■博士課程とメンタルヘルスの関連

  • 博士課程学生は、一般集団および修士課程修了者よりも精神科治療薬の使用率が高い

  • 入学前は3グループ間に大きな差はないが、博士課程進行後に急増

  • 増加は一時的ではなく持続的で、特に入学後5年目がピーク

  • この傾向は、研究生活そのものがメンタルヘルスに影響している可能性を示唆。

■研究概要

  • 調査対象:2006〜2017年に博士課程へ進学した20,085人

  • 比較群:一般集団 約7,045,134人修士修了者 306,430人

  • 指標:精神科薬の処方履歴(うつ病・不安障害等に関連)。

  • データは長期縦断的に取得し、時系列で比較。

■メンタルヘルスへの影響

  • 博士課程開始後、精神科治療薬の使用率が上昇

  • 5年目には約40%増

  • 増加は他のライフイベント(就職・転居など)の影響では説明困難。

■深刻なライフイベントとの比較

  • 親の死:薬の使用が一時的に28%増加し、2年後に元に戻る

  • 博士課程:影響はより長期的かつ持続的

  • 相対的にみても、博士課程による心理的負荷は長期性が特徴

■博士課程が負荷を与える主要要因

  • 研究成果の不確実性:成功が保証されず、長期的プレッシャーが持続。

  • 経済的不安:収入不安定、将来のキャリア見通しが不透明。

  • 社会的孤立:研究の長時間化により生活バランス崩壊。

  • 研究要求水準の高さ:自己犠牲的努力が常態化。

■国内状況

  • 日本でも大学院生の精神的負担は高いとの報告がある。

  • 長時間研究支援体制の不足が負担要因として指摘。

研究概要

  • オハイオ州立大学が米国本土6万6000超の国勢調査区を解析。

  • 海岸から約50km以内の住民は、平均寿命が1年以上長い傾向。

  • 内陸の川・湖近くの都市住民では、平均寿命が約1年短い傾向。

  • 農村部の川・湖近くでは、逆に寿命が延びる可能性を確認。

  • 研究内容は『Environmental Research』(2025年5月29日)で公開。

海辺居住者の寿命が延びる主因

  • 気候の安定性

    • 猛暑日・極寒日が少なく、気温変動が穏やか。

    • 心血管系リスクの低下に寄与。

  • 大気の清浄性

    • PM2.5や煙害が少なく、呼吸器・心血管系負担が軽減。

  • 身体活動とレクリエーション機会

    • 散歩、ジョギング、釣りなどが容易。

    • ストレス緩和・メンタルヘルス改善に寄与。

  • 社会・物理環境要因

    • 所得水準、医療アクセス、平坦な地形などが健康指標を補強。

内陸都市部の川・湖近くで寿命が短くなる要因

  • 極端な高温の多さ

    • 猛暑日の発生が海沿いの約10倍。

  • 大気汚染の高さ

    • PM2.5濃度が高く、煙害も多い。

    • 心臓病・呼吸器疾患・メンタルヘルスへ影響の可能性。

  • 洪水リスク・地形の影響

    • 排水インフラの不足により、洪水や衛生リスクが増大。

    • 生活ストレスの増加に関連。

農村部の内陸水辺で寿命が延びる理由

  • 自然環境が良好で、空気が清浄

  • 都市のような環境ストレスが少ない

  • 自然環境由来のレクリエーションが健康に寄与する可能性。

研究が示す示唆

  • 水辺の種類と周辺環境条件が寿命に大きく影響。

  • 都市計画ではブルースペースを景観ではなく健康資源として設計する必要。

  • 「海」「内陸水域」「都市」「農村」で、健康への影響が大きく異なる。

研究概要と主要発見

  • 米国デューク大学が市販の4種類の大人のおもちゃを分析。

  • 調査対象すべてから**フタル酸エステル類(ホルモンかく乱物質)**を検出。

  • 子供用玩具では厳しく規制されているが、大人のおもちゃは表示義務・使用制限がほぼ存在しない

分析対象と検出内容

  • 対象:①デュアルバイブ ②アナルビーズ ③アナルバイブ ④マッサージ型バイブレーター。

  • 各製品を3個ずつ購入し成分分析。

  • 全製品からフタル酸エステル類を検出。

  • 一部製品では、子供用玩具の許容量を超える濃度を確認。

フタル酸エステル類の特性と既知の影響

  • ホルモンかく乱物質として知られ、健康影響の可能性が指摘されている。

  • 動物実験では、高濃度で肝臓・腎臓・肺・生殖器の細胞損傷が確認。

  • 今回検出された濃度はそれより低いが、粘膜接触製品である点が問題

表示・規制の不備

  • フタル酸エステル不使用」と表示された製品でも微量混入を確認。

  • 表面に「ギャグギフト」、裏面に「身体に安全」と矛盾した表記の製品も存在。

  • 現在、大人のおもちゃには法的安全基準が存在しない

利用率と公共衛生上の重要性

  • 米国における使用率:異性愛男性50%、異性愛女性50%。

  • LGBTQ層では70〜79%台とさらに高い。

  • 高い普及率を踏まえ、研究者は安全基準の制定が必要と結論。

ドーパミン分泌は2段階で起こる

  • ドーパミンは食事時に**「口に入れた瞬間」「胃に到達したとき」**の2度放出される。

  • 研究はマックスプランク研究所によるPET法を用いた実験。

  • 最初の放出は報酬・知覚関連領域が主に反応。

  • 2度目の放出は、報酬領域に加え高次認知領域も関与する。

欲求が強いほど2度目の反応が弱まる

  • 実験は12名がミルクセーキまたは無味液体を摂取しながらPET測定を実施。

  • 「飲みたい」欲求が高いほど

    • 最初のドーパミン放出量:増加

    • 2度目のドーパミン放出量:減少

  • 2度目の反応が弱いと満足感が得られず過食につながる

過食のメカニズムとの関連

  • 「胃」でのドーパミンが少ないと満足感不足 → 食べ続ける行動が発生しやすい。

  • 人は十分な量のドーパミンが得られるまで摂食行動を継続しやすい。

  • 「強い食欲」ほど胃由来のドーパミンが抑制され、過剰摂取のリスクが高まる。

今後の研究と応用可能性

  • 研究者は、この仮説には追加検証が必要と指摘。

  • メカニズムが解明されれば、過食防止につながる介入方法の開発へ応用可能性。

AI利用と能力の過大評価

  • AIを頻繁に使用する人ほど自分の能力を過大評価する傾向が確認された。

  • フィンランド・アールト大学による研究で判明。

  • 研究は2025年10月27日付『Computers in Human Behavior』に掲載。

  • 実験では約500人が参加し、難易度の高い論理パズルを解答。

  • 参加者の半数は**AIチャットボット(ChatGPT)**の使用が許可された。

  • AI使用群は全体として自己評価が実際の成績を大幅に上回った

AIリテラシーと過大評価の関係

  • AIリテラシーが高いと自己過大評価がさらに強まる傾向を確認。

  • AI利用に慣れている人ほど「自分はうまくできた」と判断しやすい。

認知的オフローディングの影響

  • 多くのAI利用者は1回の質問で得た回答をそのまま受け入れる

  • 追加検証・再質問を行う割合は低い

  • AI回答を“正解”と認識し、自分で考察する過程が省略される。

  • この行動パターンは認知的オフローディングと呼ばれる。

  • 結果として「正しい答えを出せた=自分の実力」と 誤帰属が起きる。

リスク回避のための対策

  • 回答を一度で鵜呑みにしないことが重要。

  • 複数回の質問、自分での再検討が推奨される。

  • 研究者はAI側にも、

    • 回答の確信度の提示

    • 別の可能性の提示
      など、ユーザーに再考を促す機能を持たせる必要性を指摘。

睡眠時間と死亡リスクの関係

  • 7〜8時間の睡眠が最も死亡リスクが低い

  • 7時間未満では死亡リスクが14%増加

  • 9時間以上では死亡リスクが34%増加

  • 男女差:

    • 短時間睡眠のリスクは男性で高い

    • 長時間睡眠のリスクは女性で高い

  • 研究は79研究・210万人以上のデータ解析に基づく

  • 2025年3月12日『GeroScience』掲載

長時間睡眠が示す可能性のある背景要因

  • 長時間睡眠は健康状態の悪化を示す症状である可能性

  • 関連が指摘される要因:

    • うつ病

    • 慢性疼痛

    • 代謝異常

    • 薬の副作用

  • 睡眠の質が低下している場合、睡眠を「長さ」で補おうとする傾向

  • 健康状態の悪化が結果として長時間睡眠を引き起こす可能性

生活習慣の関与

  • 喫煙・肥満などの生活習慣は睡眠の質と関連

  • 長時間睡眠自体ではなく、背景の不健康な習慣がリスクに影響する可能性

例外としてのロングスリーパー

  • 遺伝的ロングスリーパーは問題なし

  • 10時間近い睡眠で通常の生活機能を維持

  • 例:アインシュタインは10時間以上の睡眠で知られる

  • 注意すべきケース:

    • 通常7〜8時間だった人が急に9〜10時間睡眠へ変化した場合

    • 健康異常の可能性があるため医療相談が推奨

アイマスク着用と認知機能の向上

  • 睡眠中の光遮断により翌日の記憶力・注意力が向上

  • 英カーディフ大学による研究結果

  • 認知機能テストでエピソード記憶の符号化と**注意力(PVT)**が改善

  • 『Sleep』(2022年12月15日付)に研究掲載

光環境と睡眠の質の関係

  • 周囲の明るさは睡眠の質を低下させる要因

  • 街灯・電子機器の光が網膜に影響し睡眠を妨害

  • 現代の生活環境では室内外の光害が増加

  • 明暗サイクルが入眠・覚醒リズムと同期

実験概要

  • 対象:18〜35歳の89名

  • 条件:

    • 1週目:アイマスク着用で5日間睡眠 → 認知テスト

    • 2週目:未着用で5日間睡眠 → 同テスト

  • 比較により着用時に認知スコアが上昇

徐波睡眠の増加(脳波測定)

  • 着用時に**徐波睡眠(深いノンレム睡眠)**が増加

  • 徐波睡眠は成長ホルモン分泌脳の回復に重要

  • 徐波睡眠の増加が記憶力・注意力の向上に関与した可能性

睡眠の自己評価との関係

  • 着用・未着用で睡眠の自己評価に差はなし

  • しかし客観的には認知パフォーマンスに差が出る

  • 光遮断の効果は主観的な睡眠感では検出されにくい

研究者の見解

  • アイマスクは安価で即時実行可能な介入

  • 認知パフォーマンス向上への実用的手段として提案

リフレーミングの基本概念

  • 出来事を別の視点で再解釈する心理手法

  • ストレス状況に対して認知的枠組みを変更する介入

  • 感情調整を目的としたコストのかからない方法

所得とリフレーミング効果の関連

  • 研究により低所得者層で効果が高いことが判明

  • 年収35,000ドル(約390万円)未満の層で不安軽減効果が大きい

  • 高所得層では効果が限定的

効果の理由(外的資源へのアクセス差)

  • 低所得層は外的資源にアクセスしづらい

  • 状況を変える手段が少ないため、内的調整(リフレーミング)と相性が良い

  • 研究者による推測として、自分の認知の中で解決の糸口を探す傾向がある

リフレーミングの限界とリスク

  • 問題からの回避につながる可能性

  • 認知的再解釈が長期的な課題解決を阻害するケース

  • 本質的な問題に向き合う行動が遅れるリスク

  • ポジティブ解釈の習慣が格差固定につながる可能性

適切な利用場面

  • 努力で変えられない状況への対処に有効

  • 重要度の低い問題のストレス軽減に適する

  • 利用には、現実へ向き合うべき場面との区別が必要

研究概要

  • コネチカット大学などの研究により、性行為後20分および40分にカップルのオキシトシン濃度正の相関を示すことが確認された。

  • 研究成果はArchives of Sexual Behaviorに掲載。

  • オキシトシンは絆ホルモン/愛情ホルモンとして知られる。

対象と方法

  • 対象:18〜31歳の男女49組(98名)、交際期間は平均16か月

  • 測定環境:各カップルの自宅

  • 手順:唾液サンプルを行為直前・直後・20分後・40分後の4回採取。

  • 測定方法:パッシブドゥルー法による唾液採取。

  • 併記情報:オーガズムの有無、前戯内容、満足度を自己申告。

男女で異なる分泌パターン

  • 女性

    • 行為直前終了40分後にピーク。

    • 直後に一時的低下。

  • 男性

    • 行為中にゆるやかに上昇し、終了40分後にピーク

ホルモン同期(シンクロ)の発見

  • 性行為後20分および40分で、パートナー間のオキシトシン濃度が同調

  • 濃度の高いカップルは双方が高値、低いカップルは双方が低値。

  • 同期は**アフターグロー(余韻)**の時間帯に集中。

オーガズムとの関連性

  • オーガズムの有無は性行為後のオキシトシン濃度に有意差を示さない

  • 従来の「オーガズムがオキシトシンを大きく増やす」という説に対して反証的データとなった。

オキシトシンの基礎情報

  • 産生部位:視床下部 → 放出:下垂体

  • 作用:信頼形成、親密性、母子関係、性的興奮など。

  • 従来研究は主に実験室環境での刺激実験が中心で、日常下のデータは限定的だった。

研究の新規性

  • カップルが日常環境(自宅)で性行為を行った際のホルモン動態を詳細に追跡した初の報告

  • 生物学的同期が実生活でも発生することを示した。

限界点

  • 唾液採取時刻は参加者任意で、20/40分後の時刻精度に揺れがある。

  • 性行為中の具体的行動(会話・抱擁等)は記録されておらず、影響評価が不能。

  • 対象は若い異性愛カップルのみで、他集団への一般化は不明。

今後の研究方向

  • 対象拡大:同性カップル・長期交際・遠距離・子育て世帯など。

  • 他ホルモン(例:コルチゾール)との同時測定。

  • 精密な時間分解能での測定や、ラボ+フィールドの統合研究

友情の基本概念

  • 友情の目的は「近づくこと」ではなく、相手に合った距離感の調整にある。

  • 心理学者マリサ・フランコ博士は、関係性に応じて距離を調整する「low-dose(低用量)な友情」を提唱。

low-dose 友情の特徴

  • 距離をあえて広げつつ、小さな接点で関係を維持するスタイル。

  • 例:会う頻度を月1にする旅行は避けて食事だけを共有するグループで会うなど。

  • 博士自身も「旅行スタイルが合わない友人とは旅行をしない」と述べ、関係維持のための距離調整が重要とされる。

複数の友人に役割を分散する効果(Northwestern University, 2014)

  • 感情的ニーズを1人に集中させないことが、心の健康に有益とされる。

  • 例:「怒りを共有する友人」「悲しみを分かち合う友人」「笑い合う友人」など目的別ネットワークが推奨される。

  • オールインワン型の友情は負担を生みやすいと報告。

友情の変化と維持

  • フランコ博士は、友人間には異なるタイムラインが存在する可能性を指摘。

  • 連絡頻度の低下は、関係の終了を意味しない場合がある。

  • 調査データでは、人は平均して7年ごとに友人の半数を失うとされ、これは自然な変化の一部。

  • ライフステージ・環境の変化により、距離感が変わることは一般的な現象

  • 変化は「終わり」ではなく、友情のフェーズ移行として理解できる。

結論

  • 友情を長続きさせる鍵は、個人差や状況に応じた距離感の調整

  • 必要に応じて距離を広げたり、頻度を緩めたりすることが、健全な関係維持に有効

  • 友情は「常に一緒にいること」ではなく、離れていてもつながりを保てる関係性が重要。