5: 「目の見えない世界を理解する:視覚障害者の日常と挑戦(1)」続き
目次
4. 視覚障害者の職場
4.1 就労の現状と課題
4.2 職場での適応と支援
4.3 視覚障害者の成功事例
5. 視覚障害者のスポーツ
5.1 視覚障害者が楽しめるスポーツ
5.2 パラリンピックと競技の紹介
5.3 スポーツを通じた社会参加
6. 視覚障害者とバリアフリー社会
6.1 社会におけるバリアフリーの現状
6.2 障害者にやさしい街づくり
6.3 テクノロジーの役割
7. 視覚障害者への差別と偏見
7.1 差別の歴史と現状
7.2 偏見をなくすための取り組み
7.3 教育と啓発の重要性

4. 視覚障害者の職場
4.1 就労の現状と課題
2023年12月時点の情報
現状
視覚障害者の就労状況は近年改善傾向にあり、厚生労働省の調査によると、2022年時点で民間企業で働く障害者の数は57万8292人となり、前年比3.2%増加し過去最多を記録しました。しかし、雇用率は2.15%にとどまり、法定雇用率2.3%には依然として多くの企業が達していない状況です。

参考URL:
厚生労働省 令和4年12月『障害者の雇用の状況(民間事業場)』: 
https://www.mhlw.go.jp/index.html
課題
雇用機会の偏在
依然として首都圏や大都市に偏っており、地方在住者には就職の選択肢が限られています。
地方での雇用機会拡大が課題です。
職場環境の整備
適切なICTツールの導入や職場内のバリアフリー化が進められているものの、十分とは言えません。
視覚障害者に対する理解や配慮が不足している職場も少なくありません。
法定雇用率の達成
多くの企業が法定雇用率を達成できていない、特に中小企業で雇用義務を果たしていないケースが多いです。
視覚障害者の雇用機会減少につながっています。

参考URL:
ジェイエイディエス「2022年 障害者雇用白書」: 
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html
支援制度と取り組み
1. 就労移行支援
一般企業で働きたい視覚障害者を対象に、事業所での作業や企業での実習を通じて必要な知識や能力を習得させる支援が行われています。 求職活動のサポートや職場定着のための支援も含まれます。

参考URL:
厚生労働省「就労移行支援事業」: 
https://www.mhlw.go.jp/content/001076188.pdf
2. 就労継続支援
通常の事業所での雇用が難しい視覚障害者には、就労継続支援が提供されています。
雇用契約を結ぶA型と、非雇用型のB型があります。
A型では実際に労働者として雇用され、B型では生産活動を通じて訓練を受けます。

参考URL:
厚生労働省「就労継続支援事業」:
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/service/shurou.html
3. SDGsの目標
SDGsの目標8では、「働きがいも経済成長も」というテーマの下、障害者の完全かつ生産的な雇用と働きがいのある仕事を実現することが掲げられています。
視覚障害者の雇用促進が期待されています。

参考URL:
国連広報センター「持続可能な開発目標(SDGs)」: 
https://sdgs.un.org/goals
今後の課題と展望
視覚障害者の雇用環境は改善傾向にあるものの、課題も依然として残されています。今後、更なる支援と環境整備が必要となります。
地方における雇用機会の拡大
職場環境のバリアフリー化の推進
視覚障害者に対する理解と配慮の醸成
法制度の整備・強化
これらの課題を克服し、視覚障害者が能力を最大限に発揮できる社会を実現するためには、企業と社会全体の理解と協力が不可欠です。

参考URL:
視覚障害者就労支援センター「就労支援情報ポータルサイト」: 
http://www.tils.gr.jp/
パーソルダイバース「障害者雇用を企業の力に変える【チャレンジラボ】」: 
https://persol-diverse.co.jp/

4.2 視覚障害者の職場:適応と支援
4.2.1 視覚障害者の職場適応における課題
視覚障害者が職場で活躍するためには、様々な課題が存在します。以下に主な課題と、それぞれに対する取り組みを紹介します。

1. 情報収集・共有の困難
書類や資料、社内システムなどの情報へのアクセスが困難
会議や研修内容の理解
職場のコミュニケーションにおける情報格差 取り組み
情報アクセシビリティの向上:スクリーンリーダー、拡大鏡ソフト、点字ディスプレイなどの補助技術の導入
情報共有方法の工夫:音声資料、点字資料の提供、社内システムのアクセシビリティ向上
コミュニケーション支援:要約筆記、音声ガイドの提供、情報共有ツールの活用

参考ページ
情報バリアフリー推進センター:
https://www.nihon-bf.jp/kikou/
視覚障害情報センター:
https://www.jasso.go.jp/gakusei/tokubetsu_shien/shogai_infomation/shien_guide/shikaku_bamen/information.html

2. 移動・作業環境の制約
職場環境の把握
安全な移動
作業環境の整備
取り組み
職場環境のバリアフリー化:段差の解消、滑り止め設置、誘導表示の設置
移動支援:誘導犬、音声ガイド、点字誘導路の設置
作業環境の調整:適切な照明、作業スペースの確保、補助器具の提供

参考ページ
厚生労働省 障害者雇用:
https://www.mhlw.go.jp/index.html
日本障害者リハビリテーション協会:
https://www.jsrpd.jp/

3. 職務遂行における困難
業務内容によっては、視覚による情報収集が不可欠なものがある
細かい作業や危険を伴う作業への不安
周囲との協働における困難
取り組み
業務内容の調整:視覚に頼らない代替手段の検討、作業分担の工夫
職務遂行のための支援:補助器具の提供、ジョブコーチによる指導、職場内研修の実施
協働体制の構築:職場の理解促進、コミュニケーションツールの活用、チームワーク強化

参考ページ
独立行政法人 雇用・能力開発機構:
https://www.jeed.go.jp/
一般社団法人 視覚障害者雇用促進センター:
https://jeap.or.jp/
4.2.2 視覚障害者の職場適応を支援する制度・サービス
視覚障害者の職場適応を支援するために、様々な制度やサービスが用意されています。以下に主な制度・サービスを紹介します。

1. 障害者雇用促進法
企業に対し、一定数の障害者を雇用することを義務化
視覚障害者を含む障害者雇用の促進

2. 障害者総合支援法
視覚障害者に対する就労支援サービスの提供 職業訓練、就労相談、ジョブコーチ支援など

3. 雇用保険制度
視覚障害者を含む障害者が失業した場合の給付金支給
再就職支援サービスの提供

4. 各種助成金制度
障害者雇用の促進を目的とした助成金
職場環境のバリアフリー化、ジョブコーチ支援などに活用可能

5. 視覚障害者支援団体
視覚障害者の就労支援に関する情報提供
個別相談、職場とのコーディネートなど

参考ページ
厚生労働省 障害者雇用:
https://www.mhlw.go.jp/index.html
独立行政法人 雇用・能力開発機構:
https://www.jeed.go.jp/
一般社団法人 視覚障害者雇用促進センター:
https://jeap.or.jp/

4.2.3 情報収集と共有
視覚障害者が職場で円滑に業務を遂行するためには、必要な情報を適切なタイミングで入手することが重要です。情報収集と共有の方法は、職種や職場環境によって様々ですが、以下のような方法が考えられます。

1. 情報提供
文書情報:
点字資料、拡大表示資料、音声読み上げ資料などの作成・提供
情報伝達手段の選択:点字、拡大表示、音声読み上げなど、視覚障害者のニーズに合わせた方法を選択
資料の形式:紙媒体だけでなく、電子ファイル形式での提供も検討
非文書情報:
写真や図表などの非文書情報は、音声説明や点字資料などで補足説明を提供
映像資料の場合は、音声解説付きのものを使用
会議や研修:
会議資料や研修資料を事前に点字資料、拡大表示資料、音声読み上げ資料などで提供
必要に応じて、要約筆記者や通訳の配置
オンライン会議の場合は、字幕機能や音声認識機能を活用

2. 情報共有
情報共有システム:
社内ポータルやグループウェアなどの情報共有システムを、視覚障害者も利用しやすいように設定
情報検索機能や音声読み上げ機能などを活用
コミュニケーション:
同僚とのコミュニケーションを円滑にするために、定期的な情報共有の場を設ける
ミーティングや雑談など、様々な場面で積極的にコミュニケーションを取る
メンター制度:
経験豊富な先輩社員が、視覚障害者の職場適応をサポートするメンター制度を導入

参考情報
視覚障害者雇用促進マニュアル:
https://www.jeed.go.jp/
障害者雇用情報提供サイト「e-tenぽーと」: https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha02/sikaku-checklist.html
視覚障害者向けの就労支援サービス:
視覚障害者総合支援センター:
https://www.mhlw.go.jp/index.html
特定障害者職業訓練校:
https://www.mhlw.go.jp/index.html
情報更新時期
2024年5月

補足
情報収集と共有は、視覚障害者が職場で活躍するために欠かせません。企業は、視覚障害者のニーズに合わせた情報提供と共有システムを整備し、積極的にコミュニケーションを取ることで、視覚障害者が働きやすい職場環境を作ることが重要です。

4.3 視覚障害者の成功事例
視覚障害者が社会で活躍する事例は数多くあります。ここでは、近年特に注目を集めている事例をいくつか紹介します。
1. 情報技術の発展による移動支援
詳細:
Googleマップの音声ガイド機能: Googleマップには、視覚障害者向けの詳細な音声ガイド機能が搭載されています。この機能により、視覚障害者は目的地までのルート案内を音声で受けることができ、自信を持って外出できるようになりました。
音声読み上げソフト: 音声読み上げソフトは、パソコンやスマートフォン画面上の文字を音声に変換して読み上げるソフトです。視覚障害者はこのソフトを使って、文書を読んだり、インターネットを利用したりすることができます。
スマートスピーカー: スマートスピーカーは、音声で操作できるスピーカーです。視覚障害者はスマートスピーカーを使って、音楽を聴いたり、ニュースを確認したり、家電製品を操作したりすることができます。

参考情報:
Googleマップの音声ガイド機能: 
https://support.google.com/maps/answer/6396990?hl=en&co=GENIE.Platform%3DDesktop
音声読み上げソフト:  https://support.microsoft.com/en-gb/topic/download-languages-and-voices-for-immersive-reader-read-mode-and-read-aloud-4c83a8d8-7486-42f7-8e46-2b0fdf753130
スマートスピーカー: 
https://www.amazon.co.jp/%E3%81%AF%E3%81%98%E3%82%81%E3%81%A6%E3%81%AEAmazon-Echo-%E3%82%B9%E3%83%9E%E3%83%BC%E3%83%88%E3%82%B9%E3%83%94%E3%83%BC%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%92%E4%BD%BF%E3%81%84%E3%81%93%E3%81%AA%E3%81%9D%E3%81%86-%E3%83%8B%E3%83%A5%E3%83%BC%E3%82%B9%E3%80%81%E9%9F%B3%E6%A5%BD%E3%80%81%E5%AE%B6%E9%9B%BB%E6%93%8D%E4%BD%9C%E3%81%8B%E3%82%89%E3%82%82%E3%81%A3%E3%81%A8%E4%BE%BF%E5%88%A9%E3%81%AA%E4%BD%BF%E3%81%84%E6%96%B9%E3%81%BE%E3%81%A7-%E3%82%B1%E3%82%A4%E3%82%BA%E3%83%97%E3%83%AD%E3%83%80%E3%82%AF%E3%82%B7%E3%83%A7%E3%83%B3/dp/4774195642
2. 専門的な訓練による自立支援
詳細:
福岡視覚障がい者支援センター: 福岡視覚障がい者支援センターでは、「歩行訓練士」による専門的な訓練を行っています。この訓練では、視覚障害者は白杖の使い方や公共交通機関の利用方法を学び、自立した移動が可能になります。
視覚障害者向けの職業訓練: 視覚障害者向けの職業訓練では、視覚障害者が就職に必要なスキルを学ぶことができます。訓練内容は、事務処理、パソコン操作、電話応対など、様々な職種に対応しています。

参考情報:
福岡視覚障がい者支援センター:  http://www.rehab.go.jp/fukuoka/
視覚障害者向けの職業訓練: 
https://www.mhlw.go.jp/index.html
3. 補装具と日常生活用具の進化
詳細:
音声はかり: 音声はかりは、測定結果を音声で読み上げるはかりです。視覚障害者はこのはかりを使って、料理や掃除など、日常生活の様々な場面で役立てることができます。
点字表記付きの電磁調理器: 点字表記付きの電磁調理器は、操作パネルに点字が刻印されている電磁調理器です。視覚障害者はこの電磁調理器を使って、安全に料理をすることができます。
点字表示付きのスマートフォン: 点字表示付きのスマートフォンは、画面に点字で文字を表示するスマートフォンです。視覚障害者はこのスマートフォンを使って、メールやSNSを利用したり、インターネットを利用したりすることができます。

参考情報:
音声はかり: 
https://olaris.jp/
点字表記付きの電磁調理器: 
https://na.industrial.panasonic.com/products/electronic-materials/ic-packaging-materials/lineup/lexcm-gx-substrates
点字表示付きのスマートフォン: 
https://www.docomo.ne.jp/
4. ジョブコーチによる職場適応支援
詳細:
ジョブコーチ: ジョブコーチは、視覚障害者が職場に適応し、円滑に働けるようにするための支援者です。ジョブコーチは、視覚障害者の特性に応じた職務設定や作業指導を行い、職場内での人間関係を円滑にするためのサポートを提供します。
合理的配慮: 合理的配慮とは、障害者などが社会生活を送る上で不当な差別を受けないようにするために必要な配慮を指します。具体的には、職場における補助器具の導入、勤務時間や休憩時間の調整、職務内容の変更などが含まれます。

参考情報:
ジョブコーチ: 
https://www.mhlw.go.jp/index.html
合理的配慮: 
https://www.mhlw.go.jp/tenji/dl/file13-04.pdf

5. 視覚障害者のスポーツ
5.1 視覚障害者が楽しめるスポーツ 視覚障害者が楽しめるスポーツは多岐にわたります。以下、具体的なスポーツとその特徴を紹介します。

ゴールボール

ゴールボールは視覚障害者専用のチームスポーツで、全員がアイマスクを着用し、鈴の入ったボールを相手のゴールに投げ入れる競技です。バレーボールコートと同じ大きさのコートで行われ、聴覚を頼りにプレーします。

視覚障害者5人制サッカー

視覚障害者5人制サッカー(ブラインドサッカー)は、アイマスクを装着した選手がプレーし、コーラーと呼ばれるコーチが指示を出します。ゴールキーパーは視覚のある人が務めます。視覚障害者が音を頼りにボールを扱い、戦略的にゴールを目指します。

ブラインドマラソン

ブラインドマラソンでは、視覚障害者が伴走者とロープでつながり、音声で指示を受けながら走ります。伴走者のサポートにより、視覚障害者でも長距離を安全に走ることができます。

水泳

水泳は視覚障害者に人気のスポーツで、壁に近づくときにタップすることで安全を確保します。競技だけでなく、リハビリテーションや体力づくりとしても広く行われています。

柔道

視覚障害者の柔道は、選手が互いに組んだ状態で試合を開始し、途中で離れた場合は審判が試合を一時停止します。これにより、視覚障害者でも安全に柔道を楽しむことができます。

その他のスポーツ

他にも、ローイング(ボート)、トライアスロン、セーリング、スキー、登山、クライミングなど、視覚障害者が楽しめるスポーツは多岐にわたります。これらのスポーツでは、ガイドのサポートや音声ガイドを利用することで、視覚障害者が安全に参加できるよう工夫されています。
スポーツを楽しむために
視覚障害者がスポーツを楽しむためには、安全性を確保するための環境整備や、適切な声かけが重要です。また、スポーツに参加することで、体力の向上や社会との関わりを持つ機会が増え、人生の質を高めることができます。
参考情報
https://www.sports-tokyo-info.metro.tokyo.lg.jp/
https://www.aisuru-sports.jp/ https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%AA%E3%83%B3%E3%83%94%E3%83%83%E3%82%AF%E7%AB%B6%E6%8A%80
情報更新時期:2024年5月25日
情報内容:
上記の参考情報は、2024年5月25日時点の最新情報です。
視覚障害者が楽しめるスポーツは、上記以外にも多数存在します。
各スポーツの詳細については、各競技団体や関係機関にお問い合わせください。

5.2 パラリンピックと競技の紹介
パラリンピックは、障害者スポーツの最高峰の大会であり、視覚障害者を含む様々な障がいを持つ選手たちが競い合う場です。ここでは、視覚障害者が参加する代表的な競技とその魅力をご紹介します。

1. ブラインドサッカー

ブラインドサッカーは、5人制サッカーをベースとした競技で、選手はアイマスクを着用し、音の出るボールを使用します。フィールド上の選手は全員視覚障害者で構成され、ゴールキーパーのみ視覚に障害がない選手が務めます。試合中は、ゴール裏のガイドから指示を受け、選手たちは声に従ってボールをコントロールし、ゴールを目指します。

2. ゴールボール

ゴールボールは、視覚障害者専用の3人制チームスポーツです。選手は全員アイマスクを着用し、鈴の入ったボールを相手ゴールに投げ入れる競技です。ボールの音を頼りにするため、聴覚が非常に重要となります。試合はバレーボールコートと同じ広さのコートで行われ、ダイナミックな攻防が繰り広げられます。

3. 視覚障害者柔道

視覚障害者柔道は、通常の柔道と同じルールで行われますが、試合開始時に選手同士が組み合った状態から始まります。これにより、視覚に頼らずに試合を進行することができます。組み合いにおける力強さや、一瞬の隙を突いた投げ技など、技術と力のぶつかり合いが醍醐味です。

4. 陸上競技

視覚障害者向けの陸上競技には、100m、200m、400m、800m、1500mなどのトラック種目や、走り幅跳び、三段跳びなどのフィールド種目があります。伴走者が選手の横に付き、声や手触りなどで方向や距離を伝えながら伴走することで、視覚障害者が安全かつ正確に競技を行うことができます。

5. 水泳
 視覚障害者の水泳競技では、ターンや壁への接触を知らせるために、壁際で「タッピング」と呼ばれる合図が行われます。選手はコーチや伴走者の声や触覚を頼りに泳ぎ、ターンやゴールを正確に行います。近年では、オープンウォータースイミングやシンクロナイズドスイミングなど、様々な種目における競技人口も増えています。

6. トライアスロン

トライアスロンは、スイム、バイク、ランの3種目を連続して行う過酷な競技です。視覚障害者トライアスロンでは、スイムでは伴走者がロープで誘導し、バイクとランでは伴走者が横に付き、声や手触りなどで指示を行います。高い体力と集中力、そしてチームワークが求められる競技です。

7. その他

上記以外にも、サイクリング、テニス、射撃、スキーなど、様々な競技で視覚障害者向けの大会が開催されています。近年は、パラリンピック競技以外にも、健常者と一緒に楽しめるスポーツイベントも増えています。

参考情報
アイスマイルプロジェクト:
https://www.i-smile.fi/
日本視覚障害者スポーツ協会:
https://www.parasports.or.jp/
国際盲人スポーツ連盟:
https://www.ibsf.org/
パラリンピック競技:
https://www.paralympic.org/
情報更新時期
2024年5月25日

5.3 スポーツを通じて社会参加へ

視覚障害者がスポーツに参加することで得られる効果
視覚障害者がスポーツに参加することは、身体的な健康だけでなく、心理的な安定や社会的なつながりを得るための重要な手段となります。以下、スポーツ参加による具体的な効果と、それぞれの詳細情報を紹介します。

1. 身体的な健康増進
運動機能の向上:
定期的な運動は、筋力や体力向上、心肺機能の強化など、様々な身体機能の向上に効果があります。
特に、視覚障害者向けのスポーツは、音の出るボールの使用やガイドランナーのサポートなどにより、安全かつ効果的に運動することができます。
健康的な体づくり:
運動不足による肥満や生活習慣病のリスクを軽減し、健康的な体づくりをサポートします。
スポーツ参加は、規則正しい生活習慣の促進にもつながります。
日常生活への体力向上: スポーツで培った体力は、階段の上り下りや荷物運びなど、日常生活における様々な動作をスムーズに行うための体力向上にも役立ちます。

2. 心理的な安定
ストレス解消:
運動によるエンドルフィンの分泌は、ストレス解消や心身の安定に効果があります。
スポーツを通して目標を達成することで、達成感や自信を得ることができます。
自己肯定感の向上:
自分の能力を発揮し、周囲から認められることで、自己肯定感を高めることができます。
障害を克服しようとする意欲や、困難を乗り越える力も養われます。
精神的な安定:
スポーツによる適度な運動は、不安や抑うつ症状の改善にも効果があります。
心身ともにリラックスできる環境で、仲間と交流することで、精神的な安定を図ることができます。

3. 社会的なつながり
仲間との交流:
同じスポーツを楽しむ仲間との交流を通じて、社会的な孤立を防ぎ、充実した人間関係を築くことができます。
共通の趣味を持つ仲間との交流は、互いの理解を深め、支え合える関係を築くことができます。
地域社会への参加:
地域のスポーツイベントや大会に参加することで、地域住民との交流を深め、地域社会の一員としての役割を果たすことができます。
地域の活性化にも貢献することができます。
社会全体の理解促進:
視覚障害者がスポーツで活躍する姿は、社会全体に視覚障害者への理解と認識を広めるのに役立ちます。
バリアフリー意識の向上にもつながります。

スポーツの種類と参加方法

視覚障害者が参加できるスポーツは多岐にわたります。以下に、代表的なスポーツと参加方法を紹介します。
ブラインドサッカー: 音の出るボールを使用し、選手同士が声で指示を出し合いながらプレーするサッカーです。
https://www.b-soccer.jp/
ゴールボール: 音の出るボールを転がし、ゴールネットに入れるスポーツです。
https://jgba.or.jp/
ブラインドテニス: 音の出るボールを使用し、ラケットで打ち合うテニスです。
https://jbtf.jpn.org/
パラリンピック競技: 上記以外にも、パラリンピック競技として様々なスポーツがあります。
https://www.paralympic.org/
その他: 上記以外にも、ジョギング、水泳、サイクリングなど、様々なスポーツを楽しむことができます。

伴走者やガイドランナーの役割

視覚障害者がマラソンやトライアスロンなどのスポーツに参加する際には、伴走者やガイドランナーが重要な役割を果たします。
伴走者:
視覚障害者と一緒に走りながら、安全に競技を続けることができるようサポートします。
コース状況や周囲の状況を伝えることで、視覚障害者が安心して競技に取り組むことができます。
ガイドランナー:
視覚障害者が安全かつ効率的に走るために、必要な情報を提供します。
前方の状況を伝えたり、ペース配分をサポートしたりします。

社会参加とコミュニティ形成

視覚障害者がスポーツに参加することで、他の参加者やサポーターとの交流が生まれます。
福岡視覚障がい者支援センター: リハビリ教室や外出イベントを通じて、視覚障害者が仲間と共に楽しむ機会を提供しています。

6. 視覚障害者とバリアフリー社会
6.1 社会におけるバリアフリーの現状
視覚障害者を含む障害者に対するバリアフリー対策は、近年大きく進展していますが、依然として課題も多く残されています。以下、現在のバリアフリー化の状況と課題について詳細に解説します。

1. 物理的バリアの除去

近年、公共交通機関や公共施設ではバリアフリー化が積極的に推進されています。
交通機関
鉄道駅やバスターミナルでは、段差の解消や視覚障害者誘導用ブロックの設置が全国的に進められ、多くの駅でエレベーターや音声案内システムが導入されています。
2021年には、視覚障害者誘導用ブロックの設置率が97.2%に達し、視覚障害者が安心して移動できる環境が整備されています【147】。
公共施設
建築物や道路のバリアフリー化も着実に進展しており、2002年から2011年までの間に、建築物のバリアフリー対象施設が26.1%から50.1%へと増加しました【146】。
都市公園や公共トイレのバリアフリー化も進められていますが、依然として課題が残っており、更なる改善が求められています。

2. 合理的配慮の提供
 2024年4月からは、企業や店舗に対して、障害者に対する合理的配慮の提供が義務化されました。これは、障害の有無にかかわらず誰もが対等にサービスを利用できるようにするための措置であり、具体的には以下のような配慮が求められます。
点字や手話通訳の提供
段差の解消
情報資料の点字化や音声化
介助犬の同伴許可
合理的配慮の義務化により、視覚障害者を含む障害者が、より多くのサービスを利用しやすくなることが期待されています。

3. 情報バリアの解消

物理的なバリアだけでなく、情報バリアの解消も重要課題です。
情報へのアクセス
視覚障害者が情報にアクセスできるように、音声案内システムや点字表示の普及が求められています。
インターネットサイトやアプリも、視覚障害者が使いやすいように設計する必要があります。
教育
視覚障害児が教育を受けられる環境も整備されていますが、教員の不足や教材の開発が追いついていないなどの課題があります。
視覚障害児が適切な教育を受けられるよう、さらなる支援が必要です。

4. 社会的・文化的バリアの解消

視覚障害者に対する偏見や差別をなくし、社会の一員として受け入れられる環境を構築することが重要です。
啓発活動
視覚障害に対する理解を深めるための啓発活動が積極的に行われています。
学校や地域住民向けの講演会やイベントなどが開催されています。
共生社会の実現
視覚障害者と健常者が互いに理解し合い、共に暮らせる共生社会の実現に向けて、様々な取り組みが進められています。
企業や団体によるバリアフリー化の取り組みや、ボランティア活動などが活発に行われています。

5. 今後の課題

バリアフリー社会の実現に向けては、更なる課題が残されています。
多様なニーズへの対応
高齢者や知的障害者など、様々なニーズに対応できるバリアフリー施策の強化が求められています。
地方のバリアフリー化
都市部と比べて地方のバリアフリー化が遅れているため、地方におけるバリアフリー化の推進が必要です。
日常生活支援体制の充実
視覚障害者が自立して生活できるようにするための日常生活支援体制の充実が求められています。
盲導犬訓練士や介護士などの専門人材の育成や、福祉サービスの拡充が必要です。

6. バリアフリー社会の実現に向けて
 近年、バリアフリー社会の実現に向けた取り組みが積極的に進められており、法制度の整備、公共施設や交通機関のバリアフリー化、情報アクセシビリティの向上などが推進されています。

法制度
障害者基本法:1995年施行。障害者の自立と社会参加の促進を基本理念とし、合理的配慮の義務などを規定。
障害者差別解消法:2013年施行。障害者に対する差別を禁止し、合理的配慮の提供を義務化。
視覚障害者等の読書環境の整備の推進に関する法律(読書バリアフリー法):2019年施行。視覚障害者等が読書できる環境の整備を推進。
公共施設・交通機関
点字ブロック、音声案内、段差解消スロープなどの設置が義務化。
公共交通機関のバリアフリー化が進み、多くの路線で車椅子用車両や音声案内が導入。
情報アクセシビリティ
情報通信の高度化に伴い、音声読み上げソフトや点字ディスプレイなどの情報アクセシビリティ技術が発展。
インターネット上の情報についても、アクセシビリティガイドラインに基づいた情報提供が進められている。

課題

一方で、バリアフリー社会の実現に向けては、多くの課題が残されています。
段差や障害物などの物理的なバリア
情報やサービスへのアクセスにおけるバリア
制度や仕組みにおけるバリア
偏見や差別意識によるバリア

参考情報
内閣府「障害者白書」(令和3年)
https://www8.cao.go.jp/shougai/whitepaper/index-w.html
厚生労働省「障害者総合支援法に基づく障害福祉サービス等の実施状況(令和2年度)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001076188.pdf
情報通信研究機構「情報バリアフリー白書(2022年度版)」
https://barrierfree.nict.go.jp/
情報取得時期
2024年5月時点の情報
補足
バリアフリー社会の実現は、視覚障害者だけでなく、高齢者や障がい者を含めたすべての人が安心して暮らせる社会づくりにつながります。今後も、政府、企業、社会全体の協力によって、バリアフリー化の取り組みを進めていくことが重要です。

6.2 障害者にやさしい街づくり 障害者にやさしい街づくりは、単に物理的なバリアを取り除くだけでなく、社会全体の意識と支援体制の整備が重要です。以下では、具体的な事例と取り組みを紹介します。

バリアフリー化の進展

近年、公共交通機関や建築物のバリアフリー化が著しく進展しています。
駅:エレベーターの設置、ホームドアの導入、視覚障害者誘導用ブロックの敷設などが進められています。
信号機:音響信号が導入され、視覚障害者が安心して横断できるようになっています。
公共施設:段差解消、多機能トイレの設置、滑り止め床材の使用などが進められています。
これらの取り組みは、視覚障害者の移動や生活をより安全で快適なものにするだけでなく、社会参加の機会を増やす効果も期待できます。

参考情報
内閣府「障害者基本計画2021~2025」
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kihonkeikaku.html
国土交通省「バリアフリー白書」
https://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/barrierfree/index.html

地域コミュニティの役割

地域における拠点となる施設の設置や、イベントの開催によって、視覚障害者が地域社会とつながる機会が増えています。
施設:点字図書館、視覚障害者支援センター、就労支援施設など
イベント:ブラインドワールドサポートDAY、ラン&ウォークイベントなど
これらの活動は、視覚障害者同士の交流を促進するだけでなく、地域住民との理解促進にもつながります。また、地域社会全体のバリアフリー意識を高める効果も期待できます。

参考情報
全国盲ろう者センター「地域活動事例集」
https://www.jdba.or.jp/news2/index.php/category/taikai
日本財団「地域共生社会の実現に向けて」
https://www.nippon-foundation.or.jp/

人にやさしい街づくり条例

自治体では、独自の条例を制定し、バリアフリー化の推進に取り組んでいます。
愛知県「人にやさしい街づくりの推進に関する条例」:建築物や公共施設のバリアフリー化、地域セミナーや出前講座の開催などを実施
東京都「東京都障害者差別解消法施行条例」:障害者に対する合理的配慮の提供を義務化 これらの条例は、地域の実情に合わせた具体的な取り組みを推進する上で重要な役割を果たします。

参考情報
総務省「全国の条例情報ナビ」
https://www.soumu.go.jp/
法務省「障害者差別解消法施行状況」
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html

合理的配慮の提供

合理的配慮とは、障害者が社会参加を阻害する障壁をできる限り取り除くための措置です。
具体的な事例:段差解消のためのスロープ設置、障害特性に応じた座席の配置、点字や手話通訳の提供
効果:視覚障害者が日常生活をより円滑に送ることができるようになる
合理的配慮の提供は、障害者差別解消法に基づき、すべての事業者や組織に義務付けられています。

参考情報
内閣府「障害者差別解消法」
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html
厚生労働省「合理的配慮ガイドライン」
https://www.mhlw.go.jp/index.html

課題と今後の展望

障害者にやさしい街づくりは、まだまだ課題も多く残されています。
点字ブロックの段差や破損
音声案内の分かりにくさ
介助犬の受け入れ体制の不備
障害者に対する偏見や差別
これらの課題を克服するためには、ハード面の整備だけでなく、ソフト面の充実も重要です。地域住民への理解促進、障害者への支援体制の強化、バリアフリーに関する情報発信など、多角的な取り組みが必要です。
今後も、誰もが安心して暮らせる街づくりを目指して、さまざまな取り組みが進められることが期待されます。

6.3 テクノロジーの進化:視覚障害者の自立と社会参加を促進

視覚障害者の生活を支えるテクノロジーは、日々目覚ましい進化を遂げており、彼らの自立と社会参加を大きく促進しています。以下では、AI、ナビゲーションシステム、拡張現実・仮想現実、スマートデバイスといった主要な技術と、それぞれの役割について詳しく紹介します。

AIと音声技術:情報アクセスとコミュニケーションの円滑化
音声読み上げソフトと点字ディスプレイ:視覚障害者にとって、日常生活で必要な情報にアクセスするための重要なツールです。 AI音声読み上げ技術の進化:近年では、AI技術を活用した音声読み上げソフトが開発されており、より自然で滑らかな音声で情報を提供することが可能になっています。これにより、視覚障害者はよりスムーズにコミュニケーションを取ることができ、情報収集や学習の効率化にもつながります。
AI搭載デバイスによる多機能サポート:AI搭載デバイスは、文字の読み上げや顔の認識、商品の識別など、視覚障害者の自立をサポートする様々な機能を備えています。代表的な例としては、音声ガイダンスで周囲の状況を知らせるスマートグラス「OrCam MyEye 2」や、音声で指示を出すスマートウォッチ「Apple Watch」などが挙げられます。

ナビゲーションシステム:安全で快適な移動を支援
スマートフォンGPSと専用アプリ:スマートフォンに搭載されたGPS機能や、視覚障害者向けの専用アプリを活用することで、音声ガイダンスを受けながら目的地までのルートを案内することができます。
歩行支援デバイス:「Ashirase」や「AIスーツケース」などのデバイスは、歩行中の障害物を避けるための振動ガイドや音声ガイドを提供し、安全な移動をサポートします。特に、AIスーツケースは周囲の環境を認識し、自動的に方向転換や停止を行う機能も備えています。

拡張現実(AR)と仮想現実(VR):擬似的な視覚体験と開発者支援
擬似的な視覚体験:ARやVR技術は、視覚障害者が擬似的に視覚を体験する手段として利用されています。例えば、ARグラスを装着することで、周囲の環境を音声で説明したり、仮想空間で疑似的な視覚体験をすることができます。
開発者・支援者への理解促進:ARやVR技術は、開発者や支援者が視覚障害者の見ている世界を体験できるようにすることで、より効果的な支援ツールの開発や、視覚障害者への理解促進に役立てることができます。

スマートデバイス:日常生活をサポートする多機能ツール
スマートグラス・メガネ型デバイス:スマートグラスやメガネ型デバイスは、視覚情報を音声に変換して提供することで、視覚障害者の日常生活をサポートします。
代表的なデバイス:「OrCam MyEye 2」や「エンビジョングラスリーダー」は、視覚情報を音声で伝え、文字の読み上げや顔の認識を行います。また、「Google Glass」のように、音声コマンドで様々な操作を行うことができるデバイスも開発されています。
スマートフォンとの連携:スマートフォンと連動して、音声ガイドや振動による通知を行うデバイスも開発されています。例えば、音声アシスタント機能を活用することで、天気情報やニュース情報などを取得したり、スケジュール管理を行うことができます。
これらのテクノロジーの進歩による恩恵
AI、ナビゲーションシステム、AR・VR、スマートデバイスといったテクノロジーの進歩により、視覚障害者は以下のような恩恵を受けることができます。
情報へのアクセス向上:音声読み上げソフトや点字ディスプレイ、AI搭載デバイスなどにより、視覚障害者は必要な情報に容易にアクセスすることができます。
コミュニケーション能力の向上:AI音声読み上げ技術やスマートグラスなどのデバイスにより、視覚障害者はよりスムーズにコミュニケーションを取ることができます。
安全で快適な移動:ナビゲーションシステムや歩行支援デバイスにより、視覚障害者は安全で快適に移動することができます。
日常生活の自立支援:スマートデバイスやAI搭載デバイスにより、視覚障害者は日常生活における様々なタスクを自立して行うことができます。
社会参加の促進:これらのテクノロジーは、視覚障害者の社会参加を促進し、よりインクルーシブな社会の実現に貢献することができます。

情報収集と参考資料

上記で紹介したテクノロジーの詳細や最新情報については、以下の参考資料を参照してください。
総務省 情報通信白書 令和4年版:
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/wp_eng.html
厚生労働省 視覚障害者情報提供システム「あいうち」:
https://www.mhlw.go.jp/index.html
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA) バリアフリー情報通信社会実現に向けた取組:
https://www.ipa.go.jp/
一般社団法人 テクノロジーと社会の融合推進機構(J-STAR) 視覚障害者支援:
http://academicstar.us/journalsshow.asp?ArtID=365

各参考資料の内容と特徴
総務省 情報通信白書 令和4年版:情報通信技術の進展状況や課題、今後の展望などを総合的にまとめた資料です。視覚障害者支援に関わる最新技術や政策動向についても詳しく紹介されています。2024年版は7月に発行予定です。
厚生労働省 視覚障害者情報提供システム「あいうち」:視覚障害者向けの情報提供システムで、日常生活に必要な情報や各種制度に関する情報などを閲覧することができます。視覚障害者支援に関わる各種イベントやセミナーの情報も掲載されています。情報は随時更新されています。
独立行政法人 情報処理推進機構(IPA) バリアフリー情報通信社会実現に向けた取組:IPAが推進するバリアフリー情報通信社会実現に向けた取り組みを紹介しています。視覚障害者支援に関わる技術開発や普及啓発活動、各種ガイドラインや基準策定などの情報が掲載されています。2024年5月現在、最新の情報が掲載されています。
一般社団法人 テクノロジーと社会の融合推進機構(J-STAR) 視覚障害者支援:J-STARが推進する視覚障害者支援事業を紹介しています。視覚障害者向けの情報アクセシビリティ向上や、自立生活支援、社会参加促進のための様々な取り組みが紹介されています。2024年5月現在、最新の情報が掲載されています。
上記以外にも、視覚障害者支援に関わる情報は様々な機関や団体から発信されています。最新の情報を入手するためには、複数の情報源を活用することが重要です。

参考情報
視覚障害者団体一覧:
http://journal.dcs.or.kr/xml/23199/23199.pdf
バリアフリー情報通信社会実現に向けたガイドライン:
https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/h28/html/nc269250.html

7. 視覚障害者への差別と偏見

7.1 差別の歴史と現状

視覚障害者への差別は、長い歴史を持ち、その影響は現代社会にも残っています。以下、視覚障害者に対する差別の歴史と現状、そして課題について詳しく説明します。
1. 歴史的背景 日本における視覚障害者への差別は、古くから存在していました。特に江戸時代には、視覚障害者は職業選択の自由が制限され、社会的な地位も低く見られていました。視覚障害者は多くの場合、鍼灸師や按摩師などの職業に限定されていました。
2. 旧優生保護法の影響
1948年から1996年まで施行されていた旧優生保護法は、障害者に対して強制的な不妊手術を行うことを可能にし、視覚障害者もその対象となりました。この法律は人権侵害として批判され、現在は廃止されていますが、その影響は未だに残っています。
3. 現代の状況
現代においても、視覚障害者は日常生活や職場で様々な差別や偏見に直面しています。
3.1 就職差別
就職活動においては、視覚障害を理由に採用を拒否されるケースがあります。
職場での昇進が難しいといった問題も報告されています。
3.2 公共施設での差別
公共交通機関でのサポート不足
公共施設での情報提供不足
盲導犬の同伴拒否
3.3 その他
視覚障害者に対する偏見や誤解に基づく発言や行動
情報格差
4. 法的な保護と支援
現在、日本では障害者差別解消法が施行されており、障害を理由とする差別を禁止しています。この法律に基づき、合理的配慮の提供が義務付けられており、視覚障害者が平等に社会参加できる環境整備が進められています。

参考情報:
障害者差別解消法:
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sabetsu_kaisho/index.html
合理的配慮:
https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-11600000-Shokugyouanteikyoku/0000083347.pdf
5. 課題と今後の取り組み
法的な保護制度は整備されていますが、実際の運用面ではまだ課題が多く、社会全体の理解と協力が求められています。
課題:
合理的配慮の理解不足
差別や偏見の根強い存在
情報格差

今後の取り組み:
教育や啓発活動を通じて、差別や偏見をなくす
インクルーシブな社会を目指す
合理的配慮の提供体制の整備
視覚障害者に対する理解を深めるための情報発信 差別の歴史と現状を理解し、視覚障害者が社会で公平に扱われるための取り組みを継続することが重要です。

参考情報:
視覚障害者に対する差別に関する調査:
https://www.mhlw.go.jp/content/001238948.pdf
視覚障害者向けの情報提供サイト:
https://jb-news.jp/
情報更新時期: 2024年5月25日

説明:

本情報は、2024年5月25日時点での最新情報に基づいています。視覚障害者への差別に関する法制度や社会状況は、日々変化していますので、最新の情報を確認することをお勧めします。

7.2 偏見をなくすための取り組み

視覚障害者への理解と共感を深め、偏見をなくすためには、教育や啓発活動、法的措置、社会運動、メディアの活用など、様々な取り組みが重要です。
教育と啓発活動
現状
視覚障害者に対する理解を深めるためのプログラムが導入されている。
アイマスク体験
視覚障害に関する講演会
子供たちは視覚障害について正しい知識を持ち、偏見をなくすための意識を高めることができる。
課題
すべての教育現場にプログラムが導入されているわけではない。
教員の知識や経験不足による効果的な指導ができていない場合がある。
今後の展望
プログラムの充実と教員の研修強化
オンライン教材や動画などの活用による学習機会の拡大
多様な視覚障害者を取り上げた教材開発
法的措置
現状
障害者差別解消法が施行されており、公共施設や企業に対して合理的配慮を義務付けている。
視覚障害者が公共のサービスや施設を利用する際に、必要なサポートを受けられる環境が整えられている。
視覚障害者に対する差別行為を未然に防ぐための監視体制も強化されている。
課題
法律の認知度が低い。
差別行為の立証が難しい。
合理的配慮の範囲をめぐるトラブルが発生することがある。
今後の展望
法律の周知徹底
差別行為の立証を容易にするための制度整備
合理的配慮のガイドライン策定
社会運動とNGOの活動
現状
反差別国際運動(IMADR)などのNGOが、視覚障害者を含むマイノリティの権利を守るために活動している。
視覚障害者の声を社会に届けるとともに、政策提言を行い、法制度の改善を目指している。
啓発キャンペーンやイベントを通じて、視覚障害者に対する理解と共感を広める努力を続けている。 課題
活動資金不足
人材不足
社会的な影響力不足
今後の展望
資金調達活動の強化
ボランティアの募集
他のNGOや市民団体との連携
メディアの活用
現状
テレビやインターネットを通じたドキュメンタリー番組や、視覚障害者をテーマにした映画・ドラマの制作も、偏見をなくすための重要な手段である。
視覚障害者のリアルな生活を描き、一般の人々に視覚障害に対する理解を深める機会を提供している。
課題
視覚障害者をステレオタイプ的に描いている作品が多い。
視覚障害者自身が制作に携わっていない作品が多い。
今後の展望
視覚障害者自身が制作に携わる作品の増加
多様な視覚障害を題材にした作品制作
メディアリテラシー教育の推進
今後の課題と展望
視覚障害者への理解と共感を深め、偏見をなくすためには、教育や啓発活動、法的措置、社会運動、メディアの活用など、様々な取り組みが重要です。これらの取り組みは、相互に連携しながら進めていく必要があります。
今後は、以下の点に重点を置いて取り組むことが重要です。
教育現場におけるプログラムの充実と教員の研修強化
合理的配慮のガイドライン策定
NGOの活動支援
視覚障害者自身が制作に携わる作品の増加
メディアリテラシー教育の推進
これらの取り組みを通じて、視覚障害者が社会の一員として尊重され、活躍できる環境を整備していくことが重要です。

参考情報
視覚障害者に対する理解を深めるための教材開発事業 
https://www.asahi.com/sdgs/article/14858728
障害者差別解消法
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sabetsu_kaisho/index.html
反差別国際運動(IMADR) 
https://imadr.org/

7.3 教育と啓発の重要性
視覚障害者を取り巻く現状
視覚障害者は、社会の一員として活躍する能力と意欲を持っています。しかし、依然として偏見や差別を受け、社会参加の機会が制限されているのが現状です。
教育と啓発の重要性 視覚障害者に対する偏見や差別をなくすためには、教育と啓発が不可欠です。教育を通じて正しい知識を共有し、啓発活動を通じて理解を深めることで、視覚障害者と共生できる社会の実現を目指します。
教育の役割
特別支援教育の推進
障害のある子どもたちが適切な教育を受けられる環境を整備するため、特別支援教育が推進されています。文部科学省は、特別支援学校だけでなく、一般の小・中学校でも視覚障害者を含む障害者に対する理解を深めるためのカリキュラムを導入しています。
視覚障害に関する正しい知識の普及
教育現場では、視覚障害に関する正しい知識を広めることが重要です。視覚障害の種類や原因、生活における困難などを理解することで、視覚障害者への偏見や差別をなくすことができます。
視覚障害者自身の経験の共有
視覚障害者自身の経験を共有することで、視覚障害者の生活や困難をより深く理解することができます。体験学習や講演会などを企画し、視覚障害者との交流機会を増やすことが重要です。

参考情報:
文部科学省 特別支援教育ポータルサイト: 
https://www.mext.go.jp/
国立特別支援教育総合研究所: 
https://www.nise.go.jp/
啓発活動
視覚障害者の生活や困難を体験するワークショップや講演会
アイマスクを使った体験学習は、視覚障害者の視点から物事を理解する機会を提供します。視覚障害者と交流できるイベントや、視覚障害者の生活を題材とした映画の上映会なども効果的です。
メディアを通じた情報発信
テレビやラジオ、新聞、雑誌などのメディアを通じて、視覚障害に関する正しい情報を発信することができます。視覚障害者の活躍を紹介したり、視覚障害者に対する偏見や差別をなくすためのキャンペーンを実施したりすることも有効です。

参考情報:
NHK みんなのニュース: 
https://www2.nhk.or.jp/school/watch/bangumi/?das_id=D0005170806_00000
読売新聞: 
https://www.asahi.com/topics/word/%E8%A6%96%E8%A6%9A%E9%9A%9C%E5%AE%B3%E8%80%85.html
厚生労働省 視覚障害:  https://www.mhlw.go.jp/bunya/koyou/shougaisha/06b.html
法律と政策の支援
障害者差別解消法
日本では、障害者差別解消法が施行されており、障害を理由とする差別を禁止しています。この法律に基づき、合理的配慮の提供が義務付けられており、視覚障害者が教育や職場で平等に扱われるための措置が講じられています。
合理的配慮の例
試験問題を点字や音声で提供する
白杖や介助犬の使用を認める
情報を音声で提供する
手話通訳や要約筆記者を配置する

参考情報:
内閣府 障害者差別解消法: 
https://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/sabekai.html
厚生労働省 障害者差別解消法施行ガイドライン: 
https://www.mhlw.go.jp/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/shougaishahukushi/sabetsu_kaisho/index.html
SDGsの目標達成に向けた取り組み
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」
SDGs目標4「質の高い教育をみんなに」は、すべての人が平等に教育を受けることを目指しています。視覚障害者を含むすべての障害者が質の高い教育を受けることで、社会全体の格差解消につながります。

参考情報:
国連持続可能な開発目標(SDGs):
https://www.unic.or.jp/activities/economic_social_development/sustainable_development/sustainable_development_goals/
まとめ
視覚障害者に対する偏見や差別をなくし、彼らが社会の一員として活躍できる環境を整えるためには、教育と啓発活動が不可欠です。教育現場での正しい知識の普及、視覚障害者の経験の共有、メディアを通じた情報発信、法律や政策による支援など、さまざまな取り組みが必要です。これらの取り組みを通じて、視覚障害者と共生できる社会を実現しましょう。
5: 「目の見えない世界を理解する:視覚障害者の日常と挑戦(3)」に続く