句意 寒紅を差して亡くなった母親の棺を閉ぢたというのです。
三人で餃子を包む炬燵かな 岩井 タカ子(加古宗也選) 1: 季語は炬燵: 季節は冬: 2: 句意: 子供ら三人と台所ではなく炬燵で 餃子を包んでいるというのです。 炬燵の4人目の席は餃子が出来上がったころに 帰ってくるお父さんの席です。 3: ハッとする言葉の部分: 三人で 餃子を包む 炬燵かな 「三人で餃子を包む」の「三人」も 「餃子を包む炬燵かな」の「炬燵」も効いています。 この句の家族構成まで深読みをしてみてください。
特選 長生きのついでに仔猫もらひけり 野澤 俊二(大串章選) 1: 季語は仔猫。 季節は春: 2: 句意: 長生きをし過ぎて後は死ぬだけの人生、 そのついでの余生に仔猫をもらってしまったというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 長生きの ついでに仔猫 もらひけり
もうすでになにかはじまる牡丹の芽 梅田 昌孝(今瀬剛一選) 1:季語は牡丹の芽: 季節は春: 2: 句意: 牡丹の芽が出たかと思うと もうすでに咲くための何かが始まっているというのです。 3: ハッとする言葉: もうすでに なにかはじまる 牡丹の芽
節分の鬼は校長逃げ上手 木塚しょう(加古宗也選) 1: 季語は節分。 季節は春: 2: 句意: 節分の鬼役の校長は豆に当らないように 上手に逃げ回っていたというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 節分の 鬼は校長 逃げ上手
雪晴れや躓(つまづ)きのなきけもの道 道端 しづえ(古賀雪江選) 1: 季語は雪晴れ。 季節は冬: 2: 句意: 雪がやんで空が晴れた日の山に 躓くもののないけもの道が続いていたというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 雪晴れや 躓きのなき けもの道
小豆(あずき)粥 健診結果届きけり 古賀京子(角川春樹選) 1: 季語は小豆粥: 季節は新年: 2: 句意: 小豆粥を食べていると 健診結果が届いたというのです。
三が日働き詰めのイルカかな 生田 裕子(角川春樹選) 1: 季語は三が日。 季節は新年: 2: 句意: 三が日働き詰めのイルカかな イルカショーのイルカは正月一日・二日・三日と働きづめだというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 三が日 働き詰めのイルカかな
約束の海を見に行く初電車 田守 三里(角川春樹選) 1: 季語は初電車: 季節は新年。 2: 句意: 約束の海を見に行く初電車 お正月は電車に乗って海を見に行くと いう約束を実行したというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 約束の 海を見に行く初電車
パーマ屋の鏡の中にシクラメン 糸永 悦子(角川春樹選) 1: 季語はシクラメン。 季節は春: 2: 句意: パーマ屋の鏡の中にシクラメンが咲いていたというのです。 3: ハッとする言葉の部分: パーマ屋の 鏡の中にシクラメン
カーテンを引くや一夜の銀世界 伊藤孝子(角川春樹選) 1: 季語は銀世界: 季節は冬: 2: 句意: カーテンを引いて開けると そこに昨日の夜の間に積もった 銀世界があったというのです。 3: カーテンを引くや 一夜の銀世界
境内に闇有り余る去年今年 松田 吉上(加古宗也選) 1: 季語は去年今年。 季節は新年: 2: 句意: 去年から今年に入れ替わる境内には 暗闇が有り余るほどだというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 境内に 闇有り余る 去年今年
除夜詣思はぬ人に遭ひにけり 柴田 毒鬼(加古宗也選) 1: 季語は除夜詣。 季節は新年: 2: 句意: 除夜詣で思はぬ人に遭ったというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 除夜詣 思はぬ人に 遭ひにけり
秀逸 放たれてより猟犬となりにけり 堀内 順子(加古宗也選) 1: 季語は猟犬。 季節は冬: 2: 句意: いつもは番犬として玄関前に居る犬が 野に放たれてからは猟犬となったというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 放たれてより 猟犬となりにけり
初空てふいつもの空でちがふ空 市川 武子(稲畑廣太郎選) 1: 季語は初空: 季節は新年: 2: 句意: 初空という元旦の空は いつもの空と同じ空であって いつもの空とちがう空だというのです。 3: 初空てふ いつもの空でちがふ空
二歳には不思議な魔法しゃぼん玉 岩瀬 孝雄(稲畑廣太郎選) 1: 季語はしやぼん玉。 季節は春: 2: 句意: しゃぼん玉は二歳児には不思議な魔法のようなものだというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 二歳には 不思議な魔法 しゃぼん玉
軒氷柱潜る生家の勝手口 大平 玲子(大串章選) 1: 季語は軒氷柱。 季節は冬: 2: 句意: 太い軒氷柱を潜って 母が独り住まいしている生家の勝手口から 我が家に入ったというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 軒氷柱潜る 生家の勝手口
枯木山奥まで朝日差し込めり 濱田 武寿(大串章選) 1: 季語は枯木山。 季節は冬: 2: 句意: 枯木山の奥まで朝日が 差し込んでいるというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 枯木山 奥まで朝日 差し込めり
秀逸 公園の闇に佇む雪だるま 今村 美沙子(大串章選) 1: 季語は雪だるま。 季節は冬: 2: 句意: 夜になって 雪だるまが公園の闇に佇んでいる というのです。 3: ハッとする言葉: 公園の 闇に佇む 雪だるま 佇むという意味で佇むよりも もっとよい適語を見つけたら更によい句になりそうです。
特選 雪女溶けて残りし水溜まり 渡辺 嘉之(大串章選) 1: 季語は雪女。 季節は冬: 2: 句意; 雪女が溶けて残ったのは水溜まりだったというのです。 3: ハッとする言葉の部分: 雪女 溶けて残りし 水溜まり
特選 駅暖炉行き先違ふ人とゐる 北川 新(大串章選) 1: 季語は暖炉: 季節は冬: 2: 句意: 駅の待合室の暖炉の前に 行き先の違ふ人たちと一緒に 暖をとっているというのです。 3: ハッとする言葉: 駅暖炉 行き先違ふ 人とゐる