なんのイタズラか、三塁アルプス以外のチケットは全て売り切れ。

だがその三塁側こそ、聖光学院のアルプスであり、そして、右投手である歳内と釜田の表情が見える位置だ。



先に断っておく。

得点のほとんどがエラー絡み。

お世辞にも締まった試合ではなかった。








だが、これほどまでに素晴らしい試合はない。






戦前、私の予想は金沢有利。

歳内のピッチングが修正されてようやく五分、あるいはやや不利か、というレベル。


歳内は一回戦でストライクを取りに行ったストレートを痛打され、決め球スプリットは暴投になっていた。


それでも、7回以降は開き直ったのか、ストレートで押すシーンが増え、これこそ高校野球と感じさせる投球を見せてくれた。








そして迎えた今大会屈指の投手対決。


初回に歳内は答えを見せてくれた。


投じたスプリットは一球のみ。

ストレートで押す姿に彼の決意がみてとれた。

象徴的だったのは、八回表、一番打者に対して0ボール1ストライクからの2球目。

124キロのストレートで振り遅れの空振りを取ったのである。

そんな投手、他にどこを探せばいるんだ?


この試合奪った三振のうち、半分以上がストレート。

非凡たるところを十分に見せてくれた。




そして最終回の満塁機。

応援団以外も一団となって送った手拍子。

アルプスに入ってよかった。

そう思えた瞬間。




3年前の夏も、三塁アルプスに居たな、俺は。







釜田の右腕には歳内が宿りました。

北陸勢ひさびさの優勝を期待しています。







歳内君、素晴らしいピッチングをありがとう。



もっともっと、甲子園で躍動する君を見ていたかった。

進路はプロか大学か、いずれにせよ、君のピッチングをまた見に行きたい。


歳内宏明、最後の甲子園。


19イニング、269球、



奪三振30。