先日、2023年大学入学共通テストで「親ガチャ」に触れた問題文を紹介しました。
子どもは親を選べず家庭環境で人生が左右されるから、努力や才能は、「運」によって決まるのか、そうではなく、どんな環境においても「個人の問題」なのか、という議論でした。
少し似た話で、2019年4月、東京大学の入学式での上野千鶴子名誉教授の祝辞があり、話題になったことがありました。
3年前のものですが、今も東大のウェブサイトに掲載されています。
当時物議を醸し、祝辞らしくない、とも言われました。
東京医科大の入試における女子差別問題から始まり、性差別と性暴力の問題を指摘した上で、
「がんばったら報われるとあなたがたが思えることそのものが、あなたがたの努力の成果ではなく、環境のおかげだったこと忘れないようにしてください。」
と新入生に訴えました。
大学受験も、その手前の中学受験・高校受験も、人生の通過点でしかなく、そこで勝てたとしても、「恵まれた環境」や「運」によるところもある…。
環境にも運にも恵まれない人もいますし、努力してもそれが評価されない世界もあります。
改めて上野氏の祝辞を読み返すといいことを言っていると思いましたので、少し長くなりますが、上の言葉の続きを引用したいと思います。
(引用)
………
あなたたちが今日「がんばったら報われる」と思えるのは、これまであなたたちの周囲の環境が、あなたたちを励まし、背を押し、手を持ってひきあげ、やりとげたことを評価してほめてくれたからこそです。
世の中には、がんばっても報われないひと、がんばろうにもがんばれないひと、がんばりすぎて心と体をこわしたひとたちがいます。
がんばる前から、「しょせんおまえなんか」「どうせわたしなんて」とがんばる意欲をくじかれるひとたちもいます。
あなたたちのがんばりを、どうぞ自分が勝ち抜くためだけに使わないでください。
恵まれた環境と恵まれた能力とを、恵まれないひとびとを貶めるためにではなく、そういうひとびとを助けるために使ってください。
そして強がらず、自分の弱さを認め、支え合って生きてください。
(中略)
これまであなた方は正解のある知を求めてきました。これからあなた方を待っているのは、正解のない問いに満ちた世界です。
学内に多様性がなぜ必要かと言えば、新しい価値とはシステムとシステムのあいだ、異文化が摩擦するところに生まれるからです。
学内にとどまる必要はありません。
東大には海外留学や国際交流、国内の地域課題の解決に関わる活動をサポートする仕組みもあります。
未知を求めて、よその世界にも飛び出してください。
異文化を怖れる必要はありません。
人間が生きているところでなら、どこでも生きていけます。
あなた方には、東大ブランドがまったく通用しない世界でも、どんな環境でも、どんな世界でも、たとえ難民になってでも、生きていける知を身につけてもらいたい。
大学で学ぶ価値とは、すでにある知を身につけることではなく、これまで誰も見たことのない知を生み出すための知を身に付けることだと、わたしは確信しています。
……
(以上)
会社も受験も、レールはなく、自分で考えないと道は開けないという点では同じかもしれません。