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みなさんこんにちは、健太です。

今回は、「深海の環境」についてお話します。

また、このシリーズの第一弾はこちらからご覧ください。

*参考文献は最後にまとめて記載してあります。






[深海の環境 Ⅰ ]目次

1.海洋環境と陸上環境の違い

 -浮力

 -水

 -光


2.海の地形を知る Ⅰ

 -水柱環境と底生環境

 -沿岸域と外洋域


3.参考文献



1.海洋環境と陸上環境の違い



海と陸は、見るからに全く異なる環境ですが、その違いは、そこに暮らす生物にどのような影響を与えているのでしょうか?



まずは、海と陸の環境の違いについて知り、その後、生物に与える影響を考えていきます。



浮力



地球で暮らしていると、どうしても避けることの出来ない影響に重力があります。



私たちは常に、この重力に引っ張られ、果てには大気の重圧を背負いながら生活しているのです。



ただ、重力の影響という観点で考えると、海と陸では事情が異なります。



というのも、海には浮力と呼ばれる力が存在するため、重力の影響が小さくなるからです。



そして、重力の影響が小さいということは、私たちが、重力に抗い、立ち上がるために必要とする頑丈な骨格物質も、少なくて良いわけです。



すると、地球上の生命の祖先が、海で誕生したという話にも納得がいきます。



なぜなら、陸上よりも海の方が重力の影響が小さい分、骨格物質に割くエネルギーが少なくて良いわけですから。



必要なエネルギーが少なくなる以上、海の方が生命は誕生しやすいと言えるでしょう。





私たちの普段の生活の中で、水といえばそれほど入手に苦労はしないものだと思います。



蛇口をひねれば水は出るし、スーパーやコンビニ、自動販売機でいつでも買えるものですから。



しかし、世界規模で見た時、水というのは非常に限られた場所にしか存在しないことが分かります。



また、現在は私たちが飲み水として使用している地下水が、年々減少しているという報告もあります。



このまま飲み水が減少していけば、いづれは水を巡った争いが起きかねませんよね。



このように、陸上というのは、非常に水の制約を受けた場所だといえるのです。



一方で、海はどうでしょうか?



もはや質問するまでもありませんが、海であれば、どこに行っても水があります。水の制約というものがないわけです。



この水の制約も、海と陸の環境の違いの一つだと言えるでしょう。





海と陸の環境の違いについて、最後に光の話をしましょう。



陸上であれば、一部太陽の光の届かない場所がありますが、それでも基本的には、陸上のあらゆる場所で太陽の恩恵を受けることが出来ます。



ただ、海となるとそうはいきません。



海の場合、入射した太陽の光は、水深70m程度の深さまでに99.9%が吸収されてしまい、水深1000mを超えると、太陽の光が届かない、完全な暗黒の世界へと突入します。



つまり、光に関しては、海がかなりの制約を受けているわけです。



このように、海と陸の環境には、浮力、水、光などの点で違いがあるんですね。



2.海の地形を知る



海の地形というのは、非常に複雑で、海底からマグマが噴き出す海底火山があったり、高低差が数千mの海山があったりします。



ただ、そんな複雑な地形も、水深や環境によって区別してやると、理解が急速に早まります。



そこで、ここからは海の地形について解説していきます。



海を大雑把に区別すると



いきなり細かく区別していくと非常に分かりにくくなるので、まずは、大雑把に海の地形を区別するところから始めましょう。



海の地形を区別するとなると、最も基本的な区別の仕方は2つほどあり、



一つは、水柱環境と底生環境という分け方。



もう一つは、沿岸域と外洋域という分け方です。



一つ目の水柱環境と底生環境については、海の表面から最大水深までの環境を水柱環境と呼んでおり、下の図のような、魚が泳ぎ、プランクトンが漂っていそうな環境を思い浮かべていただくと良いかもしれません。




一方で、底生環境というのは海底の環境のこと。非常に単純明快な説明で済むので分かりやすいですね。




また、もう一つの海の区分である沿岸域と外洋域に関しては、大陸棚と呼ばれる海底地形の縁を基準に区別します。

画像引用元;環境省より

大陸棚の縁を境に、陸側を沿岸域、その反対側が外洋域です。


ちなみに、沿岸域に生息する種を沿岸種、外洋域に生息する種を外洋種と言いますよ。




ここまで、最も基本的な区分を2つご紹介しましたが、次回(第三弾)の記事では、より詳しい地形の区分をご紹介しようと思います。


以下、参考文献です。


3.参考文献


1.生物海洋学入門 第2版(Carol M. Lalli、Timothy R. Parsons)

2.ここが一番面白い!生命と宇宙の話(長沼 毅)
3.深海生物学への招待(長沼 毅)
4.深海-極限の世界(藤倉 克則、木村 純一)
5.深海の科学(瀧澤 美奈子)