ネットワークの始まり
私たちの体の中に存在する数十兆個もの細胞たちは、お互いに連絡を取り合っています。
そして、これらの小さなネットワークがお互いに連携を取り、体の外からやって来た刺激に対して、何かしらの反応を起こすのです。
刺激の例としては、温度や圧力、熱など様々なものがありますよ。
では、ここからが肝心ですが、この細胞どうしの連絡は、いかにして行われているのでしょうか?
これに関しては、まず最初に紹介しておくべきものが2つあります。
それが、シグナルと受容体です。
これらに注目しながら、体の中で行われているダイナミックな細胞どうしの連携について見ていきましょう。
まず、シグナルというは、それぞれの細胞に情報を伝えてくれる存在です。
私たちが普段している会話を例に取ると分かりやすいですが、会話では、誰かが声を発し、それが音波として伝わり、相手の耳に届くというものですよね。
これと同じで、生物の体の中で行われる情報伝達も、ある細胞が情報を発し、体の中を移動し、標的とする細胞に情報が届きます。
そして、この細胞に届く情報というのがシグナルであり、情報を受け取るのが受容体なのです。
情報の伝わり方
私たちの社会において、情報の伝わり方は非常に様々です。
隣の家の人との軽い世間話で情報が伝わったり、電話やライン、Twitterを通して世界中の人と連絡を取ったり、もしくは、自分で書いたメモで、自分に対して情報を伝えることもあります。
そして、実は生物の体の中での情報の伝わり方も様々で、長距離を情報が移動したり、お隣の細胞に情報を伝えたり、先ほどのメモのように、自分自身に情報を伝える細胞もいます。
ここでは、細胞が行なっている情報の伝わり方について、いくつかご紹介したいと思っています。
それではさっそく一つ目から。
一つ目は、おそらく最も聞き馴染みのあるもので、ホルモンを使った方法です。
あ、もちろん食べる方のホルモンじゃありません。笑
このホルモンは、情報を発信する側の細胞から分泌されると、動物であれば、血液中を移動して標的の細胞のところまで移動します。
「動物であれば」と強調したのは、植物にもホルモンがあるからです。
植物が持つホルモンは植物ホルモンと言われ、同じく情報の伝達に使われています。
さて、それでは2つ目にいってみましょう。
2つ目の情報の伝え方は、パラクリン型と呼ばれるものです。
パラクリンとは傍分泌を意味しており、ホルモンを使った情報伝達よりも、情報を伝えられる範囲は狭いんです。
その言葉の通り、傍にある細胞に情報を発信(分泌)しています。
傍にある細胞に情報を伝える場合は、ホルモンや血管は利用せず、細胞と細胞の間の体液中を移動して、シグナルが伝わって行くのです。
そして、このパラクラン型の一形態として、オートクリン型と呼ばれる方法もあります。
オートクランは、日本語にすると自己分泌という意味で、その名の通り自分で発した情報を自分で受け取ります。
がん細胞が異常な増殖を見せるのは、この方法を使って、自分自身に「増殖しろ!」と命令を出し続けているからなんですね。
さぁ、それでは3つ目の方法です。
その方法は、神経伝達物質と呼ばれる化学物質を使ったもので、神経型と呼ばれています。
アセチルコリンやアドレナリン、GABAなどが有名な神経伝達物質でしょうか。
この方法では、最初は情報が神経細胞の中を電気シグナルの形で伝わっていくのですが、神経細胞から伸びている軸索の末端までいくと、電気シグナルが、化学シグナルである神経伝達物質に変換されます。
そして、この神経伝達物質が隣の細胞へと移動していき、情報が伝わっていくというわけです。
最後に、4つ目の方法をご紹介して終わりたいと思うんですが、この方法は最も単純で、最も直接的なやり方です。
その方法とは、接触型です。
これは、情報を発信する側の細胞が、細胞の表面にシグナルをくっつけておき、標的となる細胞の受容体に直接接触させるんです。
今回は、シグナルの伝わり方について簡単にまとめましたが、次回は「シグナルの種類」に焦点を当ててお話します。