ミュージカル『薄桜鬼 真改』土方歳三篇

全17公演、ご観劇いただいたすべての皆様ありがとうございました。

斎藤篇、山南篇に続いて3度目のこの季節でしたが、

今回の「土方歳三篇」は、沖田総司にとっても特別な物語だったように思います。

僕自身も、

土方篇として、始まる前からその間柄を尊重した特別なものにしたいと思っていたので、

もう一度沖田総司と向き合いながら、これまでと地続きで在るべきところは大切にしつつ、

万華鏡のように、覗く角度が変われば色や模様が変わるこの作品の属性も大切にしていきたいと、そんな想いで臨ませていただきました。

終わった今、

これまでの沖田総司にとっての“あの人”は、紛れもない唯一無二でしたが、

今回照らされた光によって、その深層にあったもうひとつの影が色濃く表出し、

もうひとりの“あの人”への想いを感じ取ることが出来て、その想いと出逢えて、心から嬉しく思っています。


また、

これまでの2作品同様刀を握りしめながらの最期ではありましたが、そのどれもがそれぞれに想い浮かべる存在が違っていて、

心躍った一くんとの手合わせを想い、その続きを望んで眠りについた斎藤篇、

全てである近藤さんの生を願い、褒めてくれるか黒猫に問いかけ息絶えた山南篇、

そして今回は、

土方さんと、新選組副長土方歳三への、沖田総司なりの、“託す”剣の最期でした。

…この最期のシーンについては、様々な言葉や想いが特にありますが、

沖田総司役として彼のことを想うと、あまり語ってあげたくないところもあって、言葉にはせず此処で留めておこうと思うのですが、

ただ1つ言えるのは、

土方さんとの関係性を想うと、与えられた、限られた台詞に反して込めたい情報量が多くて、それは役者のエゴ的な側面も大いにありますが、

沖田総司にとって、土方さんへの想いの形をひとつ、見つけることが出来たのではないかと今は思っています。

そして結果として、やっぱりあの言葉数が、ふたりにとっては最適だったんだとも思っています。




長く進む道のりでしか見ることが出来ない景色や掬うことが出来ない想いがこの作品には沢山あって、

その中で生きる沖田総司と向き合いながら、改めて感じるその短命さと宿命の中に新たな弱さも強さも知って、

あなたに少しでも近づけるように、何かを掴み続けたいとお墓に手を合わせ迎える公演期間が、

沖田総司として生きられるこの時間が、

今年もまた、何よりもの幸せと、かけがえのない思い出を与えてくれました。













与えられたものが人よりほんの少し短くて、瞬く間にその時を迎えてしまうけれど、

でもだからこそこの身を賭して剣と成って、

濃縮された命を燃やして駆け抜けたのだと信じています。










井俣さんの近藤さんの隣で、ひでくんの土方さんの隣で、

土方篇の沖田総司として生き抜けて、心から幸せでした。


全17公演、客席で、画面の前で、様々な想いで公演を見届けて下さったすべての皆様へ、

心より感謝申し上げます。


皆様にとって、

この長くて幸せな夢が、ずっと続きますように。






新選組 一番組組長 沖田総司役

北村健人