あの子は行事ごとが好きだった。

元々は、私の母親が好きだった。


全くクリスマスとは無縁だった家庭に、いつからか、にわかサンタがやってくる。

変な帽子を被り、付け髭をつけたサンタ()が夕食後にメリークリスマスと言ってやってくる。

祖母や父や私にささやかなプレゼントをご陽気に置いて行く。本当にささやかな、シャツやお菓子など。母と知りながらも嬉しかった。


そんな事が影響してか、私も行事ごとが好きだった。七夕、クリスマス、お節、豆まき。踊らされてると思いつつ。

おかげで、あの子は小6まで本当にサンタを信じていた。周りの友達に合わせてサンタなどいないといいつつ心の奥で信じていた。

私の周りの人にその話をしたらおかしいと散々言われた、でも信じていた。私は自分の演技力の賜物だと心の中で思っていたし、中学になり、さすがにこれはまずいのでは?と思い、今年からは親からのプレゼントはあるけど、サンタは来ないと伝えた時のあの子のショックの受けようは今でもハッキリと思いだす。


だから、行事ごとになると、ついお供え用のそれを買う。あの子の笑顔を想い出して嬉しい気持ちになってレジに並ぶ。

きまって、店では泣くのを我慢し、泣きながら家路につく。こんな事しか出来ない自分に毎回泣く。


いや、お月見はやってないよって。あの子のツッコミが聞こえる。そうだね。お月見は初めてかも。