携帯電話が普及しはじめの頃、僕はまだ携帯をもてないでいた。

周りには、ちらほらと携帯を持つ、ませた中学生がいた。

家の近くに、中古CDを扱う店があり、そこの二階で客が書き込める掲示板があった。

おれと友達がその掲示板の魅力に引き付けられていた。

見ず知らずの人が友達の幅を広げるため?出会いを求める為に、なにかと理由を付けて書き込んでいる。


もてない野郎二人で見入っていた。


一つだけ気になる書き込みがあった。かわいい女の子独特の文字で『一緒に映画を撮りましょう』って。最後に電話番号が書いていた。若かったあの時、先のことも考えず二人は興奮した。

興味もないくせに、二人で映画を考えた。そして、なぜかドキドキした。まだ、文字を見ているだけなのに。

携帯の番号は、090から4ケタ4ケタで構成されている。いくら、テストで30点しか取れなくても4つの数字は覚えられる。

すごく興奮しながら、店を出た。すぐ隣の自動販売機でジュースを買った。

意味なんかなかった。ただ、落ち着きたくて。ふと横を見ると、公衆電話が。当時は、わりと色々な場所にあった。

友達のテレホンカードを入れ、震えた手でさっき覚えた4ケタを押した。

プルルルと言う呼び出し音と自分の心臓の音が共鳴していた。

ガチャっと出た瞬間に受話器を置きたくなる。

もしもし!・・・もしもし?

緊張しすぎて沈黙してしまった。


掲示板見たんやけど、映画興味あるねん。。もう、そこから何を話したか覚えてない。

そこから、その子と電話友達になった。


いっぱい話した。オカンに電話代で怒られるくらい電話した。お互い学校があるのに深夜まで電話した。中学生と高校生。


おれにとったら、あの時がなかったら、こんなに会話することができなかったし、映画に興味をもてなかったと思う。


今何してるんやろうなぁ~。大人になった、カエルを見たら、なんて言うやろう?


淡い青春時代やわ。