政治と世襲。

 永遠のテーマである。先日、財政危機に陥ったイタリアの首相は3代目だったし、アメリカでもブッシュ大統領のように親子が就任した例もある。

 親の薫陶を受けて優秀な人材が育つことを、否定はしないが、それでも自民党が近代政党になる気概があるのなら、小選挙区制度の下では、イギリスのように世襲を止めるべきだった。

 以前の自民党では、イギリスに倣って三親等以内の親族と同一選挙区での公認は認めないようにすべき、との意見はかなり支持されていた。

 小泉進次郎氏が優秀なのは認めるし、彼が委員会で自らの恵まれた立場を率直に認め、政治改革について語っている姿には感銘を受けた。

 しかし、私はやはり、世襲候補を認めることに反対である。

 平成19年の全議員・選挙区支部長懇談会では、あえて次のように発言した。

 「ここにいる小泉進次郎さんが当選されたことは立派だ。しかし、これほど優秀な人材なら、他の選挙区でも十分に通用し、当選する。ライオンヘアーの小泉総理であれば、獅子は千尋の谷に子を突き落とすべきではなかったか。また自分がつくった小泉チルドレン、たとえば選挙区を持たなかった猪口邦子さんに選挙区を渡しておけば、新たな自民党の姿を示すことになったのではないか。国民に身びいきをする姿勢を見透かされては、自民党が信頼されるわけがない」

 案の定、現在に至るまで、原則なき候補者選びがはびこることになる。

 自民党の現在の公募システムが一定の成果を上げ、優秀な人材が次々と支部長に選任されてはいる。しかしその一方で、民主党の体たらくを見て、引退されると思われていた落選長老組が、若手の座を奪って、支部長に復帰する例もある。

 国民が見るのは、やはり後者なのだ。こうした長老組の復活が一部であったとしても、それが古い自民党の象徴として、国民の心に強い印象を与える。

 卑しくも政権奪取を図るのであれば、少々やり過ぎなくらい果断な姿勢を示すべきだ。

 原則をはっきりさせずに、自民党の復活はない。