紙幣改刷と切手 | 郵便・切手から 時代を読み解く

郵便・切手から 時代を読み解く

切手コレクター必見! 経済評論家にして郵便・切手評論家でもある池田健三郎が、辛口トークと共に「ゆうびん」や「切手」を通じて時代を読み解きます。
単なる「切手あつめ」や「郵便物コレクション」とは次元の違う、奥深き大人のライフワークの醍醐味をお伝えします。

財務省から、2024年以降に流通させる新紙幣の様式についてのリリースが出た関係で、一昨日から昨日にかけては急遽、報道関係の対応に追われることになり、テレビとラジオ生出演が重なって多忙を極めました。

 

フィラテリストでもあるわたくしが視聴者にぜひ知っておいていただきたかったことは、「新札に採用される3人の偉人(渋沢栄一、津田梅子、北里柴三郎)はいずれも、過去に切手図案に採用されている」ということです。

 

 

すなわち、これをもって既に、この3名の人選に関し「公共性のテスト」は終わっているわけです。

 

その意義は、わが国の郵政当局(全株式を国が保有する日本郵便)が独占的に発行している郵便切手は、紙幣同様に公共性が極めて強い公共財なので、「何か図案選定上の問題があれば、今日までのどこかでそれが顕在化しているはずだ」ということ、つまり、それがないということは「紙幣の図案とするに何らの問題なし」ということです。

 

例えば渋沢栄一翁について、今になって「彼はかつての大日本帝国の植民地経営に貢献したので不適」などという趣旨のクレームが近隣諸国から出てきたとしても、「それならば何故、切手に採用された段階でそれを指摘しなかったのか。ましてや国内使用限定の紙幣と異なり、切手は外国郵便物に貼られて世界中にバラまかれたのに」と返されてしまえば、そうした「クレーマー」はぐうの音も出ないということになりましょう。