誰でも知っている、イソップ物語の「ウサギとカメ」。
ウサギとカメが競争をしますが、先行して大きくリードしたウサギが途中で居眠りをしたことで、カメが先にゴールし勝利をおさめるというお話。
今年が卯年だから(?)かどうかわかりませんが、開成中の算数・第1問にこの話が登場しました。
こんな感じの問題です。
・カメはスタートからゴールまで毎分4mで進み続けた。
・ウサギは、カメと同時にスタートし、毎分60mで走ったが、ゴール手前100mで止まり、昼寝を始めた。
・昼寝を始めて60分後にウサギが目を覚ますと、カメに抜かされていることに気付き、あわててそこから毎分80mで走ったが、ウサギがゴールしたのは、カメがゴールした5秒後だった。
問題は、
(1)ウサギが昼寝を始めてからカメがゴールするまでの時間
(2)ウサギが昼寝を始めたとき、カメより何m先にいたか
(3)スタートからゴールまでの道のり
を求めるものでした。
中学受験塾では、普通、このような問題は、必ず手を動かし、線分図かダイヤグラムを書くように指導していると思います。
線分図であれば、ウサギとカメの速度の比を使って、距離と時間を計算していくと思います。
ダイアグラムを書いて、図形の問題として解くこともできます。
これが「解法パターン」なので、その通り解きすすめれば答えにたどり着くはず。
ここで今一度、3つの小問を読み返してみます。
なぜ、最初に(1)でウサギが昼寝を始めてからカメがゴールするまで時間を聞いているのか?
(1)の時間がわかると、カメの速度から、ウサギが昼寝している間にカメが進んだ距離が計算できます。
ウサギが昼寝しているのはゴール手前100mなので、上で求めた距離から100mを引けば、(2)の答えになります。
そして、(2)の答えは、ウサギが昼寝を始めるまでにカメとの間についた差です。
ウサギとカメの速さに差があり、1分間に56mずつ差が開いていくので、上の距離を56で割ると、スタートしてからウサギが昼寝を始めるまでの時間がわかります。
この時間にウサギの速さをかけると、スタートしてから昼寝を始めた地点までの距離がわかるので、これに100mを足せば、スタートからゴールまでの道のり、つまり(3)の答えにたどりつきます。
つまり(1)の時間さえわかれば、(2)と(3)が出ることがわかります。
最初に(1)の時間を聞いているのは、最後の(3)に答えるための導入です。
(1)の時間は、ウサギになってみるとわかります。
昼寝していた時間に、目が覚めて慌てて残り100mを毎分80mで走った時間を足し、カメが先にゴールして待っていた時間を引けばOK。
わざわざ、比を求めたり、線分図やダイヤグラムを書いたりして、中受の「ワザ」を駆使しなくても答えが出るようになっています。
実にストレートで基本に忠実。
今年の開成の算数は受験生にとってとても取り組みやすいものだったと思いますが、この問題に出てくるウサギのように途中で油断しないように、また、カメのようにゴールを見据えて一歩一歩着実に進んでいくように、と語りかけているような気がしました。