そこはかとなく

そこはかとなく

あれやこれやの断想・・・・・・

“ジェリコの戦い” &“マック・ザ・ナイフ”

 コールマン・ホーキンスの「ジェリコの戦い」(Verve)
 1962年のレコーディング
 古いスタイルでの演奏
 スタイル云々はあるが、“ジェリコの戦い”は、迫力があって凄い
 コールマン・ホーキンスの豪放さ
 戦う“男”を感じさせる
 そして
 リズム陣が、聞く人の体を動かせる
 ベース、ドラムが、足下から響く
 メイジャー・ホリーのベース
 “ジェリコの戦い”でのソロが際立つ
 エディ・ロックのドラム
 ピアノは、トミー・フラナガンだ
 

マティスの“赤いアトリエ” 倉橋由美子の「幻想絵画館」

 アンリ・マティスの絵“赤いアトリエ”を前置きとした一話である。
 倉橋由美子の「幻想絵画館(平成3年 / 文藝春秋社)」の中のひとつ。
 少年慧君は、地下鉄に乗って東京の下町へ出かける。
 そこで、木造平屋の洋館の写真を撮る。
 そして、その洋館に住む美少女に出会う。
 そこには、以前、画家が使っていたという“赤いアトリエ”がある。
 心臓に病をもつ少女は、“死期の近づいた高齢の尼僧”の風情。
 少女は、絵のモデルになっていいと言う。
 二人は唇を重ねた。
 少女は、“お忍びでお妾さんのところにきた旦那さまの気分”がしなかと言う。
 立体感を感じさせない“赤いアトリエ”で、少女は裸になる。
 夢幻の世界でのひとときのような雰囲気をただよわす話である。
 TASCCHENの画集「マティス」に“赤いアトリエ”の絵があった。
 色合いは、「幻想絵画館」の方がよかった。
 

“ソウル・サンバ” アイク・ケベックのテナーがグー

 昨夜、就寝前のひととき
 アイク・ケベックの「ソウル・サンバ」を聞いた
 わたしの気に入りの一枚
 ケベックのくぐもっようなテナー・サックスの音がいい
 サックスがいいのは
 奏するひとの個性や思いが
 あらわに出るところだ
 くぐもった音も時にはいいのだ
 “LOIE”、“GOIN' HOME”
 一緒に演っているケニー・バレルも
 いつもながらブルージーでいい
 これまで結構幅広にモダンジャズを聞いて
 その時の気分で
 それなりに選曲できるようななったのはよかった
 

“そのうちダンテ” きれい事は遠ざけて

 キリスト教関係の本で、これまでに読み、おもしろくて、影響も受けたかなと感じ、記憶に残っていて、いつでも取り出しやすくしている本が幾らかある。
 他にもありそうだが、以下、とりあえず列挙してみた。
 ・絵画で読む聖書 / 中丸明著 / 1997 / 新潮社
 ・マデダラのマリア / 岡田温司著 / 2005 / 中公新書
 ・バベルの謎 / 長谷川三千子 / 2007 / 中公文庫
 ・エクスタシーの神学 / 菊池章太 / 2014 / ちくま新書
 ・ユダとは誰か / 荒井献著 / 2015 / 講談社学術文庫
 ・〈16世紀〉痴愚神礼賛 / エラスムス / 沓掛良彦訳 / 2014 / 中公文庫
 ・〈17世紀〉失楽園〈上・下〉 / ミルトン / 平井正穂訳 / 1981 / 岩波文庫
 「痴愚神礼賛」と「失楽園」は、古典になる。
 気にしている古典の歴史的大傑作にダンテの「神曲」がある。
 漫画でなら、“読破”したことあるんだけど。
 いつか、きちっと読みたいものと思っている。
 

“フィンガー・ポッピン” THE HORACE SILVER QUINTET

 1959年の音
 日本では60年安保の大騒ぎ
 その直前なんだと思う
 俺は少年
 俺は金沢
 ニューヨークではこんなジャズ
 ジャズらしいジャズ
 フロントのブルー・ミッチェルが吹くトランペット
 ジュニア・クックのテナーサックスが走り出す
 “フィンガー・ポッピン”
 “ジューシー・ルーシー”
 “ルーシー”って女のこの名前
 そのこは“ジューシー”なの
 ホレス・シルヴァー「フィンガー・ポッピン」
 いつものブルーノートからの一枚
 FINGER POPPIN' WITH THE HORACE SILVER QUINTET / 1959.2.1 / BLUE NOTE 4008

 

 

 

 

 

“裸女たちの死せし世界” 倉橋由美子の「幻想絵画館」

 ポール・デルヴォーの絵“町のあけぼの”を前置きにしている。
 倉橋由美子の「幻想絵画館(平成3年 / 文藝春秋社)」の中一話である。
 少年慧君は、夢の中に現れた少女ととある町へ出かける。
 町に着いたところで、少女は消えていく。
 少年の見た町には、古代ギリシアの神殿のような建物があった。
 通りを裸の女たちが歩いていた。
     女たちは、売春婦、“母”、女神・・・・。
     そこは、虚無、死の世界・・・・。
 少年は、自分を観察している者がいることを感じた。
 そんな夢をみたのだった。
       ◇
 倉橋由美子の作品に出てくる慧という名も少年。
 2022年の「よもつひらさか往還」、2008年の「酔郷譚」にも出てくる。
 他にもあるとは思うが、気づいたのは、こんなもの。
       ◇
 ポール・デルヴォーの「町のあけぼの(夜明け)」が載っている画集を開いた。
  「ポール・デルヴォー / マルク・ロンボー著 / 高橋啓訳 / 1991年発行 / 美術出版社」
 「幻想絵画館」とは、絵の色合いがおおいに異なっていた。
 2012年に開催された「ポール・デルヴォー展・夢をめぐる旅」のために創られた画集がある。
 東京では、府中美術館で開かれた。
 「町のあけぼの(夜明け)」は収められていない。


 

“ジャズ・アドバンス” セシル・テイラーのデビュー・アルバム

 セシル・テイラーの「ジャズ・アドバンス」
 1955年に録音された彼のデビュー・アルバム
 レーベルは、《トランジション》だった
 それで幻の名盤とも言われたりもした
 セシル・テイラーのピアノ
 スティーヴ・レイシーのソプラノ・サックス
 その音は、ぶつぶつに切られた蛇
 それを目の前に投げ出されたみたいだ
 だけど、ちゃんと蛇の形をしている
 西脇順三郎の「旅人かへらず」みたいだ
 わざとらしいと感じる人がいるかも
 でもナチュラルです
 わざとらしさはありません
 妙に求道者ぶったところもありません
 モーツァルトを聞くような心地よさはありません
 だけど屈託のないのは心地いいものです
      ◇
 西脇順三郎の詩集「旅人かへらず」の136
  名の知れぬ幻像に
  野菊をかざる
      ◇
 眼鏡があわなくなって
 六月の夕暮れ
 倒れそうな栗の木がよく見えぬ
 おまけに風邪が抜けきれぬ

 

“葬送行進曲” 戦士たちの晴れやかな昇天

 ベルリオーズの「葬送と勝利の交響曲」は、フランスの7月革命10周年を記念して、1840年に作られ、ルイ・フイリップ国王に献呈されている。
 7月革命で亡くなった人たちへの追悼である。
 時代は動く。
 フランスでは、1848年に2月革命、第2共和政、ルイ・ナポレオンが大統領に。
 1852年には、ルイ・ナポレオンが皇帝へ、第2帝政。
 1845年には、マルクス、エンゲルスが「ドイツ・イデオロギー」を書いている。
 次のディスクで聞く。
 ヘクトール・ベルリオーズ / 葬送と勝利の交響曲+1 / LONDON
 シャルル・デュトワ指揮 / モントリオール交響楽団・合唱団

 〈葬送と勝利の交響曲 3楽章〉
 1.葬送行進曲
 2.追悼の辞
 3.昇天
 晴れやかな昇天である。
 明るく青く澄んだ空へ戦士たちの霊が胸を張って昇っていくかのようだ。
 第3楽章で、合唱が入る。
 

“カルメン・ファンタジー” パブロ・デ・サラサーテ op.25

 サラサーテの「カルメン・ファンタジー」は、ビゼーのオペラ「カルメン」に出てくるメロディーをもとにして作られている。
 5楽章でなり、そのもとは、次の通り。
 1.イントロダクション、アレグロ・モデラート:序奏、アラゴネーズ(第4幕前奏曲)
 2.モデラート:ハバネラ(第1幕)
 3.レント・アサイ:カルメンの鼻歌(第1幕)
 4.アレグロ・モデラート:セギリディア(第1幕)
 5.モデラート:ジプシーの歌(第2幕)
 ムターのヴァイオリン、ウィーン・フィルハーモニーで聞く
 「カルメン」のメロディーは、基本的に明るい性格から発しているものと改めて感じた。
 ゲルマン的な重さや暗さはないと。
 

“仮面たちの乱痴気騒ぎ” 倉橋由美子の「幻想絵画館」

 倉橋由美子の「幻想絵画館(平成3年 / 文藝春秋社)」は、一定のコンセプトによる20ばかりのショート・ストーリーで成っているが、そのなかの一つに“仮面たちに囲まれた自画像”がある。
 ベルギーのジェームズ・アンソール(!860-1949)にによる絵“仮面たちに囲まれた自画像”にまつわる思いを話にしたというか、倉橋由美子の思いをその絵を使って話にしたかと言う一作である。
 アンソワールは、仮面や骸骨をよく描き、その裏に潜む人間の心を顕わにしたかったのではなかろうかと言われている。
 ショート・ストーリーには、ヘッド・ハンター、つまり生首集めの事件のことが出てくる。
 それが、仮面につながる。
 その話の中の断片になるが、次のような文がある。
 「・・・生きた人間はみなそれぞれの仮面をかぶつてゐる・・・」
 「・・・生きている人間の顔はみな仮面で、それを剥がすと本当の顔が出てくる・・・・」
 「・・・仮面の首を集めて、特殊な処理をほどこして乾燥して、仮面を自然に脱落させて、本来のその人の顔にする・・・・」
 倉橋由美子の作品には、いつからか「慧」とい少年が登場するようになる。
 この「幻想絵画館」では、その慧君と美少女とのやりとり・会話がベースとなっている。
 アンソールについては、本棚にTASCHENの画集があった。
 仮面の洪水で、気味悪くはあるが、なんだかユーモラスのところもある。
 黒い悪魔か天使みたいな骸骨が大きな鎌を振るって、人を追い立てたりしている。
 エルサレム入城の驢馬に乗ったイエス・キリストの絵もある。周りの人間たちの顔は“仮面”。
 画集を開いたら、絵画展のチラシがはさまっていた。
 2012年の秋に、東京・新宿の損保ジャパン東郷青児美術館で、「アントワープ王立美術館所蔵 ジェームズ・アンソール 写実と幻想の系譜」なる絵画展があって、そのチラシだった。すっかり忘れていたが、チケットの切れ端もあった。