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作品レビューについては基本的にネタバレ有でなおかつ個人的な感想です。

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★★★★★★☆☆☆☆

2021年

監督  バルディミール・ヨハンソン

出演  ノオミ・ラパス  ヒナミル・スナイル・グブズナソン

R15+

 

今年最も変な映画だった

 

山間に住む羊飼いの夫婦イングヴァルとマリアが羊の出産に立ち会うと、羊ではない何かが産まれてくる。子どもを亡くしていた2人は、その「何か」に「アダ」と名付け育てることにする。アダとの生活は幸せな時間だったが、やがてアダは2人を破滅へと導いていく。

 

昨年のカンヌ国際映画祭である視点部門を受賞したスリラー映画。監督は本作が長編映画デビューとなるバルディミール・ヨハンソン。出演は『プロメテウス』のノオミ・ラパス。

 

観終わった後に不思議な気持ちになる変な映画というのはこれまでにも観てきたことがあるが、本作はその中でも特に変な映画だったと言える。羊飼い夫婦が飼育している羊が、羊ならざるものを産み、それを育てるという物語。当たり前のように羊でも人でもない何かを育てる夫婦の時間は何となく不気味だ。

 

本作はアイスランドを舞台としている。アイスランドと言えば雄大な自然が有名で、本作でもそれを垣間見ることが出来る。しかし本作に映し出される自然は雄大でありながら、どこか陰鬱としている薄暗さがある。その様相の何と不気味なことか。物語と相まって、その不気味さも倍増だ。

 

本作でカギを握る羊でも人でもない子供のアダは自身の生みの親である羊は、イングヴァルとマリアに殺されている。つまりこの夫婦は子供から生みの親を奪い、その上で自身の子供として育てているのだ。相当に悍ましい関係性が構築されている。人間はこうして多くの生き物を殺す目的で育てて、子供を産ませてまた殺すということを長い歴史の中で繰り返してきているし、それを牧畜という文化として受け継いできているが、それが知らずのうちに他の生物の尊厳を自由にできるというエゴを生み出してしまったのかもしれないと、彼らの行為はそう感じさせるものだった。

 

映画の最後にはアダと同じように獣人化した羊にイングヴァルが殺されてしまい、アダが連れていかれてしまう。残酷な行為に見えるが、イングヴァルとマリアがアダの生みの親にした行為と全く同じだ。まさに因果応報といたところだ。

 

とにかく最初から最後まで不気味で変な映画だ。それを受け入れられるかどうかでこの映画への見方も変わってくるところだと思うが、本作のような映画は中々に観れるものではないので、新しい映画体験として観て欲しい作品でもあった。

 

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