憲法は、天皇が元首であることを明文化していない。ただ政府見解では、「天皇は元首といって差し支えない」とされており、実際、対外的には天皇が元首とされている。

 しかし、首相公選制を採用する場合、首相がいわば大統領的地位を兼ね備えるため、象徴天皇制との関係において、日本の元首について、議論が起こる可能性が強い。

 平成14年に小泉政権下でまとめられた「首相公選制に関する懇談会」の報告書は、憲法第1条を改正して、天皇が日本国及び日本国民統合を象徴する元首であることを明確にすべき、との意見が委員から強く出たことを強調している。

 こうした意見は、「衆議院議長及び参議院議長は、それぞれの院の指名に基づき、象徴元首としての天皇が任命することとし、全権委任状並びに大使及び公使の信任状については、その認証ではなく、これを発することを天皇の国事行為と定めて、元首にかかる規定を整備すべきである」と、さらに具体的な憲法改正を求めている。

 日本が、世界でもっとも長い歴史を持つ国家として定義されるのは、たくみに権威と権力を分離しながら、古代から天皇が途切れることなく続いてきたからである。そのため、日本の皇室は世界最古の王室として、世界でも確固たる権威を誇っているのだ。

 ゆえに首相公選制を導入するのであれば、天皇を元首として明確に規定すべきである。