「みんなどこにいるんだ?」

1950年、科学者の仲間たちと、昼食をとりながら、このような言葉を発した者がいた。

物理学者のフェルミだ。

ここでいう、みんなとは、地球外生命体のことで、

要するに、私たちのように、技術の発達した生物が他にいるのなら、それらは、宇宙全体に広がっているはずで、その証拠が見つからないのは、おかしいという考えだ。

彼は、私たちの住んでいる地球がある、天の川銀河は、宇宙というスケールで見れば、一瞬で隅々まで植民される可能性があると計算した。

そして、この考えは、フェルミのパラドックスへと発展した。

パラドックス(逆説)となっている部分は、

宇宙を移動できるような技術をもった文明であれば、一瞬で銀河系に広がることができ、地球にも訪問しているはずである。
↑逆
↓説
しかし、地球を訪問したという証拠が全くない。

そして、フェルミがこの問いを発して70年たった今でも、まだこの問題を解いた者はいない。

なぜ、私たちは宇宙人と遭遇しないのか?

これまでの説と、最新の説を紹介する。

この問題に対して初めて、詳しい研究を行ったのは、天体物理学者のハートだった。

その結果、控えめに見積もっても、技術をもった生物種が、宇宙全体に広がるのに必要な時間は比較的短いということが分かった。

また、現在の地球には、地球外生命体がいないという動かしがたい事実がある。

まとめると、比較的短い時間で、宇宙全体に広がることができるのに、地球に訪問した生物種がいないことになる。

よって、ハートは、銀河系には、現時点で技術をもった文明は存在せず、これまでも存在していなかった、と結論づけた。

この考えをファクトAという。

そして、物理学者のティプラーも、この問題を研究し、意欲のある地球外生命体なら、数百万年もあれば、宇宙全体に広がることができるということを、論文に示した。

ましてや、銀河系は、少なくとも100億年前にはできていたのだから、ある地球外生命体が、数百万年で宇宙全体に広がれることを考えると、宇宙全体に広がるのに、かなり余りある時間が存在していたことが分かる。

ハートとティプラーの考えをまとめると、比較的短い時間で、宇宙全体に広がることができるので、とっくに宇宙全体に広がっている文明があってもいいはずだ。

なのに、その証拠がないのはなぜか?ということになる。

やはり、宇宙には、僕たち以外に生物はいないのか?

いや、まだそう考えるのは早い。

というのも、そもそも、これらの説には、多くの仮定が含まれている。

なので、その仮定が成り立たなければ、シナリオ自体が崩壊する。

例えば、ハートやティプラーの説であれば、次のような前提がある。

ハート
他の星へと移動するのは、生身の生物種である。

ティプラー
他の星へと移動するのは、探査機のような、マシンである。

すなわち、ハートも、ティプラーも、ある生物種が他の星へ移動することを前提としている。

ならば、ある生物種に、そもそも他の星に移動したいという関心がなければ、その生物種が、他の星へ移動することはなく、これらの前提が崩れる。

なので、仮定が正しいかどうか分からない以上、これらの説が正しいとは言い切れない。

すなわち、私たち以外に生物がいないとは限らない。

他に、フェルミのパラドックスの答えとして提案されたものには、突飛な説や、ただのSFと言えるような説もある。

例を挙げると、自然に生じる超新星爆発や、ブラックホールによるアウトバーストが、銀河系にいる生命を定期的に刈り込んで、広がらないようにしている。

とか

地球外生命体によって、地球人だけ意図的に隔離されている。

とか

単純に、他の文明とコミュニケーションをとるのが怖くて隠れている。

とか

いろんな説があるが、どれも実際には検証しにくいため、正しいかは分からない。

そこで、これまでの問題を解決する可能性のある研究が最近発表されたので、紹介する。

2020年のコロンビア大学の研究だ。

この研究で、研究チームは、銀河系では、他の恒星への探査や入植の波が来ては去るという繰り返しが起こっており、その波が去った頃に人類が現れたと考えた。

そうすれば、現在、地球に地球外生命体が訪問した証拠がなくて当然だ。

また、研究チームが、100年間で地球が地球外生命体の訪問を受けていない確率を計算したところ10%となった。

なので、現在、地球が地球外生命体の訪問を受けていないのは、ありえないことでもないのだ。

むしろ、地球外生命体が、地球に訪問した証拠がないのは自然なことであるとする研究もある。

そうすれば、フェルミのパラドックスは、そもそもパラドックスではないのではないか?

現在の地球は、他の文明とは孤立した状態にあるだけで、再び銀河系で宇宙移民の波がやってくるのを待っている状態かもしれない。

そうであれば、実際にその波がやってきたときに、地球外生命体が存在するという証拠を掴めるかどうかは、そのとき、まだ地球に文明が存在しているかどうかにかかっている。

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・参考文献
The Galactic Archipelago(SCIENTIFIC AMERICAN January 2020)






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