ミュージカル「薄桜鬼 真改」斎藤一篇

全16公演が終わり、京都の地で、大千穐楽を迎えることが出来ました。

劇場で、配信で、ご覧いただいた全ての皆様、ありがとうございました。

10周年という記念すべき公演において、こうして初日から千穐楽まで、約束された時間を無事に走り切れたことに、心からの幸せを感じると共に、皆様のご協力、ご声援に感謝申し上げます。

ありがとうございました。


千穐楽から2日が経ち、時折色々なことを思い出したり、沖田総司に想いを馳せたりしていました。

遡ること約7年前に、僕はこのミュージカル「薄桜鬼」という作品と出逢ったのですが、

役者としては勿論それ以前に、1人の男として「なんて格好いい作品なのだろう」と強い憧れを抱いたことを、六本木ブルーシアターのあの景色と共に今も覚えています。

同時に、"いつか必ず"と、本当に・・・ずっと"日本一出たい作品"でした。そして叶うことなら「沖田総司」役でと。

今回念願叶ってこうして出演させていただくことになったのですが、初日の幕が上がる瞬間の興奮、1公演1公演の特別感、大千穐楽の高揚、形容すればキリがありませんが、とにかくそのどれもがかけがえなく、忘れられない感触が今も鮮明にあります。

外から観る薄ミュは素晴らしく格好良くて、
中に居れる薄ミュは途轍もなく愛おしかったです。

この作品の持つ力を肌で体感し、10年続く所以を知りました。

そして、役者を始めて3年足らずの自分の目では見ることが出来なかったこの作品の本質や魅力を改めて見て知って、

だからこんなにもあの時憧れたんだって、そう思う瞬間が多々ありました。

改めて、こんなにも素敵な作品に出逢えたことを誇りに思います。

全16公演、そのどれもがふたつとない特別な時間でした。

素敵な景色を、皆様の大切な作品を、本当にありがとうございました。







此処からは、沖田総司についての心の内を書いてみようと思います。

と言ってもその全てを語るというよりは、僕は今回2つだけ特筆したいことがありまして。

1つ目は、黒猫の歌。

実は(これも)7年前になるのですが、別作品で沖田総司役をやらせていただく機会があって、その際にも本番前日に専称寺にご挨拶に行ったのですが、その日は夜で、手を合わせて帰ろうとした時でした。

茂みから1匹の黒猫が出てきて、(当時から逸話は知っていたので)驚き足を止めたら目があって・・・暫くしてその猫は飛び跳ねて消えて行ったのでした。

嬉しい奇跡に興奮しながらも、その翌日から高熱が出て千穐楽まで引かなくて。役者としてはその苦しみさえも幸せだと思っていたのですが、

そんな不思議な経験を、沖田総司の今回の最期の曲にあたり思い出していました。


「ねえ黒猫、命を貸してー」


雪風華から始まって、池田屋まで。

総司が駆け抜けられた時間は物語の中で相対的に見れば短かったかもしれないけれど、最後の最期まで、彼は彼の信じる誇りを貫こうと刀を握り続けた。

命の短さよりも、生きた証として、ひとつひとつが、大切な、大切な出来事でした。

逆説的に言えば、命の煌めきが一瞬だったからこそ、そこに全てを懸けることが出来たのかもしれません。




そして2つ目。

それは近藤さん、井俣さんの存在です。

今も僕の携帯に残っているのですが、数年前のある時に井俣さんにご挨拶させていただける機会があって、そこで僕は、「いつか絶対に薄ミュに出たいと思っていて、そこで井俣さんの近藤さんとご一緒したいと思っています!」と伝えさせていただいことがありました。

その数年後に出演が決まって、僕は直ぐに井俣さんにメッセージを送りました。

そうしたら井俣さんは、「人が夢を叶える瞬間を見せてもらえて感無量。何だか凄く感動しています。本当におめでとう」と言って下さいました。(良く分からないウーパールーパーのスタンプと一緒に)

今回の出演において、誰よりも喜んでくれたのが井俣さんでした。

沖田総司が近藤さんに対して唯一無二の強い想いがあるのと同じように、稽古が始まる前から、僕も井俣さんに対して強い想いと大きな感謝がありました。

その大きな背中と、愛くるしい笑顔が本当に大好きです。

正直、

今逢えなくてちょっと寂しいですもん。

・・・ちょっとだけ。






沖田総司についてはまたゆっくり次は配信でお話ししようとは思いますが、

沖田総司として駆け抜けられた時間はどの瞬間を切り取ってもかけがえのないもので、

この先何度季節が変わっても、唯一変わらないものとしてこの先も僕の心の中に在り続けます。

・・・出逢って7年も変わらなかったのですから、変わるはずがありません。

沖田総司を通して出逢えた仲間や、観れた景色、過ごした時間、それらは余韻ともまた違う不思議な感覚としてこの2日間ずっと心の真ん中にあって、

秋にまた想いを馳せることも出来て・・・とにかく沢山の素敵なものを与えてくれました。

ただ叶うことなら、

沖田総司を僕の手で幸せにしてあげたいと思う。














長くなりましたが、ミュージカル「薄桜鬼 真改」斎藤一篇に関わる全ての方へ、

誠に、ありがとうございました。




まだ影にはならないよ。

また、秋に、飛び跳ねるから。




沖田総司役 北村健人