中高一貫校のトレンドとして、かつて高校からの募集を行っていた学校が次々に募集を停止し、「完全中高一貫」への移行が進んでいます。
背景としてよく言われているのは、私立の中高一貫校では、高校までの学習内容を高2までに終わらせるため(残り1年は大学受験対策演習)、高校で入学してくる生徒たちと内部進学生で授業進度が揃わず、学校側で複数カリキュラムを走らせなくてはならず負担が大きいという点。
また、私学の建学精神に基づく教育目標の実現、特に人格形成には長い時間がかかる、あるいは長い時間をかけて独自の学びを深めていく必要がある、ということも言われています。
中学入試が難しいことで有名な灘、開成、筑駒といった学校は、中高一貫の男子校であり、かつ高校からの募集があるという点も共通しています。
こうした学校で時代の流れに逆行するかのように高校募集を続けているのはなぜなのか。
疑問に思っていました。
そんな中、少し前になりますが、開成の柳沢校長(当時)が校長時代にインタヴューでその理由を説明していましたので、そのことについて取り上げたいと思います。
一番大きな理由として挙げていたのが、「多様性」ということでした。
中学入試組と高校受験組がお互いに刺激し合うことで、両方にプラスに働くといいます。
開成高校は1学年400人ですが、高校から100人入ります。
高校からの入学者は少数派ですが、一定の存在感があります。
8クラスのうち2クラスが高校受験組となります。
高校からの募集では、海外からの帰国生も積極的に受け入れています。
高校からの入学者の大学進学実績は、内部進学者と比べてどうなのか。
これについては情報は開示されていませんが、柳沢前校長によれば、東大合格者の約4分の1前後は高校からの入学者だということです。
つまり、内部進学者とそん色がないことになります。
開成の校風は管理型ではなく、どちらかというと自由放任系。
「面倒見が悪い」と言われることもありますが、学校側は基本的な知識と環境だけを整え、そうすると、そのうちに生徒が、「自分は〇〇で生きていきたい」と言い出すのだそうです。
進学校だから大学合格実績は大事なんだと思いますが、「東大受験生」を育てるのではなく、「尖った人間」を尊敬する文化を大切にしているという。
〇〇だったら誰にも負けない、という「得意技」のようなもの。
周りの「尖った人間」に囲まれる中で自分を見つけることができるのでしょうか。
灘や筑駒はまた違うところがあるかもしれませんが、勉強に限らず「すごい人」がゴロゴロいることは間違いないと思います。