フリーゲージトレイン(軌間可変電車)とは、軌間(線路幅)に合わせて車輪の左右間隔を変えることができる電車です。 新幹線(標準軌)区間を走ってきた車両が軌間変換装置を通過することにより在来線(狭軌)に乗り入れでき、乗り換えの手間がなくなり所要時間を短縮させることができます。

◆(JR九州)向け新型フリーゲージトレイン(FGT)3次車、試験走行

鉄道車両ニュースとしては去年の4月に掲載された新聞記事から、フリーゲージトレインに付いてFGT電車は大変興味があるので、調べてみました。

新幹線とそれ以外の多くの路線(在来線)では、線路の幅が違う事はご存知の方々も多いでしょう。

 2014年の4月にお披露目されたこの新幹線型の車両は、自身の台車の車軸車輪幅を変える事で、通常の新幹線線路から、乗り換えることなく在来線に直通運転することが出来るという列車、 「フリーゲージトレイン」の最新型の試験車両(3代目)です。新しい在来線直通新幹線の形、試作車らしからぬ整った面構えは、将来の運行を担うJR九州の気合いの表れでしょうか。
4月19日、JR九州の熊本総合車両所で、フリーゲージトレイン(FGT)の新型試験車両(第3次車)が公開されました。 その車体には3月から東京―長野間で運行開始した北陸新幹線E7系の面影が見える。 それもそのはず。E7系とFGTの車両デザインを担当したのは、どちらも川崎重工業です。
 車両製造も4両編成のうち、川崎重工が先頭車を含む3両を製作しました。残りの1両は日立製作所の製造です、九州新幹線・長崎ルートで活躍予定 。
FGTとは車輪の間隔を変えることで、線路幅が異なる新幹線区間と在来線区間の両方を走れるようにした列車です。  鉄道・運輸機構が開発し、2022年度開業予定の九州新幹線・長崎ルート(新鳥栖―長崎間)は在来線区間も走行 するため、FGTの導入を前提として工事が進められています。

在来線に直通する新幹線は、すでに秋田新幹線や山形新幹線があるが、これらのケースでは在来線の線路幅を新幹線に合わせるなど長期的な工事負担がかかる。 「フリーゲージトレイン」はそれを抑えることができるシステムとして研究が進められている。

どうやって車輪の幅を切り替える?

フリーゲージトレインが車輪の幅を変える際には、新幹線と在来線の線路の間に設けられる「ガイドレール」を使う。この上を車輪が通る事で変換ができる。 今回の試験では熊本県の新八代駅に設置されたガイドレールを使い、試験を行う。今回登場した3代目(3次車)は、JR九州が開発したもので、これまでの「フリーゲージトレイン」で最も長い4両編成。 車体も限りなく新幹線のような車体となり、より実用化に向けた仕様になっている。

FGTの台車は重量が重く、線路に負担が重く、軽量化し車体もカーボンファイバーを使用し軽量化、電気機器や、台車(主変換装置、ブレーキ装置、ヨーダンパ)の軽量化を図っています。

 主に九州新幹線の熊本~鹿児島中央間と在来線(JR)熊本―新八代間で、約3年かけて主に車両2017年度以降には、量産向けフリーゲージトレイン車両を開発し、2022年度頃には長崎方面での実用化を目指している。
この電車は、4両編成で主要機器を4両に分散した4両1ユニット方式方式を取っている。装置の耐久性の確認をチェックするそうです。

◆ 同車の試験目標は最終的に、新幹線区間:270 Km/h、在来線区間:130 Km/h、接続線:50Km/h となっています。

長崎新幹線の「フリーゲージトレイン断念」で四国が青ざめる 

2018/07/22 — 長崎新幹線新鳥栖―武雄温泉間でフリーゲージトレインが採用されないことになった。その結果、同区間は一般の新幹線と同じ規格かミニ新幹線のいずれかになる。この決定に最もショックを受けているのは当事者であるJR九州 ...

近鉄のフリーゲージトレインは「第2の名阪特急」になる? 

2018/06/15 — 長崎新幹線のフリーゲージトレイン(軌間可変列車)採用は消えたが、近鉄が開発に積極的な姿勢を見せている。新幹線でなくても、この技術は役に立つ。なぜかというと!

[フリーゲージトレインはダメじゃない]

 ところで、フリーゲージトレインを強力に後押しする勢力は、国土交通省でもJRでもなく、財務省だ。財務省としては、全国にこれ以上新幹線を建設するなど無駄遣いだ。フリーゲージトレインがあれば、既存の新幹線と在来線を乗り換えなしで接続できる。日本の高速鉄道網を低コストで構築できると考えた。だからフリーゲージトレインの開発予算設定は前向きだ。

 もっとも、開発期間の延長は誤算だっただろう。すでに500億円に達する予算を使いつつ、実用化は遠い。技術的にはクリアした。しかし、部品の交換頻度の高さなど運用コストの問題、重量増による運行線区限定などの制約が解決できていない。このまま開発を続ければ、その費用でミニ新幹線を作れたではないか、という金額になる恐れもある。

 それでは、フリーゲージトレインはダメな技術かといえば、そんなことはない。欧州の軌間が異なる国を結ぶ列車、アジアと欧州を結ぶ列車では実用化されている。海外でできることが、なぜ日本でできないか。答えはとても単純だ。新幹線の運用方法と相性が悪いからだ。つまり、「日本では」ではなく、「新幹線では」できない、となる。

 欧州で採用されているフリーゲージトレインと日本が新幹線で目指すフリーゲージトレインの違いは、台車の構造にある。欧州のフリーゲージトレインは機関車と客車で構成されている。機関車は車体にモーターを搭載し、動力をドライブシャフトで車軸に伝える。台車の構造は簡素だ。客車に至っては車軸すらない。左右の車輪が独立しており、軌間に合わせて左右にスライドさせるだけだ。外観は機関車と客車が一体的なデザインで、新幹線と変わらないように見えるけれども、実は両端が機関車、中間車は客車だ。

 新幹線は電車方式にこだわり、全ての客車にモーターを搭載している。その上で車体の軽量化に取り組み、重量の大きな機関車を使わない。客車にモーターを搭載するというのは、実際には台車に小型で高性能なモーターを組み込んでいる。欧州の軌間は標準軌(1435ミリ)や広軌(1435ミリより大きい)だから、台車の枠も大きい。日本は標準軌と狭軌(1067ミリ)だから、台車の大きさに限界がある。モーターを積むだけでも複雑になってしまうのに、軌間可変装置まで組み込むことになると、かなり複雑だ。

 ただし、私は新幹線のフリーゲージ台車は、そのうちに実現すると思う。フリーゲージトレインの開発に参加した川崎重工は、炭素繊維強化プラスチックを使った軽量台車「efWING(イーエフウィング)」の実用化に成功している。川崎重工は新幹線の鋼製台車で亀裂を起こして信頼を失ってしまったけれども、efWINGの高速車両への対応が実現すればチャンスがある。モーターだってもっと小さく、パワフルになるだろう。しかし、やっぱりこれは「そのうちに」だ。今のところは絵空事で、これをアテにして事業プランを進めてはいけない。

 つまり、結論として、現状ではフリーゲージと新幹線の相性は悪い。でも可能性はないわけではないから、高速電車向けのフリーゲージトレインの開発は続けるべきだ。ただし、それを待っていられないのが長崎新幹線である。

 

近鉄がフリーゲージトレインに取り組む理由

 新幹線のフリーゲージトレインが行き詰まっている中、近畿日本鉄道が名乗りを上げた。6月22日、同社の総合研究所にフリーゲージトレイン開発推進担当役員を就任させる。国交省とも連携する方針とのこと。採用路線として、橿原線と吉野線の直通列車が上がっている。近鉄は大阪・京都・奈良・名古屋を結ぶ路線網と、大阪阿部野橋・吉野を結ぶ路線網で軌間が異なる。フリーゲージトレインを走らせれば、全路線を直通する列車を設定できる。新幹線の採用が消えたいま、長崎の敵を吉野で討つという形だ。

 近鉄は大手私鉄で路線距離の合計が最も長い。ちなみに2位は東武鉄道、3位は名古屋鉄道だ。巨大な路線網が出来上がった背景には、過去に鉄道事業者の合併、買収を繰り返した歴史がある。その結果として、自社の路線の規格を統一できない。これはよくある話で、例えば京王電鉄は京王線と井の頭線で軌間が異なるし、阪急も京都線系統は他の路線と車体のサイズが異なる。

 近鉄の場合は、多くの路線が新幹線と同じ軌間、標準軌だ。これは路面電車から始まった歴史による。しかし、南大阪線と吉野線は狭軌である。吉野線は吉野鉄道が軽便鉄道として建設され、吉野口で国鉄和歌山線と線路をつなぎ、貨車を直通させるための路線だった。お花見の時期は国鉄から吉野へ直通する旅客列車もあったという。

 南大阪線・道明寺線・長野線は大阪鉄道が開業した。御所線は大阪鉄道の子会社の南和鉄道による。大阪鉄道は狭軌を採用しており、後に吉野線と直通運転する。これらの路線は後に近鉄の前身の大阪電気軌道に買収された。こうして、南大阪線・吉野線系統は近鉄の広大な路線網から独立した運行系統となった。

 近鉄は路線網が広大なだけに、大阪・京都・名古屋の三大都市と、京都・奈良・伊勢・吉野など観光名所に恵まれている。吉野線は2004年にユネスコ世界遺産に指定された「紀伊山地の霊場と参詣道」へのアクセスルートとして、訪日観光客からも注目されている。近鉄では南大阪線と吉野線を直通する特急「さくらライナー」と、観光列車の「青の交響曲」を走らせている。フリーゲージトレインを実用化すれば、橿原線を経由して、大阪・京都・名古屋から吉野へ向けて特急列車を運行できる。世界遺産へ、新幹線の駅から直通列車を運行できるわけだ。

 

近鉄はフリーゲージトレインの技術を引き継ぎ、実用化に向け頑張って欲しいですね!

 

by  GIG@NET