国会改革基本構想(案)

1 「決められる政治」の実現

  「決められる政治」を実現するため、衆議院(定数480名)と参議院(定数242名)を統合し、一院制とすることが望ましい。しかしながら、憲法の改正には、衆議院のみならず参議院においても3分の2の多数議決が必要とされ、実現には一定の時間を要する。

それまでの間、次善策としての国会改革基本構想をまず提案する。

  

 ① 両院関係の改善

   現在のように、衆議院と参議院にいわゆるねじれが生じ、両院の議決が異なる場合、衆議院で議決した法律案を成案とするには、3分の2の多数で再議決する必要があり(憲法第59条第2項)、また、法律案には予算や条約のような衆議院の優越(憲法第60条第2項、第61条)が認められていないため、多大な労力を必要とする。

   本来であれば、再議決要件を緩和する等憲法改正を行うことが望ましいが、立法措置等で可能な次の手段を早急に講じる。

  一 両院協議会の委員の配分及び決定方法を改め、成案を得やすくする。(国会法改正・運用改善)

 両院協議会の定数を、議席数の多い衆議院に多く配分する(例えば、衆議院20人、参議院10人等)。

 協議委員の配分をドント方式にする。

 成案を得るための要件を、3分の2以上の多数から過半数に変更する。

   ※ なお、上記により両院協議会の成案を得やすくすることを前提としつつ、さらに最終的な意思決定が迅速に行えるよう、憲法改正事項ではあるが、両院協議会の成案が得られたとき、これを衆参両院の合同会議に付し、その議決をもって国会の議決とすることも考えられる。

二 財政法第4条の改正により、特例公債を建設公債と同様に予算総則に基づき発行できることとする。これにより、歳入法案については、実質的に予算・条約と同様の扱いが可能となる。(財政法改正)


 ② 議院運営委員会の機能強化

   各議院の議院運営委員会を、内閣における内閣官房のような司令塔的な機能を有する機関として位置づけ、各常任委員会・特別委員会の運営に関する総合調整機能を有する機関とする。(議院規則改正)


③ 常任委員会における審議の抜本的見直し

常任委員会には慣例として定例日があり、原則として毎日審議することはしないこととされている。また、原則として、法案の趣旨説明をした次の定例日でなければ、質疑をしないとの慣行もある。このような慣例・慣行を与野党合意により廃止することとする。(運用改善)

さらに以下の点にも留意する必要がある。

   ・委員の定数を減らし、委員会の掛けもちをなくす。

   ・法案審査では付託された議案に質問内容を集中し、一般質疑とメリハリをつける。

   ・予算を項目ごとに各委員会に付託し、委員会でも予算審議を行う。

   ・大臣に対する質疑のあり方を見直し、直前の質問通告を制限するなど、役所の負担軽減を行う。


④ 常任委員会・特別委員会の副大臣等による対応

各常任委員会・特別委員会は、主任大臣の出席を慣例としており、各大臣は法案審議を優先するため、国会会期中は、国際会議等外交や行政がおろそかになっている。このような慣例を改善し、法案審議は副大臣等で対応することとし、各大臣は、行政監督、外交等に専念できる環境を整備する。(運用改善)



2 国会による行政監視機能の強化

 国会による行政監視機能を強化するためには、憲法上の機関である会計検査院を国会の附属機関とする等の憲法改正を射程に入れた統治機構改革が究極の目標となるが、その実現には一定の時間を要することに鑑み、それまでの間の当面の次善策として、次のような手法により対応することとしたい。

① 行政監視院の設置 (新法制定)

 一 行政監視院を設置し、会計検査院と同規模の職員を置くこととする。

 二 一の実現を前提として、行政監視院と衆議院決算行政監視委員会並びに参議院決算委員会及び行政監視委員会との密接な連携を図る。


 ② 国会職員の充実強化等 (国会法規改正・予算措置)

   両院の調査局(室)、法制局並びに国立国会図書館調査及び立法考査局のスタッフについて、

  一 定員を大幅に増員すること。人員は、各役所から調達する。

  二 法的な調査権限を付与すること。

三 両院の独立性を尊重しつつ、両院の調査局(室)、法制局並びに国立国会図書館調査及び立法考査局の有機的な連携や人事交流を図ること。


 ③ 国政調査権の強化 (国会法等改正)

   国政調査権に基づく報告又は記録の提出要求に対する内閣等の応答義務を厳格にし、内閣の判断で「国家の重大な利益に悪影響を及ぼす」旨の声明を出すのみでは応答義務を免れないこととする。

なお、特に秘匿性の高い記録等については、秘密会にする等の取扱いのもとに資料の提出がなされるよう措置するものとする。


3 議会外交の強化 (予算措置)

  政府による外交が一元的なものであるのに対し、国民代表機関で多様な意見を有する議会による外交は、意見交換と親睦に大きな意義がある。特に、主張の対立する国との関係では、多様な考え方を相互に共有することで国際紛争を未然に防ぐ役割も期待されるところであり、今後、予算措置の大幅拡充はもとより、総理大臣経験者、外務大臣経験者等の豊富な経験や人脈を有する人材の党派を超えた積極的な活用等により、さらに充実強化させていく必要がある。

  (参考) 平成24年度予算計上額 海外派遣経費(衆議院)=約4.4億円