私たち夫婦は、子どもが生まれたのに家にはその存在がなくて、2人で過ごす時間を、なんだか重たい雰囲気で過ごしてしまう事が多かった。最初の数週間は、特にそう感じていた。
私たちとは裏腹に、世間は花見のシーズンで、暖かい光に包まれているのに、私たちだけが影を纏っているみたいだった。
どうする?今年、花見とかする?と、それとなく夫に聞いた。でも、内心は、絶対にしなくちゃ!と、思ったのだ。娘がこんな状況の時に、花見なんてよく出来るな!って思うんじゃなくてさ、君の生まれたこの年の、桜を、お父さんとお母さんは2人で見に行ったんだ。とても、美しかったんだよ。来年必ず一緒に見ようねって、そんな話を娘にしたくて、お弁当を持って、桜の公園に出掛けた。
その日、桜の花は満開で、影にいたと思っていた私たちは、ピンクの花に優しく抱かれて、暖かい風の中にいた。こんな時間を、くれてありがとう。こんな思いに連れてきてくれてありがとう。そう思った。泣いたり、見たり、喋ったりさえまだ出来ない君は、生きてるだけで凄いんだ。こんな気持ちを教えてさえくれる。なんて素晴らしい存在なんだろうか。ありがとう。きて良かった。楽しむ事は悪い事じゃない。私たちは、私たちのペースで前を向かなくては。と、その日強く思った。