日本に椅子がなかった理由
日本人は、なぜ、椅子に座らなかったのか?
座敷慣習は日本人の体型にも大きな影響を
与えており、現在もなお、椅子と座敷の折衷
文化は続いています。
中国は漢代末に椅子を導入し、宋代以後は
椅子スタンダードになりました。朝鮮半島は
オンドル(床暖房)という優れた家屋システム
を備えておりながら被支配層は座敷、支配層
は椅子という区分がありました。古代日本に
椅子は入っていましたが、支配層が椅子と床
の折衷様式で、平安後期から全体が座敷化。
鎌倉~南北朝に、唐物ブームに乗せて一時、
椅子が流行りましたが、結局。和式=座敷は
一貫しています。
考えられるのは、座敷から椅子様式へライフ
スタイルを変化させるためには、その周辺の
インフラもを総とりかえするような「明治維新」
に見られたドラスティックな変革が求められた
ため、急激な変化を好まない抑圧社会たる
日本社会は椅子を放棄したのでしょう。
椅子が平安社会から定着していたならば、
清少納言も、紫式部も、葛飾北斎が描く
原風景も、すべて変わってしまっていたのです。