昨日、道州に診療報酬の決定権を与えるアイデアについて書いた。

 医療基準需要額として、財源が決まるのであれば、医療費もより重要な分野に優先的に振り分けることが可能ではないか。

 たとえば、EUを見てみよう。EU各国は、人口、経済力からいえば、日本の道州程度の規模である。医師免許は、EU域内では共通という建前はあっても、各国の医療制度が大きく異なる。そのため、医師が国境を超えることすらあまり一般的ではないという。
 日本と違って、まずは総合医(GP=ジェネラル・プラクティショナー)にかかって、それから専門医にかかることが一般的だが、それぞれの国で特色がある。
 国によっては、かかりつけ医でなければ、保険が効かない。つまり出張先では、保険による医療が受けられない。
 歯科診療に保険が効かない国もある。その代わりに予防に手厚い対応がある。
 さらには、イギリスでは、人工透析を始めるにあたって、年齢制限を設けている。実質的には、医師の紹介があれば、ほぼ全ての患者が透析を受けられるらしいが、日本であれば、憲法25条に抵触するとの大議論になるのではないか。

 このように先進国の常識は、日本の非常識である。日本では、議論にすらできないことも多い。しかしそこまで変えなくても、診療報酬の決定権を道州に与えれば、地域に応じた柔軟な対応が可能となる。

 前回は過疎地の医師不足についてふれたが、都市部でも様々な工夫ができるはずだ。

 病院で、風邪を専門医に診てもらおうとする患者が列をなす光景が多く見られる。日本では総合医を養成してこなかったので、病院と開業医の棲み分けがうまくいっていないのだ。一方で、一つのビルに、耳鼻科や内科などが乱立しているような場所も多い。

 そこで個人的なアイデアだが、道州レベルで制度を選択できるのであれば、地域医療モール促進制度のようなことが可能ではないか。つまり、医療モールにインセンティブをつけて、内科や耳鼻科、外科などの開業医に1ヶ所に集まってもらい、開業医と病院の中間的な仕組みをつくる。

 そうすれば、受付は一つで済むし、医療情報も共有しやすい。医療モールでグループとしてかかりつけ医になってもらえば、総合医不足の解決策にもなる。さらには、夜間診療も引き受けてもらえれば、病院の負担も減るだろう。

 こうした柔軟性のある工夫が、道州の厚生委員会で活発に議論されるようになれば、地方議会はもっと輝くのではないか。