近鉄の"夢洲直通"に必須、「複電圧車」

の仕組み電圧異なる区間を

直通可能、国内各地で活躍中

↑↑箱根登山鉄道は全車両が直流750Vと直流1500Vに対応した複電圧仕様車となっている

近畿日本鉄道(近鉄)は5月下旬、統合型リゾート(IR)の計画される夢洲(大阪市)への直通に向け、架空線電化区間の近鉄各線から第3軌条区間のけいはんな線・大阪メトロ中央線の直通に備えた可動式集電装置の試作品が完成し、試験に着手すると発表した。

近畿日本鉄道は、2024年秋に通勤型の新車両を投入すると発表しました!

 

この架線区間と第3軌条区間の直通運転を実現するためには、もう1つ必要となる条件がある。それは車両が「複電圧車」であることだ。

複電圧車、どのくらいある?

複電圧車はその名の通り複数の電圧に対応した車両。近鉄の場合、架空線電化区間の電圧は直流1500Vなのに対して第3軌条区間の電圧は直流750Vとなっており、直通運転をするためには2つの電圧に対応させる必要がある。

近鉄の夢洲直通に関し、実は技術的に大きな問題ではない。

複電圧車は過去にも多数存在したが、今回は改めて、現在国内で運用している複電圧車とその仕組みを考えてみたい。

↑↑箱根湯本駅構内にある直流750V区間と直流1500V区間の境にあるデッドセクションを通過する箱根登山鉄道モハ1形(右)。手前が直流1500V区間で小田急の車両が乗り入れる。

 

現在、日本国内で運用している複電圧車は、箱根登山鉄道の車両、JR東日本の新幹線E3系・E6系・E926形East i(電気・軌道総合試験車)複数電力車(交流、直流、電圧、周波数等の異なる路線に対応車両は他にもある)

↑↑秋田新幹線のE6系「こまち」

↑↑そして在来線ではE001形「TRAIN SUITE 四季島」

↑↑JR貨物EH800形電気機関車がある。

EH800形は逆に2万5000Vで本来の性能(EH500形と同等の4000kW)を発揮できる回路構成としている。これは2万5000V区間内にある青函トンネルに連続勾配があるためだ。そのため2万V区間での出力は、2万5000V区間の約76%の3400kWとなっている。もっともEH800形が走行する2万V区間は平坦な路線、しかも単線で最高速度も低いため、出力のダウンは問題とならない

 

箱根登山鉄道の車両は2006年3月以降、直流750Vの箱根湯本―強羅間のみで営業運転するようになった。だが、車両基地がある入生田は1500V区間にあるため、現在も複電圧仕様車が必要となっている。車両は急勾配が連続する750V区間で本来の性能が発揮できるよう設計されている。

1993年以前に製造された抵抗制御車のモハ1形、モハ2形、1000形「ベルニナ号」、2000形「サン・モリッツ号」は、750V用回路と1500V用回路を電力変換器で切り換える方式を採用し、モーターに入力する電圧を揃えている。運転台には切り換えスイッチが設置されている。

VVVFインバータ車は変換器いらず

箱根登山鉄道の3000形・3100形「アレグラ号」

↑↑箱根登山鉄道の3000形・3100形「アレグラ号」

一方、2014年以降に登場したVVVFインバータ制御の箱根登山鉄道の3000形・3100形「アレグラ号」は、直流をVVVFインバータ装置で三相交流に変換し、電圧と周波数を可変させながら出力する仕組みのため、入力した電圧にかかわらず、モーターを制御する電圧は変わらない。

そのため、これらの車両は複電圧用の特別な機構を搭載していない

JR東日本とJR貨物の複電圧車はすべて交流2万Vと交流2万5000Vに対応した車両だ。交流車両は入力した2万Vもしくは2万5000Vを主変圧器で適切な電圧に降圧して主回路に供給するため、出力側に切り換え機構を設ければ同じ電圧で出力することも可能だ。

しかし、山形・秋田新幹線区間に乗り入れるミニ新幹線車両のJR東日本E3系・E6系・E926形East iには複電圧用の特別な機構はない。そのため2万V区間では2万5000V区間よりも性能がやや落ちる。

ただしミニ新幹線の場合、本来の性能は2万5000Vの東北新幹線区間で発揮できればいい。2万Vの山形・秋田新幹線区間では電圧が低い分性能が落ちるものの、最高速度が時速130kmなので問題とはならない。

「四季島」も複電圧車だ
在来線車両では、JR東日本E001形「TRAIN SUITE 四季島」と北海道新幹線との共用区間で使用されるJR貨物EH800形が交流2万V/2万5000Vの複電圧仕様となっている。青函トンネルを含む北海道新幹線との共用区間が交流2万5000Vのためだ。
 

E001形の主変圧器は交流の電圧にかかわらず、ほぼ同じ電圧に降圧して出力できるように接触器で切り換えている。

 

今後登場するであろう近鉄の複電圧車は、VVVFインバータ制御であるから特別な切り換え機構は搭載しない可能性がある。また、高速運転を行う1500V区間の性能を基本とすると考えられ、その場合、750V区間の性能はダウンすると思われる。

この画像はhttps://onl.sc/n6Mrwq7 の水音車両サイトより引用しています。

 ↑↑2025年の大阪万博開催にあわせて準備が進められている、大阪メトロ期待の新車「400系」がいよいよ姿を見え始めました!!

近鉄けいはんな線・大阪メトロ中央線は最高速度が低いため問題とならないだろうが、どのような仕様となるのか今から楽しみである。

 

by   GIG@NET

 

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