受験生の親としては、「学校の偏差値」が気になりがちです。
本当はそのようなものは存在しません。
偏差値とは、ある母集団の中でどの位置にいるのかという指標であって、ある学校が優れているかどうかという話とは関係ありません。
例えば、同じ学校でも、合格者数を絞り込み、高い学力の生徒だけを合格させれば簡単に「偏差値」だけを上げることができてしまいます。
息子が小4から通ったSAPIXでも偏差値表を出しています。
偏差値表は、学校同士が優劣を競った結果ではありません。
塾が直近の模試の結果や実際の受験データから独自に作成しているに過ぎません。
塾ごとにそれぞれ偏差値表がありますが、同じ学校でも塾によって偏差値がかなり違う場合があります。
これは、塾毎に受験生の母集団が異なるためです。
同じ塾であっても、模試の時期によって母集団が異なるため、偏差値も変動します。
2、3年もすれば母集団の変化によって学校に対する評価が大きく変わることもあります。
つまり、偏差値ランキングは絶対的なものではありません。
塾の発表する学校別の偏差値(合格可能性50%)は、入試の合格ボーダーラインを基準にしています。
偏差値表にある学校の偏差値60(合格可能性50%)というのは、その塾の生徒全体の上位約15.9%に位置する生徒が合格のボーダーライン上にあるということを示しています。
その学校の推定合格者グループの下限を示しているといってもいいかもしれません。
つまり、学校の偏差値が高い、低いというのは、この推定合格者グループの中のある値(下限値であることが多い)を比較しているに過ぎません。
塾では、少しでも「偏差値が高い学校」に生徒を誘導しようとする傾向があります。
学校によってあたかも偏差値というランクの差があって、偏差値が1つ上の学校の生徒は、下の学校の生徒より優秀であるかのような誤解あるいは錯覚を招きかねないと思います。
実際にはどんな学校でも、トップ合格した生徒とボーダーぎりぎりで合格した生徒の間には大きな実力差があります。
学校どうしを比較して偏差値が数ポイント高い、低いという差よりも、それぞれの学校の中での個人差の方が大きいです。
具体的に見てみたいと思います。
息子が受験した、2021年12月のSAPIXオープン模試のデータによれば、合格ボーダーライン(合格可能性50%)の偏差値は、
開成が62、麻布が55 でした。
一方、SAPIXの資料によれば、開成の推定合格者グループ(SAPIXがオープン模試と2021年の入試結果から独自に推計)の偏差値は、54から74、麻布の合格者グループでは、48から68 の間に分布していました。
開成と麻布のいわゆる「偏差値」の差は7ポイントですが、それぞれの学校の中での個人差は何と20ポイント(!)も離れているのです。
学校間の差よりも、学校の中での実力差の方がはるかに大きいことがわかります。
しかも、開成と麻布の推定合格者グループの偏差値帯は54~68の間で重なっています。
開成と麻布は、いわゆる「学校の偏差値」の差が7ありますが、偏差値69以上のごく一握りの層を除けば、実際には開成も麻布も合格者の実力は大差がないと言えます。
偏差値が少しでも上の学校に入れば、下位の学校よりも優位に立てるというのは幻想にすぎません。
実際には、学校の中でどの位置にいるかの方がはるかに重要なことを示しています。
だからこそ、少しでも上の偏差値の学校という発想ではなく、入学後に本人が力を発揮できる環境なのかどうか、校風や学校との相性が合うのかどうか、という視点で志望校を選ぶことが大切な気がします。
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