■韓国「第2首都」建設と経済停滞の実態

●韓国経済の現状

  • 2023年のGDP:1兆7920億ドル(世界13位)。

  • GDP成長率1.4%(OECD加盟国の中でも低水準)。

  • 主な産業構成

    • 製造業依存率 約30%以上(OECD主要国平均1〜2割)。

    • サービス業比率 約50%(主要国は約70%)。

  • 主な輸出産業半導体(輸出額の約20%)自動車(6割輸出)

●経済停滞の主な要因

  1. 製造業偏重構造

    • サービス業の利益創出速度が遅く、生産性の低迷を招く。

    • 製造業に付随する**付加価値サービス(物流・R&Dなど)**が未発達。

  2. 財閥中心の経済体制

    • サムスンなどの大企業が市場を支配

    • 中小企業の成長を阻害し、経済の柔軟性を欠く。

    • サムスンの業績悪化がGDP順位低下に直結。

  3. 賃金格差と高失業率

    • 大企業の賃金水準が高く、中小企業との差が拡大。

    • 若年失業率9%超(日本の約2倍)。

    • **女性の昇進・賃金格差(ガラスの天井)**も深刻。

  4. 少子化の加速

    • 合計特殊出生率0.72(世界最低)。

    • 結婚・出産が「経済的贅沢」と化し、人口減少が進行。

  5. 政治の不安定性

    • 大統領任期5年・再選禁止による政策断絶。

    • 保守派と革新派の政権交代が頻発(約10年周期)。

    • 政権交代のたびに経済政策が180度転換


●ソウル一極集中の問題

  • 人口の約20%以上がソウルに集中。

  • 人口密度:1平方kmあたり約1万5,000人(東京の約2倍)。

  • 住宅価格高騰により、半地下住宅(パンジハ)居住者60万人超

  • 北朝鮮との距離が近く、安全保障上のリスクも高い。


●第2首都「セジョン市」建設の背景と進捗

  • 1970年代から構想、2009年に本格始動

  • 目的:

    • 行政機能分散によるリスク軽減。

    • 地方創生とソウルの人口緩和

  • 移転進捗:政府機関の約80%がセジョンへ移転済み

  • 現人口38万人 → 2030年に50万人を目標

  • しかし依然として、経済・教育の中心はソウルに集中。


●政策の矛盾と課題

  • 現政権(ユン・ソンニョル大統領)は「地方創生」を掲げる一方で、
    **ソウルのメガシティ化(周辺都市の編入)**を推進。

  • 結果:

    • 一極集中がむしろ強化される可能性。

    • 政策の整合性に対する国内批判が拡大。


●今後の課題と改善の方向性

  • 少子化対策の最優先化(雇用・住宅・教育費支援)。

  • セジョン市の都市競争力強化(企業誘致・教育機関設立)。

  • サービス産業の拡大(K-POP・韓流輸出の多国化)。

  • 政治的安定化長期経済戦略の維持