『HUGっと!プリキュア』は、2018年のジェンダー論の教科書。 | ますたーの研究室

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英詩を研究していた大学院生でしたが、社会人になりました。文学・哲学・思想をバックグラウンドに、ポップカルチャーや文学作品などを自由に批評・研究するブログです。

かなり攻めている『HUGっと!プリキュア』

 
2018年6月10日に放送された、第19話「ワクワク!憧れのランウェイデビュー!?」は、今まで攻め攻めな作風で来ていた『はぐプリ』の中でも、とりわけ攻めていた話だったと思います。
 
 
今回の話を一言でまとめると、「男の子は男の子らしく、女の子は女の子らしく」という旧来のジェンダーバイアスを「時代後れのもの」としてネガティブに表象した上で、「お姫さまポジションの男の子を、ヒーローポジションの女の子が助けた」となります。
 
 
『HUGっと!プリキュア』第19話。(C)ABC-A・東映アニメーション
 
 
『はぐプリ』のジェンダーの描き方を見ていて面白いなあと思うのは、「女の子だってヒーローになれる」の数歩先にある、「そもそも男の子と女の子でなれるものに差があるのはおかしい」というところまで主張していることで、これがすごく現代のカラーを反映しているような気がします。
 
 
 
『HUGっと!プリキュア』第19話。(C)ABC-A・東映アニメーション
 
もう一つ。妹のえみるにジェンダーバイアスを押しつける正人が、マジでありえんくらい嫌なやつという描かれ方をしているのも印象的でした。この回においては、明確な悪役であるクライアス社の人間(せっかくの新キャラなのに全然名前を思い出せない……)よりも「悪」として描かれていたと言えると思います。「おじいさまの言いつけ」という言い方も引っ掛かりを覚えました。「ジェンダーバイアスが旧来の価値観」と私が主張する根拠はこの台詞にあります。
 
 
今回、プリキュアに浄化された後に「(アンリの姿が)きれいだった」という意味深な台詞を残していったことが話題になっていますが、正人のこれからの変化は、なんとかいい落とし所を見つけてほしいな、と思います。
 
『HUGっと!プリキュア』第19話。(C)ABC-A・東映アニメーション
 
というわけで、いよいよ次回えみるとルールーの変身が来ますね。すごく楽しみです。
 
(ところで、えみるとルールーは別階層のネジルとヘボットである。えみるとネジルの語感は同じ。ルールーはアンドロイド。さらに二人は相棒同士。このように、『はぐプリ』は『ヘボット!』のスピンオフであることは確定的に明らかである)
 
 

『プリキュア』とジェンダー

このように、ジェンダーの描写がかなり印象的な『はぐプリ』ですが、そもそものところで「女の子しかプリキュアになれない」という大きな問題を抱えています。この問題にきちんと向き合わない限り、いくら『はぐプリ』が素晴らしいジェンダー表象を打ち出したとしても、大きな批判点を残してしまうことになってしまうでしょう。
 
 
別に、無理に男の子のプリキュアを出せと言いたいわけではありません。ただ、ジェンダーをテーマにする以上何かしらでバランスをとることは必要不可欠だと思います。大らかなはなのお父さん、イクメンであるハリー、レディースを着こなすアンリ、ジェンダーバイアスに縛られている正人、はなによくわからん接し方をしている謎のおっさん、と面白いことが描けそうな男性キャラは揃っているので、これからの展開に期待したいところです。
 
(この点、どちらも男性二人と女性一人というチームを組んでいる『怪盗戦隊ルパンレンジャー VS 警察戦隊パトレンジャー』は何ら障害なくこの問題をクリアしており、ちょっとうらやましくも思ってしまいます)
 
 
レゴのカタログ(C)2018 The LEGO Group. 
 
最後に。レゴの商品は「男の子用」「女の子用」という分け方ではなく、「ヒーロー編」「なかよし編」という分け方をしています。
性別などで気兼ねすることなく、二種類のどちらかを選んで買いやすいように、という配慮だと思います。
 
 
「男の子は仮面ライダービルド、女の子はHUGっと!プリキュア」と無自覚に言ってしまっている某CM(具体的には言及しません)、『はぐプリ』の直後に流れることもあり、見るたびにげんなりするので何とかしてほしいと思うのは、私だけでしょうか。