夫が今 私の目の前で 土下座している。


両手 両膝 そして額まで床につけて


「すべて僕が悪かった。

許してほしい。」


そう 確かに 振り絞るような声で言った。




結婚してからずっと、私に対しては

「世界で一番尊重されるべきは夫である自分」

と思わせ続けてきた夫。


結婚前の生まれ育った家では
義母から「世界で一番尊重されて」育ってきた。



すべては自分が一番。


無意識のうちに自分が一番得をするように
自然と思考し、行動してしまう夫。



そしてそれを周りには気付かせない。


それはいつも見事なほどだった。



私をとんでもなく上から見ていたそんな夫が

今 私に額をつけて土下座している。



夫は言い終わっても
なかなか頭を上げない。



定かではないが、1分くらいたったようにも思えた。



私にとっては 長い長い時間に感じられた…



夫が 完全に自分の負けを認めた。

発覚しても3年以上もずっと
自分の非を認めず、私を非難し続けてきた夫が

今、すべて自分が悪かった と

私の前で土下座している。



あの常に自信の塊りだった夫が

負けず嫌いの塊りだった夫が

今、私に土下座して自分の非を認めている。





もう




これで




幕を引こう…




3年間、あれほど苦しみ、
怒りで私の身体の中の
臓物という臓物、組織という組織
気持ち、心、感情
そのすべてが隅から隅まで蝕まれ
粉々に砕け散っていった。



今ここにある私の身体も心も
もう本来の私のものではない。



夫の裏切りを知ったあの時に
私のすべては砕け散ってなくなった。



両親の愛を受けて育ち
幸せに平凡に、夫にモラハラされても
不倫されても、何一つ疑うことなどなく
普通に暮らしていたと信じていた私は
もう あの時 砕け散った。



今ある私は


裏切られた哀しみと
それを夫にすら理解されない苦しみ
そして何より大切にしていた子どもたちの心さえ
踏みにじった夫への
怒りだけでできている

薄汚い私だ。




離婚もせず、


夫に土下座させ、


それをもって夫の不倫に幕を引こうとする私。




これからの人生



これで後悔しないのか



それはまったくわからない。




でも私は




これから夫とふたり



生きていくと決めた。



どんなスタンスで



どんな生活にするか




これから決める。



でももう二度と



私の人生に



モラハラも



もちろん不倫も



持ち込むことは




許さない。




私は土下座し続ける夫の手に




自分の手を重ねた。