JR貨物EF510形300番台

「銀釜スピリット」受け継ぐ機関車、

「ECO-POWER レッドサンダー」の愛称を持つ省電力・高出力の交直流電気機関車EF510形は、導入当初からJR貨物所属の0番台、かつて寝台特急「北斗星」「カシオペア」を牽引し、JR東日本からJR貨物へ譲渡された500番台が現在活躍中。富山機関区に計38両を配置し、日本海縦貫線(北陸本線、信越本線、羽越本線など日本海沿岸の路線)や東海道・山陽本線で貨物列車を牽引している。

新たに製作する300番台は、既存の0番台・500番台と同様、直流1,500V・交流20,000V(50Hz / 60Hz)に対応し、PWM方式電圧形インバータ・コンバータを採用した6軸の電気機関車に。鋼製の車体に新たな塗装を施し、銀色をベースに、車体下部を紺色と赤いラインで配色した。銀色は通称「銀釜」と呼ばれた無塗装ステンレスの機関車EF81形303号機等にちなんだカラーとなる。車体側面のナンバープレートは赤色とし、中央部に「RED THUNDER」のロゴマークをデザイン。前照灯をLED化したことも特徴に挙げられる。

配布された主要諸元表によれば、EF510形300番台の主要寸法は車体長(連結面間)19,800mm、車体幅2,887mm(最大幅2,970mm)、車体高4,080mm、固定軸距2,500mm、全軸距14,900mm、台車中心間距離6,200mm、車輪径1,120mmとのこと。シングルアームのパンタグラフ(形式は「FPS5A」)を2台設置し、パンタ折りたたみ高さは4,280mmとされている。

軸配置は「Bo-Bo-Bo」。運転整備重量は100.8トン(軸重16.8トン)。最高運転速度は110km/h(設計最高速度120km/h)。定格出力3,390kW・定格引張力198.9kN・定格速度58.4km/h(いずれも1時間定格)。台車に関して、軸箱支持方式は「軸はり式」、枕ばね方式は「空気ばね式」、動力伝達方式は「1段歯車減速つりかけ式(アクスルローラ式)」、歯車比は「5.13(82/16)」、引張力伝達方式は「低心皿式」と記されている。

ブレーキ方式は「電気指令式空気ブレーキ(発電/回生ブレーキ併用)」(回生ブレーキは交流区間のみ)、踏面ブレーキは「ユニットブレーキ(片押し式)」、留置ブレーキは「ばね作動式留置ブレーキ(ユニットブレーキ内蔵)」。主電動機は「三相かご形誘導電動機」を6個搭載し、定格出力(1時間)565kW・定格電圧(1時間)1,100V・定格電流(1時間)370A。主変圧器は「外鉄形ブリーザ方式、送油風冷式」で容量3,490kVA。主変換装置は「PWM方式電圧形コンバータ」「PWM方式電圧形インバータ」(強制風冷式)をそれぞれ6個搭載。補助電源装置はインバータ部が「PWM方式電圧形インバータ装置」で容量170kVA、整流部が「混合ブリッジによる整流方式」で容量175kVA。ブレーキ抵抗器(強制風冷)は定格容量2,370kW。空気圧縮機は「C2000相当×2台」とのこと。

運転保安設備については、「ATS-DF、ATS-SF」「列車無線装置(デジタル、B/Cタイプ)」「防護無線装置」「EB及びTE装置」と記されている。JR九州の「ATS-DK」に対応した自動列車停止装置「ATS-DF」を搭載している点が既存の0番台・500番台と異なるという。

また、0番台・500番台は走行区間に直流区間が多いことから発電ブレーキを搭載しているが、300番台が走る予定の九州地区はほとんどが交流区間のため、交流回生ブレーキを装備して消費電力の削減をめざすとしている。なお、量産先行車のEF510形301号機では、既存車と同じ発電ブレーキ関係機器を搭載して出場し、「ソフトウェアは切換の上、回生ブレーキの各種性能確認走行試験を行い、試験結果確認後に発電ブレーキ関係機器を撤去予定」と説明があった。

EF510形301号機の公開は川崎車両兵庫工場で行われた。この車両は川崎車両と三菱電機が共同で製作しており、製作会社を示す車体のプレートにも両社のロゴマークが入っている。車両公開に、挨拶した川崎車両の代表取締役社長、村生弘氏は、「当社がJR貨物へ納入した機関車は現在、北海道・本州・四国で活躍しており、EF510形301号機は九州の貨物列車を牽引します。『銀釜スピリット』を受け継ぐ銀色の車体で、JR貨物の九州での貨物輸送に対する強いコミットメントを感じます」と述べた。

JR貨物の取締役兼常務執行役員、吉澤淳氏も挨拶。EF510形300番台について、「(川崎車両からの)出場後は、九州地区の貨物列車牽引に使用するための各種性能確認走行試験を行い、2023年3月からの運行開始を予定しています。九州地区における貨物列車の新しい顔として、活躍を期待しているところです」と語った。

EF510形300番台は九州地区で活躍する交流電気機関車ED76形・交直流電気機関車EF81形の置換え用車両として導入し、最終的に17両体制で置換えを進めるという。なお、置換え対象のED76形・EF81形は現在、交流区間のみの運用となっており、EF510形300番台も基本的に九州島内での使用を考えているとのことだった。

赤くないのに「レッドサンダー」

貨物車を牽引(けんいん)する同形式の車両は本州で広く使用されているが、九州向けは消費電力を削減するブレーキを実装。従来の赤い車体とは異なり、現在九州で運行している貨物車両と同じ銀色を使用するが、名前は「レッドサンダー」の愛称を継承する。運用開始は令和5年3月を予定している。

オリジナルの「レッドサンダー」EF510-12号機は赤い電気機関車

寝台特急「北斗星」を牽引する電気機関車はEF510-501号機でした。

 

日本海縦貫線は区間内が直流・交流 (60 Hz) ・交流 (50 Hz) の異なる方式で電化され、これまで同区間を通して運転される機関車牽引列車はEF81形を使用してきた。JR移行直後から後継機の開発が開始され、同区間用として1990年(平成2年)にEF500形が試作された。定格出力 6,000 kW の同形式は輸送量に比べ過大な出力や技術上の問題などで量産に至らず、輸送量に適合した性能を有する新型機関車の開発が以後の課題とされた。

東海道山陽本線を主とする直流電化区間用としては、運用コストを適正化した形式として同時期にEF210形が製作された。同形式の設計を基にして交直両用機の開発が進められ、2002年(平成14年)1月三菱電機川崎重工業で先行量産車の1号機が完成した。これがEF510形である。

 

by   GIG@NET

 

 

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