★★★★★★☆☆☆☆
2013年
監督 アンドリュー・二コル
出演 シアーシャ・ローナン マックス・アイアンズ
エイリアンと人間の共生がテーマ。しかしその構図は現代社会にそのまま当てはめることができる。
近未来、地球に知的生命体ソウルが襲来。彼らは人間に寄生して宿主の意識を奪い、一方逃げ延びた人類は反撃のタイミングを計りつつ潜伏していた。その中の一人であるメラニー(シアーシャ・ローナン)もソウルの餌食になってしまうが、消えるはずの意識が消えず一つの体に人類とソウルの二つの魂が宿ってしまう。
「トワイライト」の原作者であるステファニー・メイヤーのSF小説の映画化。監督はアンドリュー・二コル。出演は「ラブリー・ボーン」のシアーシャ・ローナン、マックス・アイアンズ。「ヒストリー・オブ・バイオレンス」のウィリアム・ハート、「イングロリアス・バスターズ」のダイアン・クルーガが脇を固める。
小説を実は20ページほどだけ読んだことがある。要するに読んでないのと一緒だ。まぁある程度の設定は把握していた。地球は宇宙からやってきた知的生命体ソウルに支配されている。その人間の中の一人メラニーは自分の意識を残したままホストに寄生されてしまう。メラニーの体にはメラニーの魂と寄生したソウル、ワンダラーの魂が宿ることになる。
ソウルは人間に対しては非寛容的な描かれ方がされている。その最たるものがダイアン・クルーガー演じるシーカーだ。彼女は人間の排除に執念を燃やす。
一つの体に二つの心が宿れば厄介なことが多い。そもそもメラニーの体はメラニーのものだ。しかし、今メラニーの体を操っているのはワンダラーだ。本来ならワンダラーは意識の中でメラニーの存在を無視することもできたはずだ。
しかし、ワンダラーはメラニーの言葉に耳を傾ける。まぁシーカーに比べると多少は良心的なソウルなのだろう。次第にメラニーの感情に自分も入り込んでいく。ワンダラーは次第に人間の感情を持つようになる。
それこそがこの映画のポイントだ。ワンダラーはシーカーの味方をして人間を殲滅させることも可能だったわけだが、そうすることはせず彼らと交流を深めることにした。これは現代の社会に置き換えることができる。異国の者同士でも対話を重ね、交流を深めれば分かりあうことができるというメッセージだ。ワンダラーは異国に放り出された。当然そのコミュニティは混乱する。ワンダラーを異端者とするか、歓迎するか。この構図はわれわれ人間社会そのものだ。シーカーは保守派の最たる例だろう。
お互いに傷つきながらも共生する道を探すメラニーとワンダラー、そして人間たち。最後にはそうなるわけだ。この映画は共生がテーマであり、その可能性を示したのだろう。
とはいえ不満もある。一番不満だったのが人間が意外と町中に不用心に出かけることだ。もう少し警戒したほうが良い。グラサンだけして町中に平気で歩いている彼らを見ると何か不自然だし違和感を感じた。
まぁそんな不満もシアーシャ・ローナンの天使のような可愛さに免じて許そう。何を演じても彼女は天使だね。彼女になら地球侵略されても良いよ。
地球外生命体と人間の共生を描いた映画「ザ・ホスト」。エイリアンと人間ではなく、人間と人間の共生に置き換えてみると面白い。