ついに
言って
しまった。
「離婚する」
「離婚しよう」でもなく
「離婚して」でもなく
「離婚する」
この半年間、何度も何度も話し合った。
夫はその度、不倫したのは私のせいと繰り返し
「過去にこだわるのは意味がない。
これから2人で幸せになろう。」と言い続けた。
この日も同じことを言っていたので
「そんなの不倫した側の言うこと❓
された側は忘れたくても一生忘れるなんてできない。
どんなに忘れたくても、何をしてても×××さんのことが頭から離れなくて…
だから心療内科に行って薬を飲んでるのに
気が狂いそうで 涙が出るのをどうすることも
できないのに それを 気持ち悪いなんて…
不倫したのは私のせいで、
不倫なんかみんなやってるんだから
いつまでもこだわるのは意味がないと思っている人と、この先一緒に暮らせない。
悪いことじゃないなら子どもたちにも話せるでしょう。
私はもう△△さんとは一緒にいられないから
離婚する。」
そう言うと、夫は何も反論しなかった。
翌朝、旅行に出ることになっていて
こんな状況で一緒に行くのは耐え難かったが、
帰りに夫の実家に帰省する予定にもなっていたため
出発をやめることはできなかった。
旅行中、重い空気の中でも夫は普段と変わらない
態度だった。
まるで離婚の話などなかったかのように。
そして
「来てくれてありがとう。
お袋も僕たちの帰省を楽しみにしてたから
助かるよ。」 と。
気が乗らない旅行の帰りに実家に行き、
長男も合流して義母の誕生日を祝い、
私は嫁の役目を果たした。
実家での二泊三日の最終日の朝、
私はどうしても起き上がることができず、
夫に
「頭が痛くて起きれないから朝食の支度もできない。
悪いけどお義母さんにそう言って。」
結婚後数十年、いつも感心するほど親孝行な夫は
毎年 家族で年2〜3回の帰省を欠かすことはなく、
帰省中に私が寝込むことは今までなかった。
嫁として帰省先で寝込むなどということは
したくなかったが
どうしても義母や長男と普通に接する自信が
なかった。
すると夫は実家で波風を立てたくないと
思ったのだろう。
私のそばに来て言った。
「彼女のことを本当に愛してたと思った。最初は。
(夫はずっと堂々とそう言い続けていた)
でも今回の一連の流れの中で、
彼女の本質がわかったんだよ。
2年半の最後の方は、お互いもう飽きて来てた。
でもいざ別れ話をするとお互い未練を
断ち切れなくて 結局ズルズル続いてた。
でもこんなことになって、別れると彼女に言ったら
いろいろひどいことを言ってきて
僕が下手なことを言うとと何をするかわからないから
無下にできなかったんだよ。
実際に自殺未遂までしたと言ってきたし…
今まで彼女との事は後悔してないと言ってきたけど
今は後悔してる。
◯◯をこんなに傷つけてしまって
申し訳ないと思ってる。
不倫をなかったことにしたいだけだと言われたけど
今まで仕事で辛くて嫌な事は数え切れないほど
あった。
でもその度、それをいつまでも引きずっていたら
もう仕事なんてできないんだよ。
だから嫌な事はどんどん忘れていかないと
生きていけなくなったんだ。
だから僕の中では彼女との事はとっくに終わってる。
もう思い出したくないのに◯◯がいつまでも
彼女の話をするから僕もついこの前は
ひどいことを言ってしまって悪かったと思ってるよ。
ほんとにごめん。」
それが夫の言い分。
仕事が大変なことは私だって充分わかっている。
娘の仲の良かった友人も、激務とプレッシャーに
耐えかねて自殺した。
でも仕事の嫌な事と不倫を一緒に考えるあたり、
もうほんとに終わってる…
どこまでも自分本位。
本心はどうか、もう信頼などできないが
発覚後、夫が初めてまともに謝った。
今までも2回ほど謝ったが、いずれもうわべだけと
明らかにわかる謝り方だった。
一度は私が夫の水面下のメールを見て
長男に話すと言った時、
蚊の鳴くような声で一言
「すまなかった…」と。
もう一度は私が、
「私は自分の非を認めて謝ったのに、
あなたはまともに謝ったことがない」
と言うと
「口で謝れば気がすむのか?
わかった、謝るよ。
ごめん、ごめん、ごめん」と…
わたしは今回、夫に言いたかったことをかなり言った。
もう本当に終わりだと思った。
旅行中、睡眠薬と不安や動悸を抑える頓服を
毎日最大量まで飲み続けて
ようやく1日1日を過ごしていた。
夫は自分の言い分を話し終えると
私を起こして
抱きしめた…