ラ ロッシュ ポゼ の日焼け止め化粧下地UVイデア XL ローズ ピンクの解析 | 化粧品犬が化粧品開発を模索するブログ

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大手会社の開発に勤務していましたが、好きな化粧品を好きなだけ追求するため円満退職。
ノラ犬となった化粧品犬が、面白いと思った情報を発信していくブログです。
化粧品コンサルタントとして仕事も受けています。
パームアミノ・ラボ合同会社 imori@palmamino-labo.jp

化粧品犬です。

生きてます。

 

ちゃんと仕事もしてました(^_^;)

 

久しぶりにエントリー追加します。

 

今回取り上げるのは、ラ ロッシュ ポゼ の、日やけ止め・化粧下地UVイデア XL プロテクショントーンアップローズ ピンク 30ml です。

 

 

仕事がらみで頼まれたのですが、最近人気があるらしいですね。

 

実は今回は、仕事を依頼された会社から、社名や依頼内容を公開しても良いとの許可を貰っています!

これは珍しい・・・というか、初めてですね。

そんなわけで、ご迷惑をかけない範囲でぶっちゃけていきます!

 

まず依頼社は、積水化成品工業(株)様。

各種の発泡プラスチックス、有機ポリマー微粒子、高分子ゲルなどの製造・加工・および販売をされている会社様です。

化粧品としては、有機ポリマー微粒子の拡販に力を入れている、化粧品原料会社と言うことになります。

この会社の有機ポリマー微粒子とは具体的には、球状のPMMR微粒子ですね。

PMMRとは化学名でポリメチルメタクリレート。化粧品表示名では、ポリメタクリル酸メチルになるものです。商品名は、テクポリマーです。

テクポリマー

http://www.tech-p.com

化粧品犬が評価したところでは、これ配合すると、日明け止めのSPFやPAが、ズドン!と上がるのです。顕著な効果があるのは珍しいです。それ自体には紫外線吸収効果は無いのですが(^_^;)

 

そのテクポリマーに、近赤外線カット機能を付与した新番手ができたそうで、これを評価してみると、SPFやPA向上効果が更に高い(^_^;)

そこで、このテクポリマーを売れ筋の商品をモデルにした処方に配合し、展示会で見せたら商談しやすいのでは?となったわけです。

モデルにするのが、ラロッシュポゼの日焼け止め下地(^_^;)

 

そんなわけで、商品の解析から、それを試作可能なモデル処方に落とし込み、そして実際の試作までやらねばなりません。

燃える展開ですね(^_^;)

 

ただ開発期間がとても短い(^_^;)

まあ、それはさておき、始めましょう。

 

 

 

ラ ロッシュ ポゼ社については知らなかったのですが、調べてみると、ロレアルの子会社ですね。まあ、メイベリンとかも、ロレアル傘下ですからね。

 

ロレアル傘下の会社

http://www.nihon-loreal.jp/brands/

 

この製品、ロレアル傘下だけあって、処方内容としては独特な見所が満載です(^_^;)

また処方の根っこがヨーロッパなので、日本の日焼け止めと異なる点が多い。

長くなりそうなので、最初に箇条書きでまとめてみます。

 

 

●ラ ロッシュ ポゼ の日やけ止め化粧下地UVイデア XLの処方上の特徴

1)ロレアルの独自紫外線吸収材を使用

2)しかし普通のケミカルな紫外線吸収材(BASF社品など)も、バッチリ使用。

3)シリコン油を使用していない。そのため乳化剤もシリコン系統のものを使っていない。

4)天然油を多用する。しかし、鉱物油も禁止ではなく必要なら使う。

 

日焼け止めに興味がある人ほど、興味深い内容だと思います。

 

化粧品犬の体調もいまいちなので、早速解析してみましょう。

いつものように、裏面表示から解析します。

今回は比較しやすいように、日本の代表として、花王さんのアスリズムのミルクを並べてみます。日本製品の典型的な例です。

 

 

 

こんな感じになりました。

 

 

表の上の方から見て行きます。

 

まず、油性成分のパート。

アスリズムは、揮発性シリコン油のシクロペンタシロキサンとジメチコンが多いです。日本の日焼け止めとしては王道の作りですね。

 

それに対してラロッシュポゼは、何故かスクワランが多いです(^_^;)

スクワランは天然油の割には使 用感は軽めで、酸化されにくいので日焼け止めには適しているのですが、シリコンに比べればべったりしてしまいます。

アスリズムはその後に、スクワラン似だが石油由来の水添ポリイソブテン、エステル油のパルミチン酸イソプロピルと軽い使用感の油が続き、その後に皮膜形成剤の

アルキル(C30ー45)ジメチルシリルポリプロピルシルセスキオキサン

が配合されています。皮膜形成剤というのは、ウォータープルーフ性を高めル原料です。

この辺りも実に日本的です。

 

それに対してラロッシュポゼは、スクワランの後は、ステアリン酸、セチルリン酸Kと脂肪酸系の原料が続きます。脂肪酸系原料はその後も、ミリスチン酸、パルミチン酸と、やたらと多く配合されている印象です。この脂肪酸系原料の役割としては、やはりウォータープルーフ性を高めることにあるようです。

ステアリン酸やパルミチン酸だけ見ていると、汎用原料過ぎて、目的が分からないのですが、やや変わっているセチルリン酸Kを調べると、

Cosmetic Infoさんからリンクをたどると、

以下の説明があります。

 

セチルリン酸K(アンフィソルK:DSM社)

https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=7471

「O/W乳化、ポリマー乳化等に耐水性(ウォータープルーフ)効果を付与し、乳化を安定にする乳化助剤。」

 

この原料を取り扱っている会社としては、DSM}社の他に、コロニアルケミカル(MICトレーディング)、クローダ)、DKSH社などがあるのですが、全て外資系。この技術が、海外では定番の技術である事がうかがえます。

 

アスリズムもステアリン酸のみ配合されてますね。

実は資生堂さんでも、アネッサミルクの「アクアブースター効果」の重要要素として、ステアリン酸を挙げています。

 

ラロッシュポゼの他の成分としては、いかにも天然系油脂の、シアバター油粕エキス(よくは知りませんが)、乳化効果がある油剤のステアリン酸グリセリル。石油由来のイソヘキサデカンが配合されています。

イソヘキサデカンは、石油由来で、やや唐突感がありますが、

これは乳化剤のパートに分類したポリソルベート80、保湿剤香料その他に分類した(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーと合わせて、3種のミックス原料として販売されているものです。たぶん、このタウリン系ポリマーをつかいたかったのでしょうが、他の原料もついてくる(^_^;)、ということです。

ただ、この原料のメーカーはフランスのセピック社なのですが、日本の総代理店(成和化成)だと扱って無く、入手は困難です(類似品は入手可能)。カタログにはあったので、じきに手に入るかもしれませんが。。。またポリマー単品としては、最近日本モンサントが扱うようになってますね。ビジネスに停滞無しです。

油性原料はこれでだいたい終わり。

 

次は紫外線吸収剤のパートを見て行きましょう

まずこれまでのおさらいとして(^_^;)

 

アスリズムのほうを軽く見ておきます。

液状のUVB波吸収剤である、

・メトキシケイヒ酸エチルヘキシル

が多く配合され、そこに固形のUVA波吸収剤である

・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシル

と、やはり固形のUVA+UVB波吸収剤である

・ビジエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジン

を溶解させてて使用するという、日本的に鉄板の構成です。

これで、UVAからUVBまで幅広く肌を守れます。

更に、主にUVB防御に効果がある酸化チタンと、UVA防御に効果がある酸化亜鉛を加えてあるわけです。

対して、ラロッシュポゼはどうか?

見てみると、よそでは見た事の無い、2つの紫外線吸収剤ふぁ配合されてます。

 

・ドロメトリゾールトリシロキサン

・テレフタリリデンジカンフルスルホン酸

です。これらがロレアルオリジナルの紫外線吸収剤です。特許も出してるし、ちゃんと紫外線吸収剤として日本での登録も出しています。

外販していないのでカタログ等がなく、この西の詳細にはわからないことが多いのですが、各種資料より読み取ると、前者はUVA+UVB吸収剤、後者はUVA吸収剤のようです。

詳細を知りたい方は、いつも御世話になっている、化粧品成分オンラインさんを参照です。

 

ドロメトリゾールトリシロキサンとは…成分効果と毒性を解説(化粧品成分オンライン)

https://cosmetic-ingredients.org/uv-protect/ドロメトリゾールトリシロキサンの効果と毒性/

 

テレフタリリデンジカンフルスルホン酸とは…成分効果と毒性を解説(化粧品成分オンライン)

https://cosmetic-ingredients.org/uv-protect/terephthalylidene-dicamphor-sulfonic-acid/

 

安全性は、それなりに高そうですが、申請の手間を省いたらしく日本国内では粘膜へは使えません。これを忘れたらしく、ロレアルらしからぬ、リップクリームの回収騒ぎになっています(^_^;)

 

化粧品回収の概要 販売名 ラ ロッシュ ポゼ アンテリオス スティッ

https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/iyaku/kaisyu/kaisyuu2004-2-1486.html

 

 

ちなみにこの回収報告のページ、結構自爆して読めません。

その時は下記の操作を試してみて下さい(Mac用しかありませんが)

MacのSafariの場合:メニューの表示→テキストエンコーディング→日本語(EUC)の順に選択します。

MacのFireFoxの場合:メニューの表示→テキストエンコーディング→自動識の順に選択します。

 

この2種のロレアル謹製の紫外線吸収剤以外には、一般的な4種の紫外紫外線吸収剤か使われており、そのこのうち三種は花王品と同じ物です。

繰り返しになるけど、具体的には、

・メトキシケイヒ酸エチルヘキシル(UVB吸収剤)

・ジエチルアミノヒドロキシベンゾイル安息香酸ヘキシルU(VA波吸収剤)

・ビジエチルヘキシルオキシフェノールメトキシフェニルトリアジンU(UVA+UVB波吸収剤)

ですね。

最後の一種の紫外線吸収剤はエチルヘキシルトリアゾンといって、UVB吸収剤です。これは1990年代から使われている、比較的新しいUVB吸収剤で、光安定性が高いこと(日光で分解しにくい)、肌刺激が少ないことを特徴としています。

まあ今回出てきた紫外線吸収剤は、溶媒としての機能もあるメトキシケイヒ酸エチルヘキシル以外は、全て光安定性は高い(光で分解しない)です。

 

 

次は乳化剤のパート。

花王さんの方はシリコン油が多いため、PEG-12ジメチコン、PEG-3ジメチコンというシリコン系の乳化剤です。シリコン油にはシリコン系の乳化剤が有利と言われているのです。

一般的な日本の製品は、大体こんな感じです。

対してラロッシュポゼは、

ステアリン酸PEG-100、ポリソルベート80、オレイン酸ソルビタンと、シリコン系を全く使っていません。まず、ポリソルベート80はプレミックス原料の一部なので考えないとして。残りは、HLB]が高い(親水性の高い)ステアリン酸PEG-100と、HLBの低い(親油性の高い)乳化剤のオレイン酸ソルビタンの組み合わせになります。

この製品、親水性の高い物と親油性の高い物を組み合わせて乳化を調節するという、意外に基本踊りの作りでした。

 

次は粉体、顔料ノパート。

 

花王のものは酸化亜鉛、酸化チタンを主成分とする、いかにも日本の日焼け止め的な組成でsう。

対してラロッシュポゼは、まずUVAを防ぐ酸化亜鉛が配合されていない。これはロレアル謹製の2種の吸収剤ともに、UVA吸収効果があり、また、その他の4週の吸収剤のうち、UVA吸収効果のあるものが2つもある、ということで、UVA吸収効果は十分と言うことで酸化亜鉛を省いたのでしょう。日本製品なら、酸化亜鉛を配合して吸収剤のほうを外しそうですが、本製品ではロレアル謹製の吸収剤を使う、ということを優先したのですね。

 

それ以外は、滑り性を増すナイロンパウダー、光散乱性を加えるマイカなど日焼け止め下地としてごく普通の内容です。

 

次は防腐剤のパート。

フェノキシエタノール、ソルビン酸Kという、一般的な物です。ただ、保湿剤に分類しましたが、防腐剤ではないが防腐効果のあるカプリリルグリコールが配合されています。

 

カプリリルグリコールは実用濃度では問題ないという意見もあるのですが。

例えば、以下の化粧品成分オンラインさんのリンクなどですね。

 

化粧品成分オンライン カプリリルグリコールとは…成分効果と毒性を解説

https://cosmetic-ingredients.org/base/カプリリルグリコールの成分効果と毒性/

 

ただ、例えば防腐剤のメチパラやフェノキシエタノールなども実用濃度ではほとんど問題はないのです。これらは配合上限量も法律で決められてますしね。

 

カプリリルグリコールは、in vivo試験では、パラベンやフェノキシエタノールよりも刺激があるという結果もあるのです。

これは、例えば、下記リンク参照です。

 

アデカノール CHG  (p.7)ヒト 3 次元培養皮膚モデルを用いた刺激性試験 

https://www.adeka.co.jp/chemical/catalog/pdf/adeka_CHG.pdf

 

そしてカプリリルグリコールは防腐剤似分類されてないので、上限設定がない(^_^;)

ろなると、入れ過ぎなどはないと、ロレアルを信用スるしかありません、。

そこがちょっと、嫌なところです。

 

 

最後に保湿剤、香料、その他のパート。

いくつかコンセプト成分がありますね。

サーマスサーモフィルス培養物とか。これは深海に生息する好熱性細菌サーマス属微生物から得たエキスで、アンチエイジング効果が高いものだそうです。

 

それ以外は普通なのですが、ちょっと変わってるのは、増粘剤が多い事です。

プレミックス原料として上述した、タウリン系の(アクリルアミド/アクリロイルジメチルタウリンNa)コポリマーの他に、多糖類のキサンタンガムと、アクリル酸系のカルボマーも配合され、中和のためか有機アミンのTEAとトロメタミンが配合されています。

TEA’(トリエタノールアミン)は、発がん性物質のニトロソアミン問題で、欧州では全く使われていないと思っていましたが。。。

以下のエントリーも昔書いたのですが、最近変わったようですね。

 

トリエタノールアミンの発がん性について(化粧品犬)

https://ameblo.jp/kesyouhinken/entry-12021400874.html

 

最近EU内で起こった、下記の事件も影響しているのかな。

 

医薬品におけるニトロソアミン類(NDMA・NDEA)の生成経路を解説

https://www.eurofins.co.jp/ユーロフィン分析科学研究所株式会社/技術コラム/医薬品におけるニトロソアミン類の生成経路を解説/

 

日本は昔からトリエタノールアミンやジエタノアミドを使ってきたので、ヨーロッパが日本の原料を排斥するために、ニトロソアミン問題に固執してきたのかなと、疑っています(^_^;)

まあいいけどね。

 

BASFにトリエタノールアミンも、ニトロソアミン量を表示して済ませているなあ。

 

Triethanolamine Care(Cosmetic-Info.jp)

https://www.cosmetic-info.jp/mate/detail.php?id=16313

 

トロメタミンは、有機アミンの一種で、化粧品原料推しては最近出てきたもの。医薬品では広く使われてているらしい。紫外線吸収剤の可溶化剤として、カルボマーの中和剤として使用できるものらしい。使ってみたいな〜。

 

 

このあたりで、化イズ機片は終了。

 

今回は、積水化成品工業さんも許可を貰っているので、ここから、実践編というか実際のサンプル試作編にすすぬ予定(^_^;)

まあそのままは試作はできないので(ロレアルの紫外線吸収剤なんて手に入らないし

いろいろ変えてできることをやっていくと(^_^;)

あまり長いと疲れるので、次回のテーマにします。

 

今回作った処方は、2021/5/19〜2021/5/21に横浜で開かれる、サイトジャパン2021の積水化成品工業さんのブースに置かれる予定。

サイトジャパン202

https://www.citejapan.info

 

展示会に行かれるかたは、ぜひブースにお寄りください。SPFブースト効果もだぶデータをとったし(なにが使われるかは知らないけど)

化粧品犬も顔を出す予定。化粧品犬は会場フラフラしてるだけなんだけど、質問があれば、ブースに呼んでもらえるようにしておきます。

申し訳ないけど、一般のからは入れないイベントです。