Pop'n Roll な雑葉先生 | 子供たちの子供たちへ ~伝えたい音楽~

Pop'n Roll な雑葉先生

Frank Zappa(1940.12.21-93.12.4)。歴史に残る大天才


バンドリーダー、ギタリスト、コンポーザー、プロデューサー、演出家。タイトルは何でもよい。


膨大なカタログを残し、アルバムだけでも50枚を超える。ライブの面白さは群を抜き、テクニカルな演奏をバカバカしい語りと演出で無茶苦茶にしていくこの快感。(ブートも含めライブアルバムも異常に多い)


Zappa の音楽は、ロック、R&B、ジャズ、現代音楽、アヴァンギャルド、コラージュと幅広いのが特徴で、同じ音楽性による作品が続いた試しがない。かつ、そのどれもが高度でパロディー精神溢れるものであった。


難解、変態、多作、エロ音楽家とイメージの悪い Zappa ではあるが、その世界はひたすら優しく、高度なものをサラリとこなす、いかにもLA出身の音楽集団の成せる業を追及したかに思える。


今回は、そんな偉大な Zappa 先生の音楽性がポップサイドに振れたオリジナルアルバムをご紹介。

  

Freak Out!/Frank Zappa

1966年、栄光のデビュー作。当初は2枚組であり、ドゥーワップ、ブルース、R&B、ジャズなどの影響を受けた天性の才が集約されている。長髪に濃いルックスから誤解されることも多いが、Zappa は音大で正規の音楽教育を受けている。Edgar Varèse に傾倒し、ノイズや現代音楽も守備範囲とするが、ただの独学のヒッピーではない。今、聴いても十分刺激的だ。

   

Cruising with Ruben & the Jets/The Mothers of Invention

68年にして早5作目。架空のバンド Ruben & The Jets の名を借り、R&B方向に振れた一枚。チカーノロックもあり、イタリア系である Zappa のルーツを知る上でも興味深い。変拍子ジャズロックのみではない、ヴォーカルグループとしての The Mothers Of Invention の力量も評価したい。

  
Chunga’s Revenge/Frank Zappa
子供たちの子供たちへ ~伝えたい音楽~
70年。60年代、ノイズとサイケコラージュを通過したアメリカンロック。バンドメンバーに The Turtles のヴォーカル二人(Flo & Eddie)を加え、George Duke(kbd)、Aynsley Dunbar(dr)、Ian Underwood(org) と充実した時期の録音。ステージにおける演劇性も徐々に加速し、語りのような Zappa のヴォイスもわが道を見つけたかのようだ。この2年後には John Lennon との共演作 『Some Time in NY』 を残している。

Apostrophe (’)/Frank Zappa

74年。17枚目。ジャズビッグバンドへの追求を経たマトモなロックアルバム(笑)。Jim Gordon(dr)、Jack Bruce(b)、Jean-Luc Ponty(vln)、George Duke(kbd) らを従え、短めの曲により比較的聞き易い作品になっている。ギタリストとしての Zappa の腕前はライブ作品に譲るが、個人的に大ファンの女性ヴァイブ奏者 Ruth Underwood の名前も見え、これ以降、彼女はライブの中心となっていく。

  

Zoot Allures/Frank Zappa

76年。ジャズロックや Captain Beefheart とのコラボライブを経た来日記念盤(裏ジャケに「不乱苦雑派」の名前が…)。Chester ThompsonWeather Report、Genesis へ)から、ついに相方 Terry Bozzio(dr) を加え、ほぼこの二人を中心にした録音である。ジャケには Eddie Jobson の姿もあり、これ以降の活躍を期待させてくれる。過渡期の作品ではあるが、雑葉センセに駄作なし。あの特徴あるギターも凄い。

  

Sheik Yerbouti/Frank Zappa

79年。ギターいじりにも飽きたのか(笑)、いきなりのホームラン。この年、実に5枚のアルバムを制作し、その才能たるや留まるところを知らない。ロック・ポップの Zappa を聴くならまずコレか。いや、しかし、コレだけでは到底無理だ。ディスコ調の 「Dancin' Fool」 やお笑い部門で人気(?)の「Bobby Brown Goes Down」、Adrian Belew の「Flakes」(Bob Dylan の物真似入り)など多彩ながら、難解さはない。グラミー賞インスト部門にもノミネートされた傑作。

  

Tinseltown Rebellion/Frank Zappa

81年。その後、エロ路線を経て(笑)、得意のツアーテイクからの収録。複数のライブ音源から構成されたこれまた秀作。Zappa のライブはとにかく楽しい。Michael Jackson とはまた別だが、質の高さでは何ら遜色はない。楽しい語りに高度な演奏。エロネタにメンバー同士の楽屋オチまで話題には事欠かないようだ。Steve VaiAl DiMeola、Alvin Lee まで参加した(あ、あくまでパロディです)ジャズロックもあり、十分楽しめます。

   

You Are What You Is/Frank Zappa

81年の31枚目(多分)。同年、ギターソロ・アルバムを出してゴキゲンかと思いきや、ポップサイドでも、またこの充実度。本当に素晴らしいミュージシャンだ。カントリー、サザンロックも交えたポップヴォーカルアルバム。高度な演奏に実にバカげた歌詞(エロさ満点)。ゲストヴォーカリストを多数迎えた佳作。

  

Ship Arriving Too Late to Save a Drowning Witch/Frank Zappa

82年。前作にも参加していた当時13才の愛娘 Moon(裏ジャケにも登場)をフューチャーした「Valley Girl」 もあるポップな作品。ただし、そこは Zappa 先生のこと。オペラ風のヴォーカルやスラップベースもあり、一筋縄ではいかない。タイトルにもある「Drowning Witch」では、難解度を上げ、またヤッてくれています(笑)。しかし、この変拍子の嵐は、幾多のプログレバンドなど裸足で逃げ出すパワーを秘めている。ポップ好きの方は前半だけ聴いて下さい。

  

Broadway the Hard Way/Frank Zappa

89年。88年の実質上のラストツアーを経て病欠前の最後の挨拶。93年には、ラスト作 『The Yellow Shark』 が出ているが、これはクラシック畑のシリアスミュージックであったから、結果的にスタジオ作としては最後。といっても、88年の実り多いツアーの成果を編集し、同年の大統領選(父ブッシュが勝利した)、右翼に対するアンチテーゼとして編集したもの。デビュー作に戻ったかのような2分台の小曲が並ぶ。これはミュージカルだ。91年には自ら大統領選に出馬する意欲を見せていたのだが…。

    

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個人的に Zappa ほどハマッたアーティストはそうはいません。畑違いですが、Miles Davis、Charles Mingus、Prince、Fela Kuti、Van Morrison ぐらいでしょうか。

   

Zappa 先生の別の音楽性を代表するディスクは、また別の機会に取り上げたく思います。このまま Zappa を聴き続けていると、一生 Zappa だけを研究しても悔いはないような感覚に襲われます。 God Bless, Vincent