第4章 『restart.1』

いつものように朝に目を覚ました。

けんご『あぁ、終わったか』

そう、昨晩はフラれてまりなとは連絡もできない。
大好きになった人とはもう終わった。

俺の頭の上だけ土砂降りの雨が降っているようだ。
そんな憂鬱な気分は初めてだった。

けんご『仕事、行かなきゃな。』

そうして仕事へ行った。

上司『おはよう!今日の荷物はそこにあるからトラックに積んでおいてくれ!』

朝来ていつもやる仕事だ。

けんご『了解です!』

いつも通りの仕事をして、いつも通りの時間に仕事を上がった。

けんご『お疲れ様でした!』

上司『ほいー!お疲れ様!』

そうして家へと帰った。

いつもだったら楽しくゲームをやる日。
もうゲームもやる気にならなかった。
ただ一人でのんびりして、音楽を聴いて、寝ようとしていた。

けんご『なんか、本当、悲しいな。』

大切な人を失った1日目。
みんなはどう思うんだろうか。
大好きな人に彼氏が居た。隠されていた。
それだけで嫌いになれる人はもちろん居るんだろう。
けど、俺は違った。

追い続けて叶えたかった。
まりなと付き合って、一緒に暮らして、上手くいけば結婚して。
そんな風に夢を見ていた。
本気の一目惚れだった。

時間は22時。

けんご『早いけど、もう寝るか。』

そうして俺は眠りに落ちた。

朝5時。
いつもの時間に目を覚ました。

そしたら、LINIに三通のメッセージが来ていた。
俺は驚いた。
まりなからだった。

まりな『昨日はどうしたの?』『連絡一通も来てなかったよぉ』『ゲームしなかったの?』

なんだこれ。
何を言ってるんだ。
しかも、連絡先を削除した。
なんで来てるんだ?
そのメッセージを見て、前のメッセージを見てみた。

けんご『嘘だろ…。』

フラれたメッセージがない。
その日は2015年4月15日。
今は2015年4月16日。
違和感に気付いた。

昨日の仕事、昨日の出来事、全てが一度経験したものだった。
そう、俺は。

けんご『過去に戻った…?』

意味がわからなかった。
俺は急いでメッセージを送った。

けんご『俺、フラれたじゃん。もう、連絡できないんだろ。やめようぜ。』

頭の中は真っ白。
とりあえず、今はこれを聞くのが一番手っ取り早いと聞いてみた。

まりな『え?何言ってるのぉ。そんな事してないもん!夢でも見てたの?』

なんなんだ。
本当に過去に戻ってるのか?
いくらなんでもそんな事、この世界ではありえない。
ゲームやアニメの話じゃないか。

パニックすぎて仕事の時間をてっきり忘れてしまっていた。
親に仕事間に合うか聞かれた。

けんご『いや、体調が悪いからちょっと休む。』

こんな状況で仕事に行けるわけがない。
どうなってるんだ。
本当にわからなかった。

一つ確信した事は、過去に戻った。
それだけは確信した。
ただ、どうやって過去に戻ったのかはわからない。

けんご『もう一度、聞いてみるか。』

フラれたあの日と同じ事を聞いてみた。

けんご『なぁ、彼氏居るんだろ。』

あの時と同じように真剣に聞いた。

まりな『…』

沈黙した。
あの時と同じだ。

まりな『ごめんなさい。』

全く同じだ。
返す言葉を変えてみた。

けんご『そっか。じゃあ離れないと浮気だよね。』

今思いついた言葉はそれしかなかった。

まりな『やだ。浮気じゃないもん。もう別れるって決めてたもん。』

その言葉に腹が立ってしまった。

けんご『それだとさ、みんな不幸になるよ。大人なんだからちゃんとどっちか選ばないと、酷いよ。』

まりな『…。』

また沈黙した。

まりな『考えたい。ちゃんと。』

まぁ、その答えが来るとはわかっていた。
だから、ちゃんと条件をつけてみた。

けんご『うん。じゃあ一週間!一週間しっかり考えて、それでまた伝えて欲しいな』

一週間を強調して、どうなるか知りたかった。
これでもう過去に戻れなくても後悔はなかった。

まりな『うん…。一週間。わかった。』

これで本当に一週間後に来るのか。
正直その期待はしていなかった。

そして、その日の夜。
メッセージが来た。

まりな『ごめんなさい。嘘をついていてごめんなさい。今すぐには、けんごくんを選べません。ごめんなさい。好きなのに、選べなくてごめんなさい。』

同じだ。
聞きたくない言葉を自ら聞きにいってしまった。

そして、また一通。

まりな『けんごくん。ごめんなさい。今、彼氏居なくなってくれて、最後に話して縁切りなって言われたんだけど、どうする?』

そう、この言葉だ。
もう嫌だった。

けんご『いや、したくない。ごめん。』

まりな『私はしたい。』

したいならそう言えばいいのにな。
なんて思いつつ断ってみた。

けんご『好きな声聞いて、笑顔にバイバイなんてできねぇよ。』

本心だった。前回のあの通話をまたするのかと思うと、吐きそうなくらい気持ち悪かった。

まりな『お願い、私は、けんごくんの声聞いてバイバイしたいの。』

けんご『無理。』

そう言ったら、通話を何度もかけてきた。
1回、2回、3回…
何度も鳴った。
そして、耐えきれず、出てしまった。

まりな『もしもし。けんごくん。けんごくん。ごめんなさい。』

何度もそれを泣きながら繰り返してきた。
もう、それ経験してんだよ。
そう思いつつも、涙が出てきてしまった。

けんご『俺は、まりなを幸せにしてやれない。本気で好きだった。それだけ。もう切るね。』

強引に切ろうとした。

まりな『待ってよ…。忘れたくないもん。カッコよくて、かわいくて、星見に行ったり、楽しかった。今より楽しくて幸せだった。帰れるなら今すぐ帰りたい。でも、帰れないの。』

聞いた事あるセリフだ。
もういいんだ。

時間だ。

けんご『それじゃあ、さよなら』

まりな『…。』

なぜか黙ってしまった。

まりな『やっぱり嫌だよ。さよならなんて嫌だ。』

まただ。

けんご『終わりなんだよ。今すぐ帰るって言うなら俺は受け止められる。二人暮らししてて次帰ってくるのまで待てなんて、二人の幸せそうな所想像して苦しむだけだろ。
俺の気持ちも考えてくれ。』

イラっとしてしまった。
正直、耐えきれなくて本音を口にした。

まりな『そうだよね…。ごめんなさい。』

けんご『通話ボタンはまりなが押してくれ、俺は辛くてもう何もしたくない。』

まりな『わかった…。ごめんね。』

そう言い残して通話は切られた。
わかってる、わかってた。
けど、涙は止まらなかった。
やっぱり大好きだからだ。
でも、終わりなんだ。
もう、過去に戻れなくてもいい。
もしかしたら、夢でそんなものを見せられただけかもしれない。
そう思って、俺は涙で溢れた目のまま眠った。

けんご『なぁ、なんで俺はこんな事経験しなきゃいけねぇんだよ。』