何年か前の話。



家に帰ると玄関に母の靴があったので、



「えっ、もうこの時間帯に帰ってるの?」


と若干の違和感を覚えた。こんな時間帯に帰ってくるはずがないからだ。



妙な胸騒ぎを覚えつつ居間に出ると、どこにも母はおらず。隣の部屋にもいない。



と同時に風呂場の方から強烈な異臭が。血なまぐさい、腐乱したような臭い。



「昨日の午後三時頃東京都のマンション一室の風呂場で、この部屋の主の〇〇さんが頭から血を流し……警視庁では〇〇さんが事件に巻き込まれた可能性もあるとみて捜査を続けています」



といったニュース映像が頭に浮かんだ。



「かっ、母ちゃーんっ!!



とダダダッと風呂場に駆け寄ると、そこには母はおらず。



ホッとしつつも風呂場にて強烈な異臭が漂っていることには変わりなかった。



なんとなく天井から臭っている気がしたので開閉可能な天井のフタをパカッと開けて首を入れて覗いてみた。





オエッ





即座にフタを閉め見なかったことにした。



そこになにがあったか…それだけは言えねえ…(母がいたわけじゃないよ)

一階の住人が、不定期開催の衝動的布団干しを始めた。庭に放置して雨風泥で汚れに汚れた掛け布団を再び干す謎。この意味不明な布団干しを月一ペースで繰り返すのだ。今回はなぜかピンクの肌着がステンレス製の柵にかけてある。
一階が布団を干すと、僕の身に不幸が降りかかるジンクスがある。
家のヒューズが飛んだり、職質を振り切ろうとして羽交い締めにされたり。
今日は夕暮れ時の某高級住宅街で思いっきりこけた。道路と駐車場の段差を埋めるプラスチック製のやつに足が挟まり、バランスを崩しドスーン。前頭の力士が本気になった横綱に土俵の外に放り出されたような哀れな倒れ方であった。
あまりに凄まじい音と倒れ方をしたため、「だっ、大丈夫ですかっ!?」
と、タタタッと駆け寄る女性の声がした。 「あっ、これってドラマでよくある運命の女性と出逢うパターンではないか…!?」と期待しつつ、わざと痛ましい顔をしつつ振り返ると、そこにいたのは腰の曲がった白髪のお婆ちゃんでした。まー、いいけどさ。

「速水もこみちと俺ってさー、同い年なんだってー。」


「…(絶句)!!」