秘境グルメ物語 | サバンナの風のブログ

秘境グルメ物語

今日は皆様を、とっておきのケニアB級グルメ、ヤギの焼肉

「ニャマ・チョマ」屋さんに御案内します。


行けども行けども車はアカシアの疎林を切り裂いて走ります。

赤ちゃけもうもうとした土ぼこりが追っかけて来ます。

乗客の皆様には、上下左右前後、予測のつかない振動と揺れに突っ張ったり

踏んばったり、アフリカ大陸苦難の洗礼を堪能して頂ました。


あまり取れませんが身体の土埃を払いましょう。

御連れしたのは「オオ・アフリカ!」と叫びたくなる典型的な乾燥サバンナ

の村です。

観光客は絶対に来ない辺境です。

私どもは、ここで村人の力で道を直し、農家の人々が自らマンゴーの果樹園

を作るのを御手伝いしようとしています。


気をつけて下さい! ― そのアカシアの木には棘があります。

あそこのダチョウの群れが見えますか?

気温は摂氏30度を超えています。

木陰に入るとさわやかでしょう。

空気が乾いているからです。


ぜいたくな時の流れの中で暮らしている農家のお父さん、お母さん方

のペースに巻き込まれ、昼食の時間が遅れて申し訳ありません。

空腹でしょう。


こんな時に駆け込むのはブッチャリー・肉屋さんにかぎります。

表通りはただの肉屋さん。もちろん冷蔵庫はありません。

虫よけの金網で囲った小部屋に背骨で半分に切られた裸のヤギがぶら

下がっています。

カウンターの上には丸太のまな板と計りがのっています。

肉と骨を切り分ける道具はマサカリ、ノコ、蛮刀「パンガ」です。

単純明解キロ売りが単位です。


カウンターを抜けて奥に入ると明るい庭に出ます。

店の持ち主は芸術を解する上級者。武骨質実剛健様式で統一されています。

傾いて転びそうな、トタンぶきの掘っ立て小屋は小部屋に仕切られています。

摂氏30度の世界。

そよ風を呼び込むためか地上1m位まである壁の上は屋根までなんにもなし。

小部屋にはテーブルとイスがしつらえられています。

遊びまわるテーブルに業を煮やしたお客さんはテーブルの足の下に小石を

つめています。


皆様方には絶対見せてはならないない調理場があります。

鉄の細長い大きなヒチリンに炭がおこされています。

炭火の上には粗っぽい金網をのせています。

網の上は幸せ色の景観です。

ヤギの骨付きあぶり肉「ニヤマ・チョマ」に火がとおっています。

とろけたタマネギとトマトの鍋の中で肉がぐつぐつ煮えています

「チェムシャ」と言います、塩味の内臓煮込「マツンボ」も食べごろです。

よりどりみどり。

悩みの時です。

どれを選ぶか。

トーモロコシ粉のダンゴ・主食の「ウガリ」、タマネギとトマトのサラダ

「カチュンバリ」も定番です。



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空腹にはたまらない絢爛豪華な幸せ色の光景です。

ヒチリンの上いっぱいにヤギ肉のタマネギ・トマト煮(チェムシャ)と塩煮の内蔵肉(マツンボ)の鍋が並べられています。



注文しましたが調理場も悠久の時の流れに支配されています。

冷えてないコカ・コーラーを飲みながら、すきっ腹を楽しむしか

手はありません。

青年が洗面器と手洗い水を持って現れると準備が整った証です。


テーブルに内臓煮込、サラダ、ウガリが並びました。

旨い内臓煮込をつまんでいるうちに、まな板にのった主役のあぶりあばら肉

の登場です。


こんがりとしてもう1秒も待ちたくない香りを発散しています。

「焼き3年」「切り分け3年」。

あばらの切り分けは調理部長の晴れ舞台。


腕の見せ所。

誇らしそうな顔で淡々と儀式をしています。

儀式はどうでもいい私たちです。

もう紳士もない淑女もない。

あまりと言えばあまりの本音と本能むきだしの餓えたけものになりました。

指を切られない早業。

包丁が停まる隙狙い。

表技裏技を繰り出しあばら肉へのスクランブル。

太陽の鮮烈さ、自然の荒々しさ、サバンナの恵みはどこまで豊潤で芳醇。

「オオ、アフリカ!」。



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火のとおったヤギのあばら肉(ニャマ・チョマ)です。


知られざるミネラルを含んでいる草とアカシアの木の葉を食べて育った

辺境のヤギが一番旨いと言われています。


秘境のB級グルメ堪能して頂けましたでしょうか。