ある政治学者が、政治を理解するためには人間の持つあらゆる感情や行動が表わされている「ギリシャ悲劇」と「シェークスピアの作品」などの古典を熟読することを勧めていた。

古典には時代を超越した「永遠の真理」があるので、私も電車の中や就寝前を利用して繰り返し読み返すことを趣味にしています。

今日はギリシャ悲劇の『アンティゴネー』について書き留めておきます。

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作者は古代ギリシャの三大悲劇作家の一人、ソフォクレス。
代表作の『オイディプス王』は、のちに精神分析学者フロイトの提唱した「エディップス・コンプレックス」の語源となった作品であり、『アンティゴネー』はオイディプス王の娘の話。

あらすじは、
オイディプス王の死後、アンティゴネーの兄が王位に就くが弟が攻め込み、兄弟は刺し違えて共に死ぬ。これを受けて彼らの叔父が王位に就き、国を守った兄は丁重に埋葬する一方、国家への反逆者となった弟を見せしめの為に埋葬を禁止し野ざらしにする。
王である叔父は、国家の秩序を守る為に反逆者を見せしめにする必要があると考えた。
しかし、二人の妹であるアンティゴネーは「肉親である兄弟を丁重に扱うこと(=自然の情)は国家の法とは無関係に尊重されるべきである」との信念で国法を破り、野ざらしにされた弟の死体を埋葬する。(神の法=正義は、人間の作った法によっては覆らないという確信)
王は反抗するアンティゴネーの処刑を決めるが、その前にアンティゴネーは自害する。
これを見たアンティゴネーの許嫁(王子)が後を追って自害する。それをしった王女も悲しみのため命を絶つ。
王は、妻も息子も、甥も姪も、肉親すべてを失い、法律を越えたものの価値に気づき改心する。
…という悲しい物語。

法による罰と愛による赦し。
秩序を維持する政治観も、身内との愛を重視する政治観も共に悲劇へと帰着する結末。
しかし、この悲劇を通じて王は人間を超えた価値や掟の存在を認めるに至る。

この思想は「ただ生きる」のではなく「より良く生きること」を政治課題とする古代的政治像がソクラテス、プラトン、アリストテレスへと継承されていった。

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