毎年、この季節になると思い出すことがある。

2年、いやもう3年になるのか。



東京の恵比寿に住んでいた頃。

当時は勤め人だったから、いつものように出勤しようとマンションを出て数歩。

出勤途中のサラリーマンやOLの雑踏の中。

うつ伏せに倒れている一人の男性。



誰も気に留めること無く、黙々と通り過ぎている。

確かに、東京では珍しくも無い光景かもしれない。

身なりもいわゆるホームレスに近い。



声を掛けてみた。

すでに息が無かった。

体温もほぼ失われている。



仰向けにして、すぐに心臓マッサージを始めた。

「誰か、救急車を呼んでください」と叫ぶ。

誰も電話を出そうとしない。

これだけ携帯電話が普及しているのに。

持ってない方が珍しいはずなのに。



誰一人として近づく気配も無い。

ちらと視線を向けた後、そそくさと会社に向かう面々。



3分ほどして、ようやく一人の男性が手助けしてくれた。

やっと救急車も呼ぶ事ができた。

119番のまま警察にも来て貰うように頼んだ。



男性と交代しながら心マを続行。

ほどなくして、救急車、パトカーが相次いで到着。

やっと心マをプロにお任せする。



救急隊員への説明。

警察の事情聴取。

救急隊によると、すでに死後1時間以上は経過しているとの事。



東京って未だに好きになれないけど。

この時も、やっぱり嫌な街だなと思った。

好きになれない理由はこういう所だったのかな。



大勢のサラリーマンやOLが向かう先には。

大きな大きな保険会社の本社ビル。



少なくとも、この保険会社と契約する事は一生無いな。