【戻って来てくれて良かったね】と
おばあちゃんが
僕たちに言う

台所では
母が振り返ることもなく
食事の支度をしている

かたくなで
何かを決めてしまった様な
母の後ろ姿

僕には分かった
もう戻ってこないことを・・・





ある冬の深夜
僕だけが父に起こされて
母の実家へ

外は深い雪
人一人通れるだけの道を
街灯が照らしていた

静まりかえった町を
寝ぼけまなこの僕は
ただ黙って父の後をついて行った





母はこたつで寝ていた
きっと疲れたのだろう
ピクリともしない

父と母方の大人たちが
長い間
何かを話していた

父が帰ろうと
僕に言った
【お別れだから・・・】と

母の頬や髪を
何度かさすってあげた

さようなら
さようなら
何度か心の中で僕は言った・・・





もと来た道を
また二人で歩いた
家に着くと
僕はすぐに眠りについた

目覚めた朝は
またいつもと同じ一日がつづく

夕べの事は
夢だったのだろうか?

ただ・・・
母の姿はそこにはなかった