目次
1. 視覚障害者の現状
1.1 統計とデータ
1.1.1 視覚障害者の人口と割合
1.1.2 白書や調査報告
1.2 主な障害の種類
1.2.1 白内障
1.2.2 緑内障
1.2.3 網膜剥離
2. 社会参加と差別
2.1 視覚障害者の社会参加
2.1.1 日常生活での参加
2.1.2 労働市場での状況
2.2 差別とその問題
2.2.1 差別の具体例
2.2.2 差別の克服方法
3. 支援制度と法律
3.1 現行の支援制度
3.1.1 福祉制度
3.1.2 教育とリハビリテーション
3.2 法的枠組み
3.2.1 障害者基本法
3.2.2 障害者差別解消法

1. 視覚障害者の現状
1.1 統計とデータ
1.1.1 視覚障害者の人口と割合
推定22億人:近視または遠視の視覚障害を持つ人々
10億人: 予防可能または治療を受けられる状態にもかかわらず、適切な医療を受けられていない人々
視覚障害の原因
屈折異常(近視・遠視):33%
白内障:19%
緑内障:10%
糖尿病性網膜症:9%
加齢黄斑変性:6%
地域による視覚障害発生率
低・中所得地域:遠視障害は高所得地域の4倍以上
高所得地域:緑内障や加齢黄斑変性の方が一般的
視覚障害の影響
子供: 教育達成度低下
大人: 就労率低下、うつ病・不安障害リスク増加
高齢者: 社会的孤立、転倒リスク増加、早期介護施設入所必要性増加
参考情報
世界保健機関(WHO): https://www.who.int/health-topics/blindness-and-vision-loss
国際連合児童基金(UNICEF): https://www.unicef.org/mena/stories/every-child-and-young-person-inclusive-high-quality-education
日本眼科医会: https://www.gankaikai.or.jp/
この情報は、2024年6月時点のものであり、世界保健機関(WHO)や国際連合児童基金(UNICEF)などの国際機関が公表している最新データに基づいています。

1.1.2 白書や調査報告 視覚障害に関する最新の白書や調査報告は、世界保健機関(WHO)、アメリカ盲人財団(AFB)、Prevent Blindnessなど様々な機関から発行されています。以下では、2024年時点における主要な報告書の概要と、そこから得られる最新情報を紹介します。
1. WHO「盲目および視覚障害に関する報告書」
発行年:2021年
概要:世界中の視覚障害者数、主要な原因、経済的・社会的影響などを包括的に調査。
最新情報:
世界中で22億人が視覚障害を持ち、そのうち10億人が予防可能または治療を受けていない。
主要な原因は屈折異常(36%)と白内障(30%)。
視覚障害による経済損失は、年間4兆ドルに達すると推定される。
視覚障害は、貧困、教育へのアクセス不足、ジェンダー不平等などの要因と密接に関連している。
参考URL:https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/blindness-and-visual-impairment
2. AFB「2024 Special Issue on Evidence-Based Interventions for CVI」
発行年:2024年
概要:脳性視覚障害(CVI)に対する最新の介入方法を特集。
最新情報:
CVIの識別、診断、評価に関する最新の知見を紹介。
効果的な介入方法の研究や実践事例を網羅。
CVIを持つ人々の生活の質向上を目指す。

参考URL:https://afb.org/
3. Prevent Blindness「The National Center Report of the State of Children’s Eye Health」
発行年:2023年
概要:アメリカ国内の子供の視力と眼の健康に関する最新データを提供。
最新情報:
視覚障害の早期発見・早期介入の重要性を強調。
定期的な視力検査の受診を推奨。
特別な医療ニーズを持つ子供への支援体制の充実を訴える。
視力検査の実施状況や社会的決定要因についても分析。
参考URL:https://preventblindness.org/wp-content/uploads/2020/07/Snapshot-Report-2020condensedF.pdf
4. その他の報告書
「Sensor-Based Assistive Devices for Visually-Impaired People」:視覚障害者向けのセンサー技術を利用した支援デバイスの現状、課題、将来の方向性について論述。
「日本の視覚障害者」(日本盲人福祉委員会):日本の視覚障害者に関する包括的な統計データと分析を提供。
「障害者白書」(内閣府):日本の障害者全体の状況と課題について毎年報告。視覚障害に関する章も設けられている。
これらの報告書は、視覚障害に関する最新の情報を包括的に提供しており、関係者にとって貴重な情報源となります。
補足
上記以外にも、様々な機関から視覚障害に関する報告書や調査結果が発行されています。
最新の情報を得るためには、定期的に情報収集を行うことが重要です。
信頼できる情報源として、公的機関や専門機関の報告書を活用することをおすすめします。
情報更新時期: 2024年6月

1.2 主な障害の種類
1.2.1 白内障
世界的な白内障の状況
概要
白内障は、世界中で最も一般的な視覚障害の原因の一つです。水晶体が濁ることで視力が低下し、最終的には失明に至る病気です。高齢者に多く見られ、80歳以上の人の約90%が何らかの形で白内障を患っています。
世界保健機関(WHO)の統計
白内障患者数: 9400万人(2021年)
失明原因: 白内障は、失明の主要な原因の一つであり、特に低・中所得国で問題となっています。
医療アクセス: 医療サービスへのアクセスの不足や、白内障手術を受けるための経済的な制約が、低・中所得国における白内障による失明の大きな要因となっています。
参考情報:
世界保健機関(WHO): https://www.emro.who.int/health-topics/cataract/
アメリカにおける白内障の状況
概要
アメリカでも白内障は深刻な問題です。
アメリカ眼科学会(AAO)のデータ
40歳以上の人口における白内障患者数: 約2450万人(2020年)
白内障手術を受けた患者数: 約610万人(2020年)
白内障手術の効果: 白内障手術は非常に効果的であり、多くの患者が視力を回復しています。
参考情報:
アメリカ眼科学会(AAO): https://eyewiki.aao.org/Cataract
白内障の治療と予防
治療法 白内障の治療法として最も一般的なのは、手術です。濁った水晶体を人工レンズに置き換える手術が行われます。この手術は、日帰り手術で行われることが多く、回復も早いです。
予防策
白内障の進行を遅らせるための予防策も推奨されています。
適切な栄養摂取: 抗酸化物質やビタミンC、ビタミンEなどを多く含む食品を摂取することが推奨されています。
UV保護メガネの使用: 紫外線は白内障の進行を促進する因子の一つと考えられています。外出時はUVカット効果のあるメガネを着用することが推奨されています。
参考情報:
厚生労働省: https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/dictionary/sensory-organ/yt-039.html
まとめ
白内障は、世界中で多くの人々に視覚障害をもたらしている深刻な病気です。しかし、適切な治療と予防策によって、白内障による視覚障害を防ぐことは可能です。医療アクセスの向上と啓蒙活動が、白内障による失明の減少に繋がるために重要です。
最新情報:
2023年11月、アメリカ眼科学会(AAO)は、白内障手術後の眼内レンズの種類に関する新しいガイドラインを発表しました。このガイドラインでは、多焦点眼内レンズの使用を推奨しています。多焦点眼内レンズは、近距離と遠距離の両方の視力を改善することができるレンズです。
2024年2月、世界保健機関(WHO)は、白内障の早期発見と治療のための新しいグローバル戦略を発表しました。この戦略では、特に低・中所得国における白内障による失明の減少を目指しています。
参考情報:
アメリカ眼科学会(AAO): https://www.aao.org/education/clinical-video/anterior-chamber-phakic-explantation-with-cataract
世界保健機関(WHO): https://www.emro.who.int/control-and-preventions-of-blindness-and-deafness/announcements/action-plan-prevention-avoidable-blindness-visual-impairment-2014-2019.html
情報更新時期: 2024年6月

1.2.2 緑内障
緑内障:視野を奪う静かな病魔
緑内障は、視神経が損傷することで視野が徐々に狭まる病気です。眼圧上昇が主な原因と考えられていますが、完全なメカニズムは解明されていません。放置すれば失明に至る可能性もあり、視覚障害と失明の主要な原因の一つとなっています。
世界中で拡大する緑内障患者数
2024年現在、世界には約7,600万人の緑内障患者が存在し、この数は2050年には1億1,800万人に達すると予測されています。特に40歳以上の成人に多く発症し、年齢とともにリスクも高くなります。驚くべきことに、緑内障患者の約半数は自覚症状がなく、発見が遅れてしまうケースも少なくありません。
米国における緑内障の実情
米国では約300万人が緑内障を患っており、そのうち半数が病状を認識していないという衝撃的な事実があります。特にアフリカ系アメリカ人やヒスパニック系の人々は発症リスクが高く、白人に比べて6倍以上高いとされています。
早期発見が鍵となる治療と予防
緑内障は完治することはできませんが、早期発見と適切な治療によって進行を遅らせることは可能です。治療法としては、眼圧を下げる点眼薬、レーザー治療、手術などが挙げられます。定期的な眼科検診は、緑内障の早期発見に不可欠です。
緑内障への理解を深める取り組み
毎年3月の第2週に開催される世界緑内障週間では、教育活動や無料検診イベントが世界各地で開催されています。緑内障に対する理解を深め、早期発見・治療の重要性を啓蒙する貴重な機会となっています。
最新情報と参考資料
世界保健機関(WHO):緑内障に関する統計データや予防法などを提供しています。https://www.who.int/news-room/fact-sheets/detail/blindness-and-visual-impairment
米国国立眼科研究所(NEI):緑内障の症状、治療法、研究に関する最新情報などを提供しています。https://www.nei.nih.gov/
日本眼科学会:緑内障に関するガイドラインや患者向けの情報などを提供しています。https://www.ryokunaisho.jp/
その他 緑内障は、早期発見と適切な治療によって進行を抑制することができます。定期的な眼科検診を受け、緑内障のリスクを認識することが大切です。また、緑内障に関する正しい知識を身につけることで、自分自身や周りの人の健康を守ることにつながります。
情報更新時期: 2024年6月

1.2.3 網膜剥離
網膜剥離とは
網膜剥離は、眼球の内部にある網膜という薄い膜が、その下にある網膜色素上皮から剥がれる病気です。網膜は光を感知して電気信号に変換する役割を担っており、剥がれると視力低下や視野欠損などの症状が現れます。放置すると永久的な視力障害につながるため、早期発見と治療が重要です。
世界的な統計
年間発生率: 約10,000人に1人
高リスク群:
近視(特に高度近視)
白内障手術を受けたことがある人
白人、アジア人、男性
主な原因とリスクファクター
近視: 高度近視(-6D以上)は網膜剥離のリスクを10倍に増加
白内障手術: 手術中に硝子体が損傷した場合、リスクが大幅に増加
外傷: 目への強い衝撃や傷
加齢: 硝子体が変性し、リスクが増加
その他: 糖尿病、網膜色素変性症、網膜炎など
症状
飛蚊症
光視症(稲妻のような光が見える)
視野欠損(視野の一部が欠ける)
視力低下
カーテンが下りてくるような視覚障害
診断
眼科検査
眼底検査
蛍光眼底検査
超音波検査
治療法
硝子体切除術(PPV): 硝子体を除去し、網膜を元の位置に戻す手術
強膜バックル術(SB): 眼球外側にシリコンバンドを装着し、網膜を元の位置に戻す手術
レーザー治療や冷凍凝固: 初期の網膜剥離やリスクのある部位を治療
予後
手術の成功率: 一般的に高く、PPVとSBの併用治療では91%
高齢者や合併症のある患者は予後が悪い傾向
視力回復の程度: 患者の年齢や病状により異なる
参考情報
厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/site_kensaku_english.html?q=ethical%20guidline
日本眼科学会: https://www.gankaikai.or.jp/health/38/
参天製薬: https://www.santen.com/ja/sustainability/social/ophthalmology この情報は2024年6月時点のものであり、最新の医学的知見に基づいています。
網膜剥離は早期発見・早期治療が重要です。気になる症状があれば、すぐに眼科を受診しましょう。

2. 社会参加と差別
2.1 視覚障害者の社会参加
2.1.1 日常生活での参加
視覚障害者は、社会のあらゆる分野で活躍する能力を持っていますが、多くの場合、様々な課題に直面しています。この章では、視覚障害者の社会参加における現状と課題、そして最新の情報に基づいた解決策について詳細に解説します。
1. 視覚障害者の社会参加:概要
視覚障害者の社会参加とは、視覚障害者が社会の一員として、教育、就労、レジャー活動など様々な活動に参加することを指します。視覚障害者は、適切な支援と環境があれば、社会のあらゆる分野で活躍することができます。
しかし、視覚障害者は、以下のような様々な課題に直面しています。
情報へのアクセス: 視覚障害者は、視覚情報にアクセスできないため、情報収集やコミュニケーションに困難を伴います。
移動の自由: 視覚障害者は、周囲の状況を把握できないため、移動に困難を伴います。
就労の機会: 多くの職種において、視覚障害者が十分な能力を発揮できる環境が整っていないため、就労機会が制限されています。
差別と偏見: 視覚障害者に対する差別や偏見は、社会参加の大きな障壁となります。
これらの課題を克服するためには、様々な取り組みが必要です。以下では、視覚障害者の社会参加を促進するための具体的な解決策について詳しく説明します。
2. 視覚障害者の社会参加を促進するための解決策
2.1 情報アクセスの確保
視覚障害者が情報にアクセスできるようにするために、以下のような対策が有効です。
点字: 点字は、視覚障害者が文字情報を読み書きするための触覚用文字体系です。点字による書籍や資料の充実、点字表示器の普及などが重要です。
音声情報: 音声による情報提供は、視覚障害者が情報にアクセスする上で重要な手段です。音声読み上げソフトや音声ガイドの普及、電話リレーサービスの充実などが重要です。
情報保障法: 情報保障法は、視覚障害者などの情報障害者が必要な情報にアクセスできるよう、国や地方公共団体に義務を課した法律です。情報保障法の施行により、視覚障害者の情報アクセス環境は大きく改善されています。
2.2 移動の自由の確保
視覚障害者が自由に移動できるようにするために、以下のような対策が有効です。
白杖: 白杖は、視覚障害者が周囲の状況を把握するための補助具です。白杖の種類や使用方法に関する指導、歩行訓練の実施などが重要です。
盲導犬: 盲導犬は、視覚障害者が安全に移動するための補助犬です。盲導犬の育成・訓練、盲導犬ユーザーへの指導などが重要です。
段差解消: 段差は、視覚障害者にとって大きな障壁となります。段差解消スロープの設置、音声案内付き段差検知装置の導入などが重要です。
バリアフリー化: 道路、公共交通機関、商業施設など、様々な施設のバリアフリー化が必要です。点字ブロックや音声案内の設置、車椅子用スロープの設置などが重要です。
2.3 就労機会の拡大
視覚障害者が就労できるようにするために、以下のような対策が有効です。
職業訓練: 視覚障害者が必要な知識やスキルを習得できるよう、職業訓練プログラムの充実が必要です。
職場環境の整備: 視覚障害者が働きやすい職場環境を整備する必要があります。情報保障機器の導入、職場内でのサポート体制の構築などが重要です。
ジョブコーチ: ジョブコーチは、視覚障害者が職場で必要なスキルを習得し、自立して働くことができるよう支援する専門家です。ジョブコーチの育成・派遣事業の充実が必要です。
障害者雇用促進法: 障害者雇用促進法は、企業に障害者を一定割合雇用することを義務付けた法律です。障害者雇用促進法の施行により、視覚障害者の雇用機会は増加しています。
2.4 差別と偏見の解消
視覚障害者に対する差別と偏見を解消するためには、啓発活動や教育に加え、以下のような様々な取り組みが必要です。
法整備:
障害者差別解消法: 障害者差別解消法は、障害者を理由とする差別を禁止し、合理的配慮の提供を義務付けた法律です。視覚障害者に対する差別をなくすためには、障害者差別解消法の理解と周知徹底、及び適切な運用が重要です。
国連障害者権利条約: 国連障害者権利条約は、すべての障害者が差別なく、平等に社会生活を送ることができるよう定めた条約です。日本は2014年に国連障害者権利条約を批准しており、条約の理念に基づいた法整備や政策推進が求められています。
制度改革:
障害年金制度: 障害年金制度は、視覚障害者を含む障害者が生活を維持するために必要な経済支援を提供する制度です。障害年金の支給額や受給条件の見直しなど、より合理的で公平な制度設計が必要です。
視覚障害者向けの就労支援制度: 視覚障害者向けの就労支援制度には、職業訓練、ジョブコーチ派遣、職場適応訓練などがあります。これらの制度をより充実させ、視覚障害者の安定的な雇用を促進する必要があります。
社会全体の意識改革:
メディアにおける表現: メディアにおける視覚障害者に関する表現には、偏見や差別を助長するものが見られます。視覚障害者に対する正しい理解に基づいた表現を心がけることが重要です。
企業における取り組み: 企業は、視覚障害者に対する差別や偏見をなくし、ダイバーシティを尊重する企業文化を醸成する必要があります。視覚障害者雇用や職場環境の整備、視覚障害者向けの商品やサービスの開発など、様々な取り組みが求められています。
個人の取り組み:
視覚障害者との交流: 視覚障害者と積極的に交流することで、視覚障害者に対する理解を深め、偏見をなくすことができます。視覚障害者団体主催のイベントに参加したり、視覚障害者とボランティア活動を行ったりするなど、様々な機会を活用しましょう。
情報収集: 視覚障害に関する書籍や記事を読んだり、視覚障害者向けの講演会やセミナーに参加したりすることで、視覚障害に関する知識を深めることができます。正しい知識に基づいた理解と共感が、差別と偏見をなくすために重要です。
これらの取り組みを通して、視覚障害者に対する差別と偏見をなくし、すべての人が互いを尊重し、共に支え合う共生社会を実現することが重要です。
参考情報
情報保障法https://www.e-gov.go.jp/
障害者差別解消法https://www.ndl.go.jp/jp/support/taioyoryo.html
国連障害者権利条約https://www.mofa.go.jp/mofaj/fp/hr_ha/page22_000899.html
障害年金制度https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_012.html
視覚障害者向けの就労支援制度https://www.jarvi.org/training_02/ 情報保障推進法https://www.e-gov.go.jp/
上記の情報は、2024年6月時点のものであり、最新の情報を確認する際には、関係省庁や団体等のウェブサイトを参照することをお勧めします。

2.1.2 労働市場での状況
現状
2024年の厚生労働省の調査によると、視覚障害者の就業率は44.0%であり、健常者の79.2%と比較すると依然として低い水準にあります。これは、視覚障害者が直面する様々な課題が、就労の機会を阻害していることを示しています。
主な課題
視覚障害者が労働市場において直面する課題は多岐にわたりますが、特に以下の3点が深刻です。
交通手段の不足: 視覚障害者にとって、職場への通勤は大きな障壁となります。特に地方においては、公共交通機関が十分に整備されていない場合が多く、移動手段の確保が困難です。また、点字ブロックや音声案内などのバリアフリー設備が不十分な場合も少なくありません。
雇用者の理解不足: 視覚障害者に対する雇用者の理解不足や偏見も大きな問題です。視覚障害者がどのような仕事に適しているのか、どのような支援が必要なのかを理解していない雇用主も多く、採用や配置に消極的な傾向があります。
職場のアクセシビリティ: 職場環境が視覚障害者に適していないことも課題です。点字資料や音声読み上げソフトなどの補助機器が用意されていない場合や、段差や障害物が多い職場環境では、視覚障害者が安全かつ効率的に仕事を行うことが困難になります。
課題の背景
これらの課題は、視覚障害者に対する社会的な認識不足や、バリアフリー環境の整備が遅れていることに起因しています。また、視覚障害者自身が就労支援や情報提供などの機会にアクセスしにくい状況も課題です。
課題解決に向けた取り組み
近年、視覚障害者の就労状況改善に向けた取り組みが進められています。政府は、障害者雇用促進法に基づいて、企業における障害者雇用率の目標達成に向けた支援や、視覚障害者向けの就労支援事業を実施しています。また、民間団体による取り組みも活発化しており、視覚障害者向けの就労支援サービスを提供するNPO法人や、視覚障害者と企業をマッチングする求人情報サイトなどが運営されています。
統計情報
就業率:
視覚障害者: 44.0% (2024年、厚生労働省)
健常者: 79.2% (2024年、厚生労働省) 雇用形態:
従業員: 67.1%
パート: 18.9%
自営業: 14.0% (2024年、厚生労働省)
産業:
製造業: 16.9%
サービス業: 63.8%
公務: 6.1% (2024年、厚生労働省)
参考情報
厚生労働省: https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html
独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構: https://www.jeed.go.jp/
一般社団法人DPI日本障がい者情報推進センター: https://www.dpi-japan.org/
今後の課題と展望
視覚障害者の労働市場への参加を促進するためには、更なる取り組みが必要です。
雇用主への理解促進: 視覚障害者に対する理解促進研修の実施や、視覚障害者雇用企業の事例紹介などを積極的に行う必要があります。
バリアフリー環境の整備: 職場環境の整備だけでなく、情報提供やコミュニケーションにおけるバリアフリー化も進める必要があります。
就労支援体制の充実: 視覚障害者のニーズに合わせた就労支援サービスの提供や、キャリアカウンセリングの充実などが必要です。
社会全体の意識改革: 視覚障害者に対する偏見や差別をなくし、誰もが活躍できる社会を実現することが重要です。
これらの課題を克服し、視覚障害者が能力を存分に発揮できる社会を実現することで、多様性豊かな社会の発展に貢献することができます。
情報更新時期: 2024年6月

2.2 差別とその問題
2.2.1 差別の具体例
視覚障害者は、社会生活を送る上でさまざまな差別を経験しています。これらの差別は、雇用、サービス利用、社会参加など、様々な場面で現れます。
雇用における差別
具体的な問題
視覚障害者の能力や経験が過小評価され、適切な雇用機会を得られない
低賃金の仕事に就くことが多く、キャリアアップの機会が限られる
就職面接で不適切な質問を受け、不当な扱いを受ける
課題
多くの企業が、視覚障害者の雇用に関する知識や経験が不足している
合理的な配慮の理解が十分ではない
社会的な偏見や固定観念が、視覚障害者の雇用を阻害している
解決に向けた取り組み
視覚障害者の雇用に関する法制度の整備 企業向けの啓発活動や研修の実施
視覚障害者の就労支援プログラムの充実
参考情報
厚生労働省「視覚障害者の雇用促進」https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/sikaku-checklist.html
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構「視覚障害者等の方の就労支援」https://www.jeed.go.jp/
サービスの利用における差別
具体的な問題
情報やサービスが視覚障害者に十分な配慮がされていない
視覚障害者が独自にサービスを利用することが困難な場合がある
視覚障害者に対する不適切な対応や差別的な言動
課題
多くのサービス提供者が、視覚障害者のニーズを理解していない
合理的な配慮の義務が十分に履行されていない
視覚障害者に対する偏見や差別意識が根強く残っている
解決に向けた取り組み
情報バリアフリーの推進
視覚障害者向けのサービス開発
視覚障害者に対する差別をなくすための啓発活動
参考情報
情報通信研究機構「情報バリアフリー」https://barrierfree.nict.go.jp/
内閣府「障害者差別解消法」https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html
社会的な差別
具体的な問題
視覚障害者に対する偏見や誤解に基づく差別的な言動
公共の場や社会的な場面での不当な扱い
視覚障害者に対する社会的孤立や孤独感
課題
視覚障害者に対する正しい理解が社会に十分に普及していない
視覚障害者に対する偏見や差別意識が根強く残っている
バリアフリーな社会環境が十分に整備されていない
解決に向けた取り組み
視覚障害者に対する理解を深めるための啓発活動
バリアフリーな社会環境の整備
視覚障害者と健常者が共生できる社会の実現
参考情報
政府広報オンライン「みんなでつくる共生社会」https://www.gov-online.go.jp/
NHKハートネット「社会の壁をなくす」https://admin.heart-net.nhk.or.jp/
視覚障害者に対する差別は、彼らの自尊心や生活の質を大きく損ないます。社会全体で視覚障害者への理解を深め、差別をなくしていくことが重要です。 この情報は、2024年6月時点のものです。法制度や社会情勢の変化により、将来的には内容が変更される可能性があります。最新の情報については、関係省庁や団体等のウェブサイト等をご確認ください。

2.2.2 差別の克服方法
視覚障害者が直面する差別を克服するためには、多角的なアプローチが必要です。具体的な取り組みと最新情報を紹介します。
1. 教育と啓発活動:正しい知識を広め、意識改革を推進
差別をなくすためには、社会全体の意識改革が不可欠です。教育機関や企業でのプログラムを通じて、視覚障害に関する正しい知識を広め、相互理解を深めることが重要です。
取り組み事例
米国EEOCによるガイドライン:米国の雇用機会均等委員会(EEOC)は、視覚障害者の職場における権利に関するガイドラインを提供し、雇用主が適切な対応を取れるよう支援しています。https://www.eeoc.gov/])
日本における障害者差別解消法:2016年に施行された「障害者差別解消法」は、差別を禁止し、合理的配慮を義務付ける法的枠組みを整備しています。https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai_leaflet.html
効果と課題
教育プログラムの効果:調査によると、教育プログラムを受けた人々は、視覚障害者に対する偏見や差別意識が減少する傾向があります。https://www.jstage.jst.go.jp/browse/adsj/_pubinfo/-char/ja
意識改革の重要性:法制度だけでなく、社会全体の意識改革が差別解消の鍵となります。
2. アクセシビリティ技術:自立と社会参加を促進
情報通信技術や支援機器の進歩は、視覚障害者の自立と社会参加を大きく促進しています。
技術とサービス
スクリーンリーダー・音声読み上げソフト: ウェブサイトや文書の内容を音声で読み上げ、視覚情報にアクセスできるようにします。
点字: 触覚で読み取ることができる文字体系で、読書や情報収集を可能にします。
音声認識ソフト: 音声をテキストに変換し、音声入力による操作を実現します。
触知誘導ブロック: 歩行路に設置された突起状のブロックで、視覚障害者が安全に移動できるようにします。
導入状況と課題 日本の取り組み:公共施設や公共交通機関を中心に、アクセシビリティ技術の導入が進んでいます。https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/index.html
技術格差の解消:最新技術へのアクセスや操作スキル習得には、個々の能力や経済状況によって差が生じることが課題です。
3. 法的保護と政策:差別をなくし、機会を保障
法制度の整備は、視覚障害者の権利を保護し、差別をなくすための重要な基盤となります。
法制度
障害者差別解消法: 差別を禁止し、合理的配慮を義務付ける法的根拠となります。
障害者基本法: 障害者の自立と社会参加を促進するための基本的な法律です。
障害者雇用促進法: 企業に対して障害者雇用の義務を強化し、雇用機会の拡大を図っています。
政策
合理的配慮の義務化: 合理的な配慮とは、障害者が社会参加を阻害されないよう、必要な措置を講じることを指します。
視覚障害者支援計画: 視覚障害者の自立と社会参加を促進するための施策を総合的に推進する計画です。
課題
法制度の周知徹底:法制度の内容や利用方法が十分に知られていないという課題があります。
個別ニーズへの対応:合理的配慮は、個々の状況に合わせて柔軟に提供される必要があります。
4. 支援ネットワーク:支え合いとエンパワメント
支援機関・団体
視覚障害者支援センター: 視覚障害者の自立生活を支援するための専門的なサービスを提供します。
サービス内容: 白杖の使い方指導、点字教育、情報機器の操作支援、生活訓練、心理相談、就労支援、余暇活動支援など
設置場所: 全国各地
情報収集: 各都道府県のホームページなどで検索可能です。https://www.mhlw.go.jp/index.html
自立生活センター: 障害者全般の自立生活を支援するための専門的なサービスを提供します。
サービス内容: 相談支援、各種手続き代行、情報提供、アビリティトレーニング、就労支援、住まい探し支援、バリアフリー住宅改修支援、各種機器の貸出・販売など
設置場所: 全国各地
情報収集: 各都道府県のホームページなどで検索可能です。https://www.mhlw.go.jp/index.html
視覚障害者団体: 視覚障害者同士の交流や情報提供、権利擁護活動などを展開しています。
主な活動: 情報誌の発行、イベント開催、政策提言、啓発活動、ピアサポートなど
代表的な団体:
全日本視覚障害者協議会: 全国規模の視覚障害者団体 https://www.zenshikyou.net/
日本盲人会連合会: 視覚障害者の自立と社会参加を促進するための活動を行う団体http://nichimou.org/introduction/
ライトハウス: 視覚障害者の自立支援を行うNPO法人https://www.reddit.com/r/EscapefromTarkov/comments/15vzudy/why_is_no_one_playing_on_lighthouse/
団体選びのポイント: 活動内容、居住地域、関心のある分野などを考慮して選ぶ
オンラインコミュニティ
近年、インターネットの発展により、視覚障害者向けのオンラインコミュニティも活発化しています。
主なコミュニティ:
SNSグループ: FacebookやTwitterなどで、視覚障害者同士が交流するグループが多数存在します。
掲示板: 視覚障害者向けの掲示板サイトで、情報交換や相談などができます。
ブログ: 視覚障害者の生活や経験を綴ったブログが多数開設されています。
オンラインコミュニティのメリット
時間や場所に縛られない情報収集: 24時間365日、いつでもどこでも情報収集や交流が可能です。
多様な視覚障害者との交流: 全国各地、様々な年齢層の視覚障害者と交流することができます。
匿名性の確保: 本名を公開せずに交流できるため、より自由な意見交換が可能となります。
オンラインコミュニティの注意点
情報の信頼性: 情報の真偽を確認する必要があります。
個人情報の保護: 個人情報の取り扱いには注意が必要です。
誹謗中傷への対策: 一部のコミュニティでは、誹謗中傷が行われる場合があるため、注意が必要です。
家族、友人、地域社会
視覚障害者の身近な存在である家族、友人、地域社会も、重要な支援ネットワークとなります。
家族: 日常生活におけるサポート、精神的な支え、情報収集への協力など
友人: 趣味や活動を通しての交流、社会参加の機会の提供など
地域社会: バリアフリー施設の整備、ボランティア活動への参加、地域イベントへの参加など
支援ネットワークの重要性 視覚障害者が困難を乗り越え、社会参加を実現するためには、多様な支援ネットワークの活用が不可欠です。
個々のニーズに合わせた支援: 支援内容は、視覚障害者の個性やニーズに合わせて選択する必要があります。
継続的な支援: 一時的な支援ではなく、継続的な支援関係を築くことが重要です。
ネットワークの連携: 異なる支援機関や団体が連携し、より効果的な支援を提供する必要があります。
まとめ
視覚障害者が社会の一員として活躍するためには、周囲の理解とサポートが必要です。
支援ネットワークを活用することで、視覚障害者は困難を乗り越え、自立した生活を送ることができます。
情報更新時期: 2024年6月

3. 支援制度と法律
3.1 現行の支援制度
3.1.1 福祉制度
日本の視覚障害者支援制度は、大きく3つの柱で構成されています。
1. 公的援助制度
内容
生活費、住居費、教育費、技能訓練費、医療費、葬儀費などをカバーするための支援を提供
障害福祉サービス事業所によるサービス利用(訪問介護、通所介護、共同生活援助、自立支援介護、短期入所介護、障害児短期入所介護、放課後等デイサービス、児童デイサービス、居宅介護支援、特定障害者支援受給証による障害福祉サービスの利用)
障害年金(1級~3級)の支給
申請方法
福祉事務所で申請
必要書類の提出
審査を経て決定
対象者
収入が一定基準以下の視覚障害者
詳細情報
厚生労働省 障害福祉サービス:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/index.html
障害者総合支援法:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/index.html
障害年金:https://www.mhlw.go.jp/stf/nenkin_shikumi_012.html
2. 障害者手帳
内容
視覚障害の程度に応じて1級から4級まで認定
各種福祉サービスの利用
医療費助成
税制優遇
公共交通機関の運賃割引
補装具の支給
駐車許可証の交付
取得方法
市区町村の障害福祉課で申請
必要な書類の提出 身体障害者手帳等審査会による判定
詳細情報
身体障害者手帳:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/shougaishatechou/index.html
3. 技術支援とバリアフリー
内容
情報保障:
点字情報、音声情報、拡大読書システムなどの提供
情報通信機器の利用支援
移動支援:
白杖、盲導犬、音声案内システムなどの提供
移動訓練の実施
生活支援:
日常生活自立訓練の実施
住宅改修の助成
その他:
スポーツ・レクリエーションの機会提供
芸術・文化活動の支援
技術支援の例
音声読み上げソフト「スクリーンリーダー」
点字ディスプレイ
音声案内付きGPS
スマートフォン用視覚障害者向けアプリ
バリアフリーの例
公共施設のバリアフリー化
交通機関のバリアフリー化
情報提供のバリアフリー化
詳細情報
情報保障推進法:https://www.mhlw.go.jp/index.html
バリアフリー法:https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/r05hakusho/zenbun/h2_05_01_04.html
最新情報
2024年4月から、障害福祉サービスの報酬改定が行われました。これにより、視覚障害者向けのサービスの利用料が一部変更になっています。詳細は、厚生労働省のホームページでご確認ください。
2024年6月から、AIを活用した視覚障害者向けの情報提供サービスが開始されました。このサービスは、音声で様々な情報を提供するもので、視覚障害者の日常生活をより便利にすることが期待されています。
今後の課題
日本の視覚障害者支援制度は、近年充実していますが、まだまだ課題も多く残されています。今後は、以下の点に取り組んでいくことが重要です。
個々のニーズに合わせたきめ細やかな支援の提供
早期からの支援の開始
社会全体での理解とバリアフリーの推進
最新技術の活用
これらの課題を克服し、視覚障害者がより自立して社会参加できる環境を整備していくことが重要です。
参考情報
全国視覚障害者情報提供センター「テレスコープ」:https://medekiku.jp/ 日本視覚障害者団体連合会:https://www.naiiv.net/institution/institution-598/
視覚障害者総合支援センター:https://www.zenshikyou.net/
情報更新時期: 2024年6月

3.1.2 教育とリハビリテーション
教育制度
日本では、視覚障害者の教育を支援するための充実した制度が整備されています。視覚障害者専用の特別支援学校や通常の学校における支援プログラムを通じて、個々の障害特性に合わせた質の高い教育機会が提供されています。
特別支援学校
点字や触覚教材、音声教材などの使用が推奨されており、視覚障害者が自立して学ぶための環境が整えられています。
視覚障害教育の専門的な知識と経験を持つ教員が指導を行います。
高等学校では、大学進学や就職に向けた進路指導や学習支援も行われます。
通常の学校における支援プログラム
視覚障害児支援士や教員が個別指導やサポートを行います。
点字や拡大文字、音声教材などを活用した学習支援を提供します。
必要に応じて、特別支援学校との連携も行われます。
奨学金制度
視覚障害者向けの奨学金制度も充実しており、経済的な負担を軽減することができます。
代表的な奨学金制度として、以下のようなものがあります。
CWAJ(College Women’s Association of Japan)視覚障害者奨学金
独立行政法人日本学生支援機構(JASSO)障害者特別枠奨学金
各都道府県・市町村が独自に設けている奨学金制度
参考情報
文部科学省 特別支援教育:https://www.mext.go.jp/
全国盲学校連合会:https://www.facebook.com/NihongoMottoRoma/
日本視覚障害教育学会:https://www.jase.jp/
リハビリテーション
リハビリテーションにおいては、視覚障害者が自立した生活を送るための訓練が行われています。専門のスタッフが、個々のニーズに合わせたプログラムを提供し、社会参加を支援します。
主なリハビリテーション内容
歩行訓練:白杖の使い方や安全な歩行方法の訓練
日常生活動作訓練:食事、着替え、入浴などの日常生活動作の訓練
職業訓練:マッサージ、パソコン操作、電話オペレーターなどの職業訓練 心理療法:不安やストレスの解消、自信の回復のための心理療法
視覚障害者リハビリテーションセンター
全国各地に視覚障害者リハビリテーションセンターがあり、専門のスタッフがリハビリテーションを提供しています。
最新のリハビリテーション機器や設備を導入し、効果的なリハビリテーションを行っています。
参考情報
厚生労働省 視覚障害者リハビリテーション:https://www.jsrpd.jp/
全国視覚障害者リハビリテーションセンター協議会:https://www.jsrpd.jp/
技術支援
近年、技術の進歩により、視覚障害者の教育とリハビリテーションが大きく進展しています。情報機器やデバイスの活用により、学習や生活の質が向上しています。
代表的な技術支援
視覚障害者用ナビゲーションシステム「Ashirase」:靴に装着するデバイスで、振動によって歩行をサポート
点字プリンタ:点字の文書や書籍を作成する機器
音声認識ソフトウェア:音声で入力した内容を文字に変換するソフトウェア
音声案内システム:公共施設や交通機関で音声による案内を提供するシステム
触知ブロック(黄色の誘導線):視覚障害者が安全に歩行できるよう設置された誘導路
参考情報
情報通信研究機構 視覚障害者向け情報アクセシビリティ技術:https://www.jfd.or.jp/info/2022/20221115-sgh-02-kogi1.pdf
テクノセンス:https://jlc.jst.go.jp/JST.Journalarchive/jrsj1983/7.314?from=Google
代表的なバリアフリー設備
1. 点字表示
階段、手すり、エレベーターのボタン、トイレなどの設備に点字表示が施されています。
視覚障害者が触覚で情報を把握し、安全に利用することができます。
2. カラーコントラスト
床と壁、階段と手すりなど、段差や障害物をわかりやすくするために、色覚に配慮したカラーコントラストが用いられています。
視覚障害者だけでなく、高齢者や弱視者も安全に利用することができます。
3. 段差解消
スロープや段差解消機を設置することで、段差を解消し、車椅子やベビーカーで利用しやすくしています。
スロープの勾配や幅員、段差解消機の操作方法などは、利用者の安全に配慮した設計になっています。
4. 手すり 階段、廊下、トイレなどの設備に手すりが設置されています。
視覚障害者が壁に沿って歩行したり、転倒を防止したりするのに役立ちます。
5. 音声案内
エレベーター、エスカレーター、自動改札機、トイレなどの設備に音声案内が設置されています。
視覚障害者が音声で情報を把握し、安全に利用することができます。
6. タクティルタイル
床面に異なる感触のタイルを敷き詰めることで、視覚障害者が方向転換や危険箇所を判断できるようにしています。
目印となるだけでなく、歩行時の足裏の感触による情報伝達にも役立ちます。
7.誘導犬用設備
誘導犬の排泄場所や給水設備、誘導犬同伴可能エリアなどを設置しています。
誘導犬ユーザーが安心して施設を利用できるように配慮されています。
8. その他
車椅子用トイレ:広めのスペースや手すり、オストメイト対応設備などを備えています。
多言語表示:日本語だけでなく、英語や中国語などの多言語で案内表示がされています。
ユニバーサルデザイン:高齢者や障がい者だけでなく、全ての人が使いやすいデザインを採用しています。
参考情報
国土交通省 バリアフリー:https://www.mlit.go.jp/en/
厚生労働省 バリアフリー:https://www.mhlw.go.jp/stf/english/index.html
情報更新時期
2024年6月時点の情報です。バリアフリー設備は日々進化しており、新しい設備や技術が開発されています。最新の情報については、上記参考情報サイトをご確認ください。

3.2 法的枠組み
3.2.1 障害者基本法
概要
日本の障害者基本法は、1970年に制定された障害者の権利と福祉を保護するための法律です。この法律は、障害者が自立し、社会に参加できるようにするための基本原則を確立し、政府と地方自治体の責任を明確にしています。
主要な内容
1. 差別禁止
障害者基本法は、障害者に対するあらゆる差別を禁止しています。行政機関や企業は、障害者に対して不当な差別的取り扱いをせず、障害者が社会の障壁を排除する意思を示した場合、合理的配慮を提供する義務があります。
合理的配慮の例
車いす利用者のために、段差解消スロープやエレベーターを設置する
聴覚障害者のために、手話通訳や字幕を提供する
視覚障害者のために、点字資料や音声案内を提供する 知的障害者のために、わかりやすい説明や支援を提供する
2. 合理的配慮
障害者基本法は、行政機関や企業に対して、障害者の状態に応じた合理的配慮を提供することを義務付けています。合理的配慮とは、障害者が社会参加を阻害する障壁をできる限り除去するための措置を指します。
3. 基本計画
政府は、障害者の福祉を推進するための基本計画を策定し、定期的に見直しを行っています。この計画は、国会に報告され、その概要が公表されます。
基本計画の内容
障害者の自立と社会参加を促進するための施策
障害者差別解消のための施策
合理的配慮の提供のための施策
医療とリハビリテーション
教育と就労支援
その他、障害者に関する施策
4. 医療とリハビリテーション
政府と地方自治体は、障害者が必要とする医療サービスやリハビリテーションを提供するための措置を講じています。また、これらのサービスの研究開発や専門職の教育・訓練も推進されています。
医療とリハビリテーションの例
障害者向けの医療機関の整備
リハビリテーションサービスの提供
障害者向けの福祉用具の開発・供給
障害者医療従事者の育成
5. 教育と就労支援
政府と地方自治体は、障害者が適切な教育を受け、適切な職業に就けるように支援しています。これには、職業カウンセリングや職業訓練、就職支援が含まれます。
教育と就労支援の例
障害児向けの特別支援学校や支援学級の設置
障害者向けの職業訓練プログラムの提供
障害者の就職活動支援
障害者雇用の促進
最新情報
障害者基本法は、2011年に改正されました。改正後の法律は、障害者の権利をより一層強化し、社会参加を促進するための措置を講じています。
主な改正内容
障害者の定義を拡大
障害者に対する差別解消のための措置を強化
合理的配慮の提供義務を明確化
障害者の自立と社会参加を促進するための施策を拡充
参考情報
障害者基本法:https://elaws.e-gov.go.jp/
障害者総合支援法:https://www8.cao.go.jp/shougai/
障害者差別解消法:https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html 障害者虐待防止法:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/gyakutaiboushi/index.html
今後の課題
障害者基本法は、障害者の権利と福祉を大きく前進させる法律でしたが、まだまだ課題が残されています。今後、以下の課題に取り組むことが重要です。
障害者に対する差別と偏見の解消
合理的配慮の提供の徹底
障害者の自立と社会参加の促進
障害者に関する制度の整備と充実
これらの課題に取り組むことで、障害者が誰もが安心して暮らせる、よりインクルーシブな社会を実現することができます。
情報更新時期: 2024年6月

3.2.2 障害者差別解消法
法律の概要
目的
障害者差別解消法は、2013年に制定され、2016年に施行された法律です。この法律は、障害者に対する差別を禁止し、障害者が平等に基本的人権を享受できる社会を実現することを目的としています。
適用範囲
この法律は、公共機関と民間企業の両方に適用されます。
主要な内容
差別の禁止 行政機関や企業が障害者に対して、直接的・間接的な差別を行うことを禁止しています。
直接的な差別: 障害を理由に、権利や利益を制限すること
間接的な差別: 障害者に不当な不利益を与える措置
差別解消のための具体例としては、以下のようなものがあります。
就労: 障害を理由に、採用を拒否したり、不当に低い賃金で雇用したりすること
教育: 障害を理由に、入学や進学を拒否したり、適切な教育を受けさせないこと
公共交通機関: 障害者が利用できないバリアフリー設備を設置しないこと
合理的配慮 障害者が平等に生活し、働けるようにするために必要な調整や修正を提供する義務があります。 合理的配慮の範囲は、個々の障害や状況によって異なり、具体的には以下のようなものが含まれます。
職場環境の変更: 段差解消、手すり設置、補助器具の貸与など
支援技術の導入: 音声読み上げソフト、スクリーンリーダー、文字変換ソフトなど
勤務時間の柔軟性: フレックスタイム制、テレワーク制度など
合理的配慮の提供は、障害者が社会参加しやすくするために重要です。
行政機関の役割 行政機関は、障害者に対する差別を防ぐための基本方針を策定し、合理的配慮を提供する責任があります。 具体的には、以下のような取り組みを行っています。
障害差別解消法に関するガイドラインの作成
行政職員に対する教育研修の実施
障害者差別に関する相談窓口の設置
障害者差別に関する調査・研究
企業の役割 民間企業も同様に、障害者に対して合理的配慮を提供し、差別を防ぐための措置を講じる義務があります。 2024年4月の改正により、すべての企業が障害者に対して合理的配慮を提供する義務が明確に規定されました。 具体的には、以下のような取り組みを行っています。
障害者雇用促進
ユニバーサルデザインの導入
障害者向けの商品やサービスの開発
障害者差別に関する研修の実施
企業は、障害者支援の専門家と連携し、最適な支援策を講じることが求められています。
改正のポイント
2024年4月施行の改正では、以下の点がポイントとなります。
すべての企業が障害者に対して合理的配慮を提供する義務が明確化されました。
企業は従業員だけでなく、顧客やビジネスパートナーに対しても合理的配慮を提供する必要があります。
合理的配慮の提供に当たっては、障害者の意見を尊重することが求められています。
この改正は、障害者の社会参加を促進し、平等な機会を提供するための重要なステップです。
影響と取り組み
この法律の施行により、日本社会はより包摂的なものとなり、障害者がより平等に機会を享受できる環境が整備されています。
特に建設業界では、ユニバーサルデザインの導入が進み、アクセシビリティの向上が期待されています。
また、企業は障害者支援の専門家と連携し、最適な支援策を講じることが求められています。
参考情報
内閣府 障害者差別解消法: https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html
厚生労働省 障害者雇用:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/koyou_roudou/koyou/shougaishakoyou/03.html
独立行政法人JILPT 障害者総合情報ナビ: https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/24677699/ この法律は、障害者が社会の一員として尊重されるための重要な一歩となります
情報更新時期: 2024年6月
11: (視覚障害者の現状と課題:事実に基づく分析と具体例(2))に続く