パラノイア正則

パラノイア正則

失われた過去の記憶をたぐりよせます

Amebaでブログを始めよう!

駅前で友人とサシ飲みをしたら珍しく盛り上がってしまい4、5時間飲んだ。7、8杯は飲んだだろうか。普通だったら吐いているはずなのにボトルで頼んで薄めに作っていたからか心地よい酩酊状態になった。夜の2時前だけどどこも痛くないし、まだまだ元気。帰りたくなかった。あれだけ元気だった友達が急に眠いと言って帰ったので微妙な寂しさを打ち消す為にも一人で駅前を散策した。あわよくばバーやら居酒屋やらに潜入してやろうと思った。20歳を過ぎてから地元で一人飲みなど殆どしていない。それくらいレアな気分だった。

 

駅から3分くらい歩いたところに地元の人でも知らない横丁がある。とにかく建物がボロくて低い。三角地帯や大井町のスナック通りよりもじめじめしていて如何わしい感じ。もしかすると5、6軒しかないのかもしれない。一番奥に男女共用のトイレがある。珍しく土方のオッサンとか適当な人と喋って安酒を浴びて疲れ果てたい気持ちになったから行くことにした。昔一度友達と行った店の前を通るとやかましい田舎風ギャルの声が聞こえた。カラオケもないし会話に混ざれるかもと思い、既に酒も大分入っているから羞恥心もなくなって迷わずドアを開けた。

 

本当にうるさかった。10年前は田舎や郊外によくいたギャルとヤンキーとのあいの子みたいな見た目、鼻にかけた独特の声。多分年下なんだろうけどスタイルが古くて何歳なのか分からない。懐かしくて心が躍った。開口一番「この店ボッチばっかくんな!笑」何かの洗礼を受けた。でも彼女は隣の店に用があるから一旦出ると言ってすぐいなくなってしまった。

 

ギャルが消え性欲の強そうなお兄さんと自分と店員の3人になった。色々話したけど特筆することは特にない。2児の父親で仕事に対する野心と子供に対する愛情を、自分がカッコいいと思うやり方で発展させていきたいとかそんな感じの。話に合せたり、たまに褒めたり、それってどういうことですかなどとわざとらしいことを言ったり、賢く思われそうな言葉選びを用いて、相手の稚拙なエゴイズムを心の底では見下す偉そうな自分の心と、そもそもそのような意識の源泉にある虚栄心とを咀嚼する。お兄さん自体は社交的で悪い人じゃなかった。ただ俺はああいう雄々しい人は苦手だ。職場の上司だったら最悪だと思う。

 

1時間くらい話した。お兄さんが帰った頃にはその店でも3杯飲んでいて、何で今日に限ってこんなに飲めるんだと思った。その後は店の人と地元の元同級生らとの繋がりについて話した。というよりその頃には酔いが深くなっていて自分が話したいトピックに粗雑ながら誘導したという感じ。

 

30分くらいしたらガールズバー上がりのギャル3人が来た。感動。白に近い金髪2人もいる。1人は日サロに行っている。本流のギャルと同じ空間にいるというのは数年ぶりかもしれない。会話には参加できそうもない。というのも3人の世界があった。死にかけの老人から愛人契約を結ばないかと言われたとか、あとは大金とうざい客の話。マスターも常連のギャルに夢中。もう充分話したし放っておかれても問題なかった。但し普通なら帰っていた。帰れってことでもあるような気もする。でも酔いが凄くて、何と言うかもう意地だった。何もすることがないのに粘っていた。5杯目を頼んだら大柄な男の人が来た。店が満席になった。

 

20分くらいしたら出た。目が回っている割には吐き気は無かった。終盤押し黙っていた自分に対して悔しくなって時刻はもう4時を過ぎていたのに帰りたくなかった。それに寒くて面倒くさかった。歩いたら30分くらいかかるし。

 

何かもうあれだ…。セックスしかないなと思った。7000円で出来るところへ行こう。朝だけどまだやっているかしら。年に一度は泥酔してああいうところへ行って散財や行為に後悔したり性病に怯えたりするイベントが必要だと思った。でも店はやっていなかった。仕方ないからセックスは諦めて全身マッサージが出来るところを探した。腰は相変わらず痛いし肩も最近凝り始めた。勃起しながら健康に良い施しを受ける朝方も悪くないと思った。とにかく金のことを抜きにすれば今日は果てたかった。

 

高校3年生くらいだろうか。俺にもこの、郊外の萎びた飲み屋から小汚い違法風俗店への道程が見えるようになった。目を閉じ耳を澄ますと数多の可哀想な男が、その何倍も可哀想な女へ向かって列をなしていた。今ではそういう古風なしょうもない男の生活をたまにはなぞりたいと思う郊外の、つまりそれの一員になった。その先には何もないのは分かっているけれど、性欲そのもの以上にそうした状態への憧憬が、稀に噴泉のように溢れ出す。そうなるともうどうしようもないのだ。