お金の作り方⑰マルクスはこう考えた
金利(利息)を禁じてきたのはなにも
イスラム教だけではありませんでした。
アリストテレスは「貨幣が貨幣を生む
ことは自然に反している」 と述べており、
旧約聖書(ユダヤ教)においても同胞や
貧民から徴収することを禁じていました。
しかし、裏を返せば、それは異教徒から
取っても良いという考え方にもなり、
のち「ヴェニスの商人」に描かれる
ようなユダヤ人像を形成したのでは
ないかと考えられています。
古典経済学において金利に論理的
根拠をもたらしたのは、おそらく
John Stuart Mill(ミル)の機会費用
Opportunity Costという考え方です。
たとえば女子大生が居酒屋でアルバイト
している時間に家庭教師をした場合と、
キャバ嬢として働いた場合どちらが効率
よく稼げるか考えることが機会費用です。
自分の空き部屋をラブホテルとして貸し
出すのも、自家用車でレンタカーするのも、
機会費用の選択による商売です。つまり、
金利は持ち金を箪笥の肥やしにするか?
それとも、サービス業をはじめてミルか?
という選択肢から生まれたものです。
現代のファイナンス理論において金利は
時間的価値と信用リスクの二つから定義
されています。
時間的価値は今の千円と10年後の千円
の実勢価値の差額です。ただし、インフレ
とデフレでは状況が変わることも事実です。
信用リスク対価とは、もしかしたら千円を
返してくれないかも知れないことへの保証
+補償となります。
しかし、この二つは「機会」というサービス
を与えていることには違いないのでミルの
考え方に収束すると考えてよいでしょう。
一方、金利を禁ずるという宗教的考え方
の延長線上にあったマルクス主義の労働
価値説からすれば、金利は不労所得その
ものであり、労働者たちから搾取された
利益となります。
おそらく、マルクスの理想とする社会では
家主が借家する場合、家賃収入の一部を
建ててくれた建設業者に支払わなければ
ならなかったのです。家主がゴルフばかり
やっていて家賃収入を建設業者から搾取
する社会では、やがて、産業(商業)資本と
金融(利子生み)資本の乖離が金融恐慌を
引き起こすとしていました。
つづく