今回はカネコアヤノの新アルバム「タオルケットは穏やかな」です。僕のブログでは初登場のカネコさんは1970年代の歌謡曲などに影響を受けた何処か昔懐かしい素朴な雰囲気をもつ楽曲を多く発表している女性シンガーソングライターで、味のある歌唱や日常の出来事や感情を美しい言葉で表現する独特な世界観の歌詞が高く評価されています。メジャーデビューはしておらず、あくまでもインディーズで活動しているため、テレビ出演などは殆どしませんが、それでも根強いファンの多い実力派アーティストです。ギターの弾き語り及びバンドでのライブや楽曲発表を主体に活動を行っており、本作はフルアルバムとしては通算6作目となります。


新作「タオルケットは穏やかな」は楽曲のアレンジ面でも可成り進化を感じられ、正にカネコアヤノの新境地と云う事が出来そうです。

ノイズ混じりのイントロが特徴的なA1「わたしたちへ」やファンキーなギターが特徴的なA2「やさしいギター」とA3「季節の果実」、途中で大きく変調するA5「予感」、幻想的なイントロとサイケデリックな雰囲気を感じさせるアレンジが特徴的なB2「月明かり」など、音楽性の幅が更に広まったように感じます。バンドのドラマーが変更になりましたのでその辺りも影響しているかも知れません。


大それた事ではなく、日常の様々なタイミングに生れる色々な感情を美しい言葉で切り取って表現する歌詞はカネコアヤノの最大の作る楽曲における最大の特徴。カネコさんの歌は決して技術的に優れている訳ではないのですが、こうした楽曲はカネコさんにしか歌えない唯一無二ものです。


アルバムはレコードの他、CDと配信でもリリース。僕は前作「よすが」(2021年)に引き続き、アナログ盤を入手しました。「よすが」は透明盤でしたが、本作は通常の黒盤でのリリースです。近年のアーティストが出すアルバムは音質的にアナログ盤との相性の良し悪しがあるように感じますが、カネコアヤノのアルバムはレコードで買って正解でした。


本来、1月25日発売ですが、僕は17日と18日に日本武道館で行われたライブを観に行きましたので、17日に先行して入手しました。17日は単独演奏会という事でギター弾き語り、18日は合奏という事でバンドでの演奏でした。カネコアヤノのライブは初めて見に行きましたが、結果として2日間観に行って正解でした。ギターを激しく掻き鳴らしながら大声で歌うカネコさんは圧巻の一言。そして、2日目のバンドでの演奏も非常に見応えのあるものでした。CDやレコードなどの音源では絶対味わう事は出来ないでしょう。


ライブ会場となった日本武道館。1966年にビートルズがこの場所で公演を行って以来、聖地として多くのアーティストがこの場所で行っています。元ビートルズのポール・マッカートニーも2015年及び2017年にこの場所でライブを行なっています。カネコアヤノは今回が2回目。


カネコアヤノのライブの特徴として、MC、アンコール無しというのは有名な話でしたのでその点に関しては全く期待せずに行きました。MCを挟まない分、楽曲を多く聴く事が出来ると思えばこれ以上ない幸せです。初日(17日)の弾き語りはMCもアンコールは入れず「有難うございました!楽しかったです!」という挨拶でライブは終了。座席も想定よりもステージに近く、弾き語りの生々しさに終始圧倒されていました。しかし、2日目は良い意味で予想を裏切られました。MCを挟まないライブ進行は想定通り。そして、ライブを終え、「ありがとう!」の挨拶を挟みバンドメンバーは全員ステージにはけてライブは終了かと思ったのですが、前日とは異なり、会場はいつまで経ってもライトが点きません。僕の背後からは「アンコールやるの?いや、やらないでしょ?」という声も聞こえてきました。暫くすると再びバンドメンバーがステージ上に姿を現しました。予想外の展開に会場は大盛り上がり。そして、カネコさんによるMCが始まりました。内容を要約しますと、「ついこの間まで鼻くそほじっていた小学生なのに…とにかくみんなありがとう!」といったものでした。所々声を詰まらせながらのMCは会場がひとつになった瞬間でした。観客からは興奮のあまり「アヤノちゃーん!」「ありがとーう!」などと叫ぶ声も見られ、カネコさんも照れ笑いしながら「おう!」と応じていたのも印象的でした。そして、アンコールで1曲演奏を行い、大盛況の中、武道館ライブは無事終了した訳であります。慣れないながらMCとアンコール演奏して下さった事が非常に心に残りました。


こうして素晴らしい2日間となりました。ライブを開催して下さったアーティストの皆さんや関係者の方々には感謝しかありません。