【SONAR】初心者入門
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ミックスダウンした音が小さい

「SONAR初心者入門」で非常に多い質問が「音が出ない」と「音が小さい」です。

「音が出ない」はマニュアルやサポートで大抵の場合解決できますが、「音が小さい」のはソフトやハード的な問題ではなく知識とテクニックの問題なのでサポートセンターに電話しても解決しません。


では「音が小さい」の原因は何でしょう?

波形を見ると【0dB】ギリギリまでレベルが上がっているのに聞こえてくる音は小さい。これは人間の耳が瞬間的な音を認識しにくいことが原因です。特にドラムやパーカッションのような打楽器はアタックだけが著しく強いために【0dB】ギリギリまでレベルを上げても物足りない音になり勝ちです。逆にストリングスやシンセのリード音など長く伸びる音色は【0dB】までレベル上げるとうるさいくらいです。


これを解決するのにコンプレッサーを使います。アタックの強い楽器のアタックを調整して適切な音量感を生み出してくれます。有り難いことにSONARにはSonitus Compressorという良質なコンプレッサーがバンドルされています。使い方について説明すると終わらなくなりそうなので詳しくはまた別な機会に解説したいと思います。ここでは「音が小さいのはコンプレッサーで解決できる」くらいのイメージを持ってもらえればいいと思います。


また各楽器についてはコンプレッサーが活躍しますが、マスターチャンネルにコンプレッサーを挿すと音がグニャングニャンに揺れてしまいます。この時はマキシマイザーを活用するのが有効です。ただ正直ミックスの段階でマスターチャンネルにマキシマイザーを挿して音圧を初めから上げてしまうのはちょっと乱暴です。音量は大きくなりますが、音の分離が悪く、バランスをとりづらくなってしまうので、余計なアタック音を制御してピーク【0dB】を超えないようにリミッターとして活用するのが無難だと思います。


それと音が小さく聴こえるのにはもうひとつの原因が考えられます。

それは余分な低音が出過ぎている場合です。特に小型のモニタースピーカーを使用されている場合は低音のモニターは出来ていない状態なので60Hz以下は殆ど聴こえないのではないでしょうか。下手すればもっと聴こえていないかもしれません。もしその状態で「ベースやキックは低音楽器だからEQで80Hzあたりをガッツリ上げた方がいい」という先入観だけで操作しても無駄にレベルを上げてしまうだけです。実は聴こえていないだけでしっかり低音はなっているかもしれませんし、むしろ低音を少し抑えたほうが良い場合もあります。


このように「音が小さい」には色々原因があります。

しかし再生機器のように「音が小さければ音量を上げればいい」というのはミックスにおいては大きな間違いです。必要なのはむしろ引き算です。それは何故かというと【0dB】という上限が決まっているからです。つまりデカイ音を抑えて小さい音を聴こえるようにしてあげることが大切なのです。ドラムの腹の音が聴こえないなら余分に飛び出しているアタック音をコンプレッサーやリミッターで削って腹の音を持ち上げてあげたり、ベースやキックの低音を目立たせたいなら他の楽器の低音をハイパスフィルターでカットしてあげればかなりスッキリした音になるはずです。この時やり過ぎもまたNGです。アタックを削りすぎると勢いがなくなりますし、今度は音が埋もれて聴こえてきます。また低音をあまり削り過ぎるとその楽器の存在感やパワーが薄れていきますので注意して下さい。


それともうひとつ知っていただきたいことがあります。

ミックスダウンした音が小さいのは当たり前です。むしろそれが正しいマスター音源の姿です。

CDにする場合マスタリングという工程を踏みます。そこで適切なレベル調整やEQ処理が施されます。これは全曲同じ環境で、同じ日に収録されたもので、同じ楽器で、似たような演奏の似たような曲を1枚のCDにまとめるなら何ら問題ありませんが、1曲1曲キャラクターが異なってくることの方が普通です。それを1枚のCDにまとめる場合、1枚通して各曲の音量感や音質などを整えてあげる必要があります。それがマスタリングの作業です。この時ガッツリ音量が上げられた状態のミックスマスターを渡されても調整は難しく、補正不可能なことも出てきてしまいます。「CDと同じ音量にしたい」というのはミックスの段階で求めてはいけません

よく耳にするMIDIの誤解

意外にもMIDI(ミディ)は正しく認識されていることが少ないようです。


まず、MIDIデータはオーディオデータではありません。


語弊があるかもしれませんが分かりやすく言うと、MIDIデータとはただの演奏指示データです。例えば「ピアノの音色でドの音を1拍分鳴らしなさい」というような指示がデータの中に詰まっているだけで、MIDIデータ単体で再生してもその指示を受ける音源がないと音は鳴らないということです。


でも逆を言えば同じ演奏を別な楽器に置き換えて演奏させることも出来ますし、また演奏そのものを編集することも簡単に出来てしまいます。そして何よりMIDIデータはオーディオ・データと違ってデータサイズはとても小さいです。但しMIDI演奏が軽いという意味ではありません。演奏させる音源がソフトウェア音源であればオーディオデータを再生させるよりPCにかかる負荷は高くなることでしょう。


ではMIDIデータを受けて演奏してくれる音源にはどんなものがあるのでしょうか? 一昔前はRoland SC-88のような外付けのMIDI音源が主流でした。しかし最近はPCの進化と共にソフトウェア音源が主流となりつつあります。もちろんMIDIに対応しているキーボードやサンプラーなどの電子楽器をそのまま音源として使用することも出来ます。


SONARにもたくさんのソフトシンセ/サンプラーがバンドルされています。代表的なものはTTS-1というソフトシンセです。これはマルチティンバーと呼ばれる同時に複数の音色を鳴らせるとても便利な音源です。まずはTTS-1を使ってMIDIの概念や操作に慣れていくと良いでしょう。

揃えたい周辺機器

SONARをPCにインストールすれば最低限の制作環境は出来ます。でも音質的なこと操作的なことなどそれだけでは不十分なことがたくさんあります。いくつか必要と思われる周辺機器をピックアップします。


■オーディオ・インターフェイス

DAWを始めたいと思ったら必ず予算の中にオーディオ・インターフェイスは入れてください。僕の主観かもしれませんが、PCスペックやDAWソフトよりも重要なのがオーディオ・インターフェイスだと思います。どんなに高性能なPCもどんなに有能なソフトウェアも「悪い音を良い音にする」ことは出来ません。またどんなに良い素材を使ってもどんなに良いスピーカーで鳴らしても音の出口が悪ければ良い音で鳴るわけがありません。まずPCにオンボードでついているようなサウンドカードでは役不足です。ノイズ、レイテンシー、接続端子、どれをとっても「これは使える!」というものが何一つありません。オーディオ・インターフェイスは何よりも一番重要であり、何よりも一番必要だと認識して欲しいです


■MIDIキーボード

鍵盤を弾ける人はもちろんあった方がいいと思いますが、弾けない人もあった方が便利です。ピアノロール入力でマウス操作のみで完結することももちろん出来ますが、下手でもキーボードで弾いてクウォンタイズ(タイミングを自動補正する機能)をかけた方が圧倒的に作業が早いはずです。それと何よりイメージした音をとりあえず鳴らすときに、マウスのカーソルを合わせてクリックしたり、いちいち打ち込んで再生するよりも、キーボードで実際演奏した方がイメージを逃さないと思います。はじめは安くて小さいものでもいいと思います。それでも大きな力となってくれるでしょう。

この時PCとMIDIキーボードの接続にはMIDIインターフェイスが必要となります。単体でMIDIインターフェイスを用意されるより、MIDIインターフェイス付きのオーディオ・インターフェイスを選ばれれば省スペースですし、何より無駄なコストがかからないと思います。


■モニタースピーカー

もちろんオーディオ・インターフェイスのOUT端子からミニコンポに繋ぐのも悪いことではありません。でも制作環境は出来るだけフラットな音で聴ける方がベストです。またPC用の小さいスピーカーではレンジが狭く、正確なモニターを出来ているとは言いがたいです。余裕があれば初心者であってもモニター用のアクティブ・スピーカー(アンプ内臓)はあった方がいいと思います。それはフラットな音を知り、それに慣れておく必要があるからです

逆にヘッドホンはどんなに高価なものであっても補助的には使えますが、音のバランスが分かりづらく、長時間使用は耳が疲れるのであまりおすすめしません。基本的にはスピーカーでのモニターをおすすめします。


■アナログミキサー

「初心者なんだからそんなのいらないよ」と言われそうですが、小型でもいいからそばにミキサーがあるととても便利です。確かにオーディオ・インターフェイスもミキサー機能を備えています。でも必ずレイテンシーという音処理の遅れが付きものです。つまり録音している自分の演奏だけが遅れて聞こえてくるので、気持ち悪く、正確な演奏がしづらい状態になってしまいます。ダイレクトモニタリング機能を活用すれば済む話かもしれませんが、オーディオ・インターフェイス内のミキサーは音の流れが分かりづらく、操作もマウスに頼るしかないのでとても面倒です。そこでミキサーがあれば直感的な操作はもちろん、レイテンシーを気にする必要もなく、モニターバランスも自分が演奏しやすい状態に簡単に整えることが出来ます。必ず必要というものではありませんが、一度使うとマストアイテムとなるでしょう。


まだまだ便利な周辺機器はMIDI音源やMIDIコントローラーなど他にもたくさんあります。欲を言えばキリがありませんが、まず何よりオーディオ・インターフェイスは揃えたいところです。