へと進化していく様子が紹介されていました。
現場の声を聞く。
↓
アイデアにする。
↓
試作品を作る。
↓
実際に確かめる。
↓
さらに改良する。
スナップオンのInnovationは、机の上だけから生まれているのではありません。
出発点は、メカニックの仕事そのものだったのです。
この先は、撮影禁止でした。
Innovation Worksを見学したあと、地下にある研究施設にも案内していただきました。
残念ながら、ここは撮影禁止。
そこには素材を分析・評価するための設備や、LEDライトの明るさなどを測定する機器をはじめ、さまざまな研究・試験設備が並んでいました。
その規模には驚きました。
そこで案内してくださった方に、「こうした設備は他の工具メーカーも自社で持っているのですか?」と尋ねてみました。
他社の場合、おそらく外部の専門機関などを利用しているケースが多いのではないか、というお話でした。
もちろん私自身が他メーカーの研究施設を確認したわけではありませんので、単純な比較はできません。
それでも、その場所を実際に見て感じたことがあります。
自分たちの名前を付けて世に出す製品は、自分たちで確かめる。
そのために、これだけの設備を持つ。
そこに僕は、「リーディングカンパニーのプライド」のようなものを感じました。
僕たちが普段目にしているのは、完成したスナップオン製品です。
しかしKenoshaでは、その製品が完成するまでの「見えない部分」を見ることができました。
「失敗できない仕事」に使われる工具
展示にはNASAとの長年にわたる関係を紹介するコーナーもありました。
宇宙開発という、ほんの小さなミスさえ許されない世界。
しかし考えてみれば、それは宇宙だけの話ではありません。
航空、モータースポーツ、そして私たちに最も身近な自動車整備。
プロフェッショナルの仕事には、必ず「失敗できない瞬間」があります。
だからこそ、その手に握る工具には信頼が求められる。
NASAの展示を見ながら、そんな当たり前のことを改めて考えさせられました。
クルマが変われば、直す道具も変わる
スナップオンと聞くと、ラチェットやレンチを思い浮かべる方が多いでしょう。
しかし、Kenoshaには診断機の歴史も展示されていました。
大型のエンジンアナライザーやオシロスコープの時代から、電子制御化が進み、現在のハンドヘルド型診断機へ。
クルマが変われば、整備も変わる。
そして当然、「直すための道具」も変わらなければならない。
スナップオンは100年間同じものを作り続けてきたのではなく、プロフェッショナルの仕事の変化に合わせて、自らも変わり続けてきたのだと感じました。
ツールトラックまで研究する
そして個人的に非常に興味深かったのが、本社内に実際のスナップオンツールトラックが置かれていたことです。
単なる展示車ではありません。
実際に商品を並べ、どこに何を配置するのか、どう見せるのか、限られた車内スペースをどう使うのか。
実際に稼働するツールトラックのレイアウトを考えるためのスペースでした。
僕たちスナップオンディーラーにとって、ツールトラックは毎日仕事をする場所です。
だからこそ、この場所を見たときは少し嬉しくなりました。
スナップオンにとって仕事は、良い工具を作ったところで終わりではない。
その工具を、どうやってプロフェッショナルの手元まで届けるのか。
そこまで考えている。
ツールトラックは単なる配送車ではなく、Snap-onとメカニックをつなぐ場所なのだと、改めて感じました。
SNAP-ON IS PEOPLE.
そして、たくさんの展示を見た中で、最後まで頭に残った言葉があります。
“SNAP-ON IS PEOPLE.”
Snap-onは、人である。
創業した人。アイデアを考える人。設計する人。作る人。性能を検証する人。工具を届けるディーラー。そして、その工具を毎日の仕事で使うメカニック。
展示には、長い人生をスナップオンの工具とともに歩んだ一人のメカニックの物語もありました。
13歳のときに初めて手にしたスナップオンのラチェットから始まり、自動車修理の世界へ入り、自分のショップを持ち、長年Snap-onを使い続けた人生。
そこには、“LIFELONG COMMITMENT”という言葉がありました。
Customer for Life――生涯顧客。
言葉だけならマーケティング用語にも聞こえます。
しかし、一人のメカニックの人生とともに使い込まれた工具を目の前にすると、その言葉はまったく違って見えました。
工具を作っている会社だと思っていた。
今回Kenoshaで、歴史、NASA、診断機、製品開発、3Dプリンターによる試作、研究施設、そしてツールトラックを見ました。
僕は長年スナップオンツールを扱っています。
それでも今回、初めて知ったことがたくさんありました。
そして帰国してから、毎日見慣れているSnap-onの工具やツールトラックが、以前とは少し違って見えています。
VOICE
↓
IDEA
↓
PROTOTYPE
↓
TEST
↓
PRODUCT
↓
PROFESSIONAL
現場の声を聞き、アイデアにし、形にし、試し、製品にして、また現場へ届ける。
100年以上、その循環を続けてきた会社なのだと思います。
リーディングカンパニーであり続ける理由
今回の本社見学で、僕が一番感じたこと。
それは、トップであることを誇っているというより、
トップであり続けるために、やるべきことをやり続けている。
ということでした。
現場の声を聞く。新しいアイデアを考える。試す。検証する。改良する。そして、現場へ届ける。
その積み重ねが100年以上続いて、現在のSnap-onになったのでしょう。
Kenoshaへ行く前、僕はSnap-onを「世界的な工具メーカー」だと思っていました。
もちろん、それは間違いではありません。
でも今は、少し違います。
Kenoshaで僕が見たSnap-onは、
プロフェッショナルの仕事そのものを、100年以上考え続けている会社でした。
今回、このような貴重な機会を用意してくださったスナップオンジャパン、そして現地で案内してくださった皆様に心より感謝いたします。
そして長い記事を最後まで読んでくださった皆様、ありがとうございました。
Kenoshaで僕が感じたものを、少しでも皆さんと共有できたなら嬉しく思います。
トランプ大統領によるKenosha本社表敬訪問時に使われたツールストレージ。スナップオンがアメリカの雇用を担う会社である証。
ハリウッド映画がスナップオンを使う理由はただひとつ、それは作品にリアリティを持たせる事。それだけの説得力がスナップオンにはある。
スキャナーはスナップオンの登録商標であるため診断機をスキャンツールと呼称するのはつまりそういう事である。
スナップオンツールトラックの前身であるセールストラック。100年の歴史を感じさせてくれる。
本社入り口から。ウッドやレンガは1920年当時のモノを使用し面影を今に伝えている。
この赤いパネルひとつひとつにスナップオンの特許が記載されている。その数はおよそ4千以上に及ぶ。
来年はアルゴナ工場見学か。今からとても楽しみです。
では、また明日。